私 ホクロとりました

みずえ

第1話

 目尻の横に、イボなのかホクロなのか、何だかわからない出来物がある。

 痛くも痒くもなく、自分ではあまり気にしていなかった。

 ある日、妹が「それ、取っちゃえば?」と言った。

「そうか、そういう手もあるな」と思った。でも、いつでも取れると思うと、なかなか病院に足が向かず、出来物は鎮座していた。

 そんな中、小学校のボランティアに参加して、子供達と一緒に、お絵書きや、折り紙を折ったりしていた。すると、一年生の男の子が、突然、指でこの目の横の出来物を押した。まるで、スイッチを押す様に。私は、爆笑してしまった。やっぱり、気になるんだな~と思った。別の日にも、他の子がこの出来物を押した。2人も。それで決心した。「取っちゃえ!」と。押された事が嫌だった訳ではない。純真無垢の子供が気になるモノなんだから、さっさと取っちゃえっ!と思ったのだ。

 それで、近所に感じの良い女医さんが開業している整形皮膚科があるので、予約をとって、行って来た。

 まず、虫眼鏡みたいなので出来物を観察し「これは、ホクロですね。直径4.5ミリです」と言った。膨らんでいるからイボかな?と思っていたが、ホクロなんだ。そんなに大きいの? 因みに4ミリ以上から料金がUPする。「いつから有りますか?」と聞かれて「?」と思った。いつからだろう…、生まれた時からあった様な気もするけど…。いつからあるのかって事も大事なんだろうか? その後、持病や、アレルギーの有無などを聞かれ、施術の説明を聞いた。

<内容> 

医学的には、この出来物は「腫瘍」と言うらしい。

術名は「左目尻皮膚腫瘍切除術」。

紡錘形に切除し、縫合。数日後、抜糸。

施術した日は、入浴もシャワーも不可。翌日からシャワーはOKで、入浴は抜糸してからOK。

傷跡が目立たなくなるまでには、半年~1年程かかる。

術前に、血液検査もする(今日、これから)。

その他、合併症や追加施術がある場合などの説明を聞いた。

 

 何か、大事になっちゃったなあ…。もっと簡単に、つまんでハサミでチョキンくらいに思っていた。そう言えば、こういう事は乾燥した季節にやるべきだって思っていたのに…と、ちょっと尻込みしてしまったが、今更「やめます」と言うのも言いにくいし、今やらなかったらもうやらないだろう。それで、採血をして、術日を決めて、会計をした。2830円だった。手術は12日後だ。


12日後。

 行ってきました。

 手術前日に、知り合いに「明日、コレ、取るんです」と言ったら、「えっ! 目尻の横で、怖くない?」と言われ、病院の待合室でそれを思い出したら怖くなってきた。そうだよな、ホント、こんな目尻の横を切開するなんて、大丈夫だろうか?と。でも、仕方ない。もう、やるしかない。

 名前を呼ばれて処置室に入ると、手術用ベッドや器具が置いあった。横になる様に言われ、横になる。医師が来て、いくつか説明を受け「じゃあ、麻酔打ちますね。これが一番痛いですから」と言った。ホクロの下辺りがチクっとした。同じチクでも採血のチクとは違う。結構、痛い。その後、ホクロの上の方と目尻にも打って、医師は一旦部屋を出て行った。段々と痺れている感じがした。目を開ける勇気はなく、ずっとつぶっていた。10分程してから、再び医師登場。いよいよか…と思った。「では、施術します」と言われた。左目尻辺りが軽く引っ張られる様な感覚が続いた。そして「これ、検体お願いします」と言う会話の後、「縫合します」と言う声がして、また突っ張る感じがした。5針くらい縫うと言っていたので、つっぱる回数を数えていた。5回だった。最後に、周りを消毒して、ガーゼと絆創膏を貼って終了。全部で約30分。

 総合的に、痛さの強弱は「我慢出来る痛さ」だった。追加の処置もなく、目も無事でホットした。

 会計で、薬の説明を受けて、抜糸日を予約して、終了。

 術代は8740円。塗る抗生物質・錠剤の抗生物質2日分・痛め止め4錠・胃薬4錠・換えの絆創膏で約1200円。

 帰宅して、軽く食事をしてから、抗生物質を飲む。まだ痛くないけれど、痛め止めと胃薬も飲む。生活は、普通。血も止まっていた。

 「シャワー浴で」と言われていたが、血は止まっていたので、サッと湯船にも入った。でも、髪を洗う勇気はなかった。洗顔の代わりに、100均で買ったペーパー化粧落としで拭いた。夜、傷口が少し痛くなってきたので、寝る前に痛め止めと胃薬を飲んだ。

 翌日、初めて絆創膏を取って傷口を見た。想像と違っていた。腫れていない。言わないと解らないくらいの小さいキズで、縫合しているのも解らないくらい。もちろん、ホクロは跡形もなく消えていた。

 3日くらいは絆創膏も貼っていたが、絆創膏を貼っている方が目立つし、目の横で視界が悪くなるので、4日後からは、やめた。

 一週間後に抜糸に行く。すぐに終わった。眉毛を毛抜きで抜くくらいの痛さだった。「一ヶ月くらいすると、傷跡が赤くなるけれど、しばらくしたら治まります。次は、一ヶ月後に、また診せに来て下さい」と言われた。会計は400円だった。


 今、全てが終わって、鏡を見ると「ない方が良いな」と思える。

 これまでの状態を何かに例えるとしたら…“トイレのドアの前に大きな岩があり、毎回トイレを使用する度に、その岩を乗り越えなくてはいけない状態だったのが、岩がなくなり、トイレが使いやすくなった。何で、はやくコレをどけなかったんだろうと思った”と言う感じです。


イラスト入りは、下記にアクセスしてみて下さい

https://note.com/mizue15369/n/n886edf5a66f2

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私 ホクロとりました みずえ @wpw

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ