第3話 王都グランツの西門

「父さん! 父さんってば!」


 クソっ、さっきから何度も呼びかけてるのに反応一つない。まあ、馬の足音がうるさいのだろう。

 それにしても急に王都に行こうなんて父さんどうしたんだろう。確かに前々から王都に入ってみたかったし実際にこの目でゲームの世界を見てみたかった。でも、あまりに急すぎる。


「ルフト! 話したら舌を噛むぞー 気をつけろよ」

「聞こえてるじゃ――――いったぁ」


 思いっきり舌を噛んだ。もう舌が取れるかと思うぐらい。


「ほうれいわんこっちゃない。もう喋んないほうが良いぞ。そろそろ着くし」

「ぐぬぬ……」


 確かに前世でプレイしていたときに親の顔より見た王都グランツが見えてきた。


 ん? この門の形……西門?


 なぜだ? 俺がプレイしていたときにいつも通っていた門は北門だったはず。西門は空いていないんじゃ。


「父さん! なんで、西門から行くの? 北門じゃなくて」

「それはなぁ、ちょっと西門の近くにいる人に用事があるからな。てか、なんでルフト。この門が西門だってわかった? 来たことないだろ」

「うぐっ!」


 や、やってしまったぁ!!!!!

 そりゃ不思議がられるよ! 来たことないはずだもん。なんで、のんのんと質問してんだこのバカは。


「い、いやぁ。地図で見たときに……ね?」

「あー そういうことか。まあ、いいがな」


 と、通ったぁ!!

 父さん、馬鹿で良かった!


「よし。着いたぞ。ルフト。ここが王都グランツだ。でっけえだろ?」


 確かに大きかった。実際に見るのとゲームで見るのとはやっぱり違う!

 ものすごく迫力がある。門も、それを守る兵士も、門番も、どれもとてつもなくカッコいい! やっぱり、俺は異世界に来たんだと思い出させてくれる!

 こんな壮大な物、前世じゃ絶対に見られなかった!

 

「すごい……」


 ただその一言に尽きる。

 もう、言葉で表しようがない感動が心をはい巡っている。


「へっ、そうだろ?」

「ああ、こんなにデカかったんだな」


 そんな事を話していると門番らしき人が近づいてきた。


「こんにちは。旅のものですかね? 入口は北門なのでできればそこまで迂回してもらって大丈夫ですか?」

「ああ、その前にミーランに合わせてくれ」

「み、ミーラン様ですか!! そ、それは……」


 門番が困り顔をしている。

 そりゃそうだ。だってミーランはグランツの《ヘクサグラム》『六芒星』 《シュヴェ―アト》【閃光の剣姫】 だ。六芒星は王都の最強の六人を表す言葉でミーランはその中でも剣術最強。他に【槍】【鎌】【弓】【杖】【斧】の五人がいる。誰も普通の人が会えるようなお方じゃないのだ。


「父さん! ミーラン様に会おうなんてどういうつもり? 無理だよ! 六芒星だよ! 閃光の剣姫だよ!」

「何言ってやがる。あいつは俺の弟子だ」

「…………」


「「えええええええええ!!!!!!」」


 門番ときれいにハモった。


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