夏休み前日;7/27 ー③過去からの目覚めー

意識が、浮上する。


今はまだ夢の続きだろうか?ぼんやりと定まらない視界に一瞬そう思う。だが、何故か頭が何かに叩かれたかのようにじんわりとした熱を持っていることに違和感を感じた僕は、ふわふわとした感覚のままボソリと喋る。




「……??頭が痛い?」




するとバチンッという激しい音とともに頭に衝撃が走った。




(ッ〜〜つ?!……あれ?)




その衝撃で目がさめた僕は辺りがいつも授業を受けている教室へと変化している事にようやく気がつく。




(戻って、きた。やっと、起きることが出来た……。まあ、タイミングは最悪だったけど…、そうだ、名前!僕、やっと思い出せたんだ)




そう先程までの夢を思い出していたのも束の間、




「頭が痛い?じゃないですよね、夏宮くん…?」




地を這うような低い声が頭上から聞こえてきた。




(そうだ僕、授業中に寝てたんだった……)


身体中から冷や汗がたれはじめる。




「もう授業、終わってしまいますよ?


先生悲しいです、夏宮くんみたいな人が先生の授業でぐっすり寝てしまうなんて…。


先生も、何度か声をかけたんです。


けど夏宮くん起きなくて…そんなに先生の授業ってつまらないですかぁ?」




先生は優しくそう言うとにこりと笑みを深める。


だが、その目は冷えきっており一切笑っていない。




(早く、何か言わなければ……)




僕は咄嗟に謝る事を選択した。




「す、すみませんでしたっ!」




「…………。反省、してらっしゃるのですか…?」




間を置いて先生がそう答える。




「っ、はい!すみませ……」




ースパァァァンッッ!




僕が謝罪を言い終える前に、再度教室へと先程よりも大きい音が響く。どうやら選択を間違えたようだ。




「反省出来るマトモな意思があるのでしたら最初から寝ないでくださいませ。ねぇ夏宮くん?もしかして、夏休みが楽しみ過ぎて何処ぞの小学生のように寝不足だったのではないですかぁ?


高校生にもなってそれは無いですよね?


朝顔にうっすら隈がありましたがそれは…流石に無いですよね?夏宮くん?」




先生がまくし立てるように言う。教室の空気が重い…。皆、最後の授業を伸ばしている原因の僕を責めるような視線で見ているからだろう。




(しかも、今日寝不足だったことは否定できない…)




なんて言えばいいだろうか?


その時タイミング良くチャイムが鳴った。


ふっ、と我に返ったかのようになった先生は、僕の頭に乗ったままのファイルをみると先生を見た時の僕を通り越して顔が真っ白になっていた。




「あっあれ?私、一体何を…。!!!!、夏宮くん本当にすみませんっ!急に叩いたりなんかして…」




「いえ、大丈夫です。寝ていた僕が全面的に悪いと思いますし…。」




謝ってきた先生に僕はそう返す。




「と、とりあえず、夏宮くんはあっ、後で職員室に来てください……」




蚊の鳴くような声で先生はボソッと呟くと、教卓にフラフラと戻っていく。




「チャイムも鳴ったので今日はこれで終わります…終わりの会はなしでいいですので気をつけて夏休みを楽しんでくださぃ…。」




そして引きつった笑顔でそう言うと教室を出てったのを見て生徒達は皆、我先にと帰る準備をし始める。




(先生この世の終わり見たいな顔してたな…)




先程の恐怖はどこかに行ってしまったらしく、僕は先生にあんな顔をさせてしまった事を後悔しながら、しょんぼりとした面持ちで鞄へと荷物を詰める。


すると後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。




「夏宮〜、お前が授業に寝るなんて珍しいな!


どうした、さっちー先生の言う通り夏休みが楽しみ過ぎて寝られなかったのか!?」




「居眠り常習犯のお前に言われたくはないなぁ田中?」




話しかけてきたこいつは田中。1年の時からのクラスメイトだが、よく行くの美容院のバイトをしていたせいで何だかんだ今では1番話す相手だ。


もっとも、あちらから話しかけて来ることが単に他の人より多いだけかもしれないが……。




「それよりさ、今日は一緒に帰らないか?」




「…?まぁ別に構わないけど、何でだ?


確かに髪は最近切ってないせいで結ばなきゃいけないくらい長くはなってるけど、今日行く気はないぞ?」




「いやぁ〜、実はな……」

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あの夏の天使。〜不可思議なひと夏の物語〜 みかん缶 @mikankan1227

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