第8話 恋の芽吹き


お兄。

彼は...私のこの想いに気が付いてない。

私がお兄をどれだけ心配してるのか。

この想いを、だ。


私と彼との間には後悔しかない。


後悔っていうのは何なのか。

それは彼の母親が亡くなった時に彼に寄り添えなかった。


引き籠っていた彼を。

助けれなかった。


引き籠っていて助けを求めていた彼の手を。

暖めれなった。


その後悔が私の身を包む。

そしてただただ後悔に沈む。

だけど最近お兄は元気が出ている。

私はその事に喜ばしいのと。

かなり嫉妬していた。


お兄にはお嫁さんが居る。

ゲーム内の話だが。

私は...そんなお兄を見ているのがどうしても苦痛だった。

そしてようやっと最近これに。

過保護でも何でもないこの感情に気が付いた。

いつの間にか私の感情は。


恋というもの


に代わっていたのだ。

お兄に対して恋をしている。

私はそう思っている。

だからその分私は積極的にガンガンお兄に攻めて行こうと思う。

もう二度と。

後悔しない様に、だ。



私とお兄はアドメイトに来た。

この場所はとても有名なアニメ文化のある場所だ。

グッズなどを売っている。

販売している。

その事に私は目を輝かせていた。


「Vチューバー可愛い」

「そうか。...お前もそういうの好きなんだな」

「うん。そうだね。こういう系大好き」


そして私ははしゃいでいると奥の方から「うわ。オタクまじキモ」とか声がした。

見るとそこには...リア充カースト上位の佐山ミクルとかが居た。

オタクグッズを見ながら馬鹿にしている。

何であんな奴らが。


「...オタクグッズキモイとか最低だな」

「まあ確かにね。...だけど仕方が無いよ。...行こ。アイツらに構う必要無い」


そうしていると佐山とかに目が合った。

それから私の元にやって来て「アンタもオタクグッズ買うの?キモいねぇ」と言ってくる。

話をした事が無いが私を見掛けて馬鹿にしてきた様だ。

私はその言葉にイラッとしてしまったが敢えて何も言わず俯いていた。


「オタクキモイ。何ていうかマジにアンタもね」

「...」


泣きそうになる。

オタクキモイとかハッキリ言わないで。

そう思っていると「あの」と声を発した。

それはお兄が、だ。


「まあそうなんですけど...貴方達、馬鹿にする為にこの場所に?」

「は?誰?アンタ」

「...俺は清水。清水雄太です」

「...あっそ。...アンタも所詮オタクでしょ?ロリコンってやつだっけ。キモ」

「俺はコイツの兄だ」


そして佐山たちを見て私を指差すお兄。

私は「そんな事言わなくても」と言ったのだが。

「俺は泣いている姿を見てられない」とお兄は怒った。

それから「撤回してくれるか。彼女の趣味なんだ」とお兄は佐山に言う。


「...ああそう。...兄妹もろとも?マジうっざ」

「...謝れって言ってんだよ」

「謝らないし。キモイ奴らばっか」


そうしているとお兄がいきなり佐山をビンタした。

佐山はいきなりの事に地面に倒れる。

そして「謝れって言ってんだよ。俺の大切な妹に」と怒る。

するとその唇を切った様な佐山は「アンタまじうっざ!!!!!」と激高してお兄の胸倉を掴みかかる。


「俺の大切な義妹を馬鹿にした罰だ。というかもう出て行け。お前らなんぞ」

「お前店員とかでも無いのに出て行け?何様だよ!マジに何なの!警察呼べよ周りもよぉ!!!!!」


だがその一部始終を見ていたのは周りもだった。

その為、佐山側が店側から追い出された。

佐山は最後に「学校で覚えておけよ!テメェ!!!!!」と天を脅す。

俺はその言葉に「...」となってから見つめた。


「...ったく」


いきなり背後から私はお兄をハグした。

それはお兄がビックリしていた。

私はお兄に対して「...有難う。お兄ちゃん。怖かった」と震える。

そして悔しそうに「くんなって話だよね。話だよ!悔しかった」と号泣する。


「...そうだな」

「アイツらと同級生だけど。オタク趣味馬鹿にされる筋合いないもん」

「...そうだな。本当にな」


そして私は悔しくて嗚咽を漏らす。

それから私は涙を流して号泣をずっとする。

暫くして泣き止むまでお兄ちゃんは胸で受け止めてくれた。

私は悔しかった。

あんな奴らに...私達、兄妹の大切な趣味を馬鹿にされたのが、だ。


「...もう忘れよう。あんな奴も居るよ。世の中には目が大きい絵とか嫌いな人も居る。分からない奴らが居る」

「...お兄ちゃん。助けてくれて本当に有難う」

「...はは。いつの間にかお前の俺の呼び名、お兄ちゃん、になっているぞ」

「だってお兄ちゃんだもん。スーパーヒーローだしね」

「いやいや。確かにそうなんだけど」

「...有難う。お兄ちゃん。本当に有難う。有難う...!」


泣き始める私。

そんな私に対してお兄ちゃんは抱き締めてくれた。

それから周りに構わず優しく私の手を握ってくれた。

「可愛い俺の義妹だ。絶対に守るから」と何か別の意を決した様な感じで言う。


「もう昔みたいな後悔はさせない」

「...そうだね。私もお兄ちゃんを守る」

「いや。お前は...」

「私がやりたいだけだから。アハハ」


そして私達は気を取り直して同人誌コーナー。

色々な漫画コーナー、ラノベコーナー、グッズ。

DVD、ブルーレイ、予約を観てまわる。

最後にフィギュアを見てまわる。

その時間が私にとっては至福の時間だった。

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