第9話 でーと?


何でか天がオタク趣味を否定しない。

正直に言って謎しかない。

何故なら彼女にそういう趣味は無い。

ましてやオタク趣味なんてありえないのだ。


俺は「?」を浮かべながら彼女を見ていた。

本当に嬉しそうにはしゃぐ彼女。

俺はその姿に胸が痛くなる。


「天」

「うん。何。お兄」

「お前...アニメとか好きになったのか?」


すると天は「お兄がよく観ているから仕方がなく好きになった」と話した。

俺は苦笑する。

だけど天がそう言ってくれて嬉しい。

何か共通で趣味が、と思っていた部分もある。

だから嬉しい...とは言える。


「お兄」

「?」

「私は...お兄はとても頑張っているって思う」

「いきなりどうした」

「お兄は全てを呪うけど。お兄以外も頑張っている。みんなお兄に寄り添ってくれる。希望が無い訳じゃないよ」


俺はその言葉に見開く。

それから天を見た。

天は俺の手を握ってくる。

そして見上げてきた。

潤んだ瞳を向けてくる。


「...天...」

「今は最悪かもだけど耐えれば耐えたなりにきっと見返りはあるよ」

「お前らしいな。天」

「うん。まあね」


「お兄は必死にもがいている。私は知っているから」と天は笑みを浮かべた。

俺はその姿を見てから天に苦笑した。

それから天は「フィギュア買っていこうかな」と言う。

その言葉に俺は「どういうフィギュアなんだ?」と聞いてみる。


「私が好きなラブコメのフィギュア」

「成程な。お前が好きなラブコメ、か。どういうのだ?」

「三等分の花嫁」

「...意外だな。そういう系を観るとは」

「観るっていうか漫画で読んだかな。面白かった」


そう天は言う。

それから天は特集コーナーに向かう。

そして天はフィギュアを手に取る。

そのフィギュアは三葉のフィギュアだった。


するとそれを持ってから天が俺を見た。

ん?


「お兄。この漫画はお兄も好きだよね」

「うん?確かに好きだが?」

「...じゃあこのアニメ今度一緒に観ようか」

「え?」


俺は衝撃を受けながら天を見る。

天は俺を見てニコッとしながら柔和になってから「だってお兄が好きなんだよね」と言う。

確かに俺は好きだ。

だけどそれで何で一緒にアニメを!?


「お兄。これは命令だから拒否権は無い。私と一緒にアニメを観なさい」

「いや。命令って」

「私は貴方とアニメが観たい」


そう強く言いながら天は俺を見据える。

俺はその言葉に「...」となってから天を見る。

盛大に溜息が出た。

だけど嫌な感じはしない。


「...分かった。なら一緒にアニメ観るか」

「それでこそお兄♪」

「全く」


俺はそう呟きながら天を見る。

そしてさっきの光景を思い出す。

何だかあまり良くなかった。

その光景が、だ。

だから俺は天に聞いた。


「天。さっきの...良かったのか。あれは」

「さっきの奴ら?ああ。大丈夫だよ。それなりには」

「本当か?なら良いが」

「所詮はいきがっているだけのクズだよ」


そう天はあしらう。

俺はその言葉に「まあ...だな」と返事をした。

だが心配だった俺は「だけど天。何かあったら言うんだぞ」と付け加える。

すると天は俺の言葉に目を丸くした。

俺はそんな様子に「俺は役に立たない人間だけど」と言う。


「...勇気を出して言ってくれた。それだけでもう十分だよ」

「別に勇気は出してないけど...」

「私にとっては最大の勇気だね。そう感じる」

「...そうか」


天は俺を見てからはにかむ。

それからグッズを見て周り彼女はアクリルストラップとフィギュアを買った。

俺は「良かったな」と天に言う。

すると天は俺に「はい」とアクリルストラップを手渡した。


「天?」

「お兄の分」

「お、俺の分?また何で。小遣い少ないだろお前」

「確かにね。私のお小遣い少ないよ。...だけどさ。その分...」


すると天は俺に寄り添って来た。

兄妹のスキンシップを遥かに超えている気がするのだが。

そう思いながら「お、おい」と言う。

そして「じゃあ出ようか」と言う天と一緒に表に出た。

天は寄り添ったままなのだが。


「どうしたんだよ。天。今日はやたらベタベタだな。俺は恥ずかしいぞ」

「私はそうは思わない。...まあでも。程々にするよ。でも今だけはこうさせて。お兄」


何でか分からないが天がベタベタなのだが。

俺は「?」を浮かべながら天を見る。

天は暫く寄り添ってからニコッとして俺から離れた。

そして「お兄。有難う。充電が出来た」と言ってくる。

は?充電とは?


「充電って?何だ?」

「内緒」

「何で充電が内緒なんだ。お前な」

「乙女には秘密が沢山あるんだよ。お兄」


それから歩き始める天。

俺はそんな姿に訳も分からず歩き出す。

そして俺達は帰宅...とはならない。

天は「本屋さんに行きたい」と言い出した。


「いやつかれたから帰りたい」

「お兄と一緒にラノベが見たいんだよ」

「それまた今度で良くない?」

「ダメ。お兄が一緒の時じゃないと。お兄は外に出ないし。こういう機会が無いとね」


何でこんな事に。

そう思いながら俺は天に引っ張られた。

そして本屋に入る。

渋々指示に従う。

何でこんなに嬉しそうなんだ。

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リアルで自分自身がいじめられているからなどの理由でゲーム内の嫁と別れたら大変な事になった アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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