希死念慮
椿生宗大
Galanthus
昨晩吐きそうになった
空しい毎日に色が欲しかった
取り柄のない僕に付き合ってくれる女の人はいない
情熱的な赤なんて興味すら湧かない
突然クラスメイトの前で自分の腹に
ハサミを突き刺して
痛みはなかった
お調子者の彼が閉口したり
気絶しちゃった女の子
怒ったような表情で駆け寄る子が
驚いた様子を見せたり
面白く思えた
いつかきれいさっぱり忘れるつもりだったこの僕が 忘れられなくなる
鮮血が流れ出て教室が彩られていく
ハサミを動かして自分の内部を傷つける
意識が飛びそうなのに 笑いが止まらない
朝から 愉快で 堪らない
血で何か書いてみる
伝えよう 死んでみたかったこと
生きているうちに経験できない死が
何よりも特別で
美しいということを
生命が僕に与えられたことに
僕の意志は関係ないのに
生み落とされてから今の今まで
若さを失い続け周りに汚されてきた
辛かった。
初めからもっているものを亡くしていく人生は。
疲れた。
何もない自分に飽きた。
味気ない日常を繰り返すのはもうやめだ。
電車に飛び込んだ
アニメみたいに綺麗に消えることはできなかった
リュックに詰まった参考書は
クッション代わりにもならず
背骨が折れて顔面がぐちゃぐちゃになって
目の前には酷い光景
車掌さんにも乗客にも 友達にも 家族にも
迷惑かけるなと思った
急に他人のことが思い出された
でも分からなかった
死ぬことこそが自分を満たしてくれるものだったのに
今となっては寂しい
寒くなってきた
下敷きにされて誰の顔も拝めない
一人で死にたくなかったな
昨日、二人の自分が僕の代わりに死んだ
今の自分はかつての自分の死体の山の立って生きている
彼らが今の僕の足をつかんできて
過去を忘れさせてくれないとき
自分を解放したくなる
楽になりたい
なのに今日も死に損なって
そのくせ よく生きることもできなくって
自分は本当に駄目な奴だと再度認識する
誰か
誰か
この先にいく方法を教えてくれますか
希死念慮 椿生宗大 @sotaAKITA1014
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