第4話 都市最強の一人【ミーラン】

「ちょ、ちょっと確認してきます!」


 門番の人は走って何処かに言ってしまった。かなり焦っていた様子だ。

 まあ、それもそうか。急に超大物の師匠を名乗る人が現れたのだから。

 それはそれとして……


「父さん……あれって本当なの?」


「アレって? ああ、ミーランの師匠ってやつか? 本当に決まってるだろ。あいつの指導を6年もしてたんだ。これで師匠じゃないのならなんだって言うんだよ」


「6年……」


 確かにそれだけの時間面倒を見ていたのなら師匠と言っても差し支えないだろう。だが、ゲーム本作でミーランの師匠の話がほんのちょこっとだけ出るが父さんの名前なんて出なかったと思うのだが……。記すほどのキャラじゃなかったってことなのか?

 意外と、コアなファンがファンアートでミーランとミーランの師匠って言うものを書いていたがその絵と程遠いただの髭面のおっさんだけどな。


「お、おまたせしました! ミーラン様がお待ちです。ささ、中へどうぞ」


「おう。ありがとよ」

 

「あ、ありがとうございます……」


 一応俺も、門番の人に感謝と一瞥をした。

 そうすると、門番の人が耳元でつぶやいた。


「ミーラン様は少し難しいお方です。ですが、言い方ですので仲良くしてあげてください」


 そうして、門番の人は深々と頭を下げた。

 いきなり主要キャラクターの中でも重要人物に会えるのだ。出来ることならお近づきになりたいに決まっている。しかも、そうじゃなくてもこの都市の最強の一人だ。一度目を通して置きたいというものだ。


「わかりました。任せてください!」


「ありがとうございます!」


 門番の人は笑顔で微笑んでくれた。そうして俺と父さんは教えてもらった部屋に向かったのだった。



「ミーラン。居るか?」


 父さんが友達に話しかけるかのように言った。目の前にはそれはもう今までに見たことのないレベルの豪華な扉がある。恐らくミーランの趣味だろ。ところどころ可愛らしく装飾されている。


「はーい。シュテルケ様! お入りくださいな」


「おう。邪魔するぜ。ほら、ルフトも挨拶をしな」


 父さんに背中を叩かれてビクッとしながら俺も挨拶を続けた。


「こんにちは……ルフト・シュピーゲルです。お邪魔します」


 程なくして、父さんが大きな扉を軽々と開けると中にはきれいな服を着飾ったゴスロリの美少女がちょこんと座っていた。まつげは長く、顔立ちはやや幼めでそれでいてあどけなく、だが実際の年齢は不詳とされている事はガイドブックで知っている。俗に言う合法ロリというやつだ。


「ご無沙汰しておりますわ。シュテルケ様。それにはじめましてお子さんのルフト様。六芒星が一人【剣】の『閃光の剣姫』ですわ。自分で言うのは恥ずかしいですわね」


 少し恥ずかしそうに笑う様子はまるで幼女のようだった。しかし、その裏腹にとてつもない強者のオーラを隠している事に気がついた。なんだろう……父さんと剣術の訓練をするときに感じる空気によく似ている。絶対的強者……それが目の前にいる……。


 目の前にいるのは、この都市最強の一人、それがこの世界で最弱の俺と話している。


 その事実だけで吐いてしまいそうな嫌悪感がせまった。


「そんなに緊張しなくて大丈夫ですわよ。ルフト様。今日は少しの間ですがお話しましょう」


 静かにつぶやかれた。

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魔力無しの最弱でも転生者なら最強に成れますか? 七草かゆ @mozinohumi

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