第3話: 初めての試練

篤志が覚醒し、ガイアたち新たな仲間と出会ってから数日が経過した。彼の力を試すための訓練は、フェルナーラ王国で最も熟練した騎士や魔法使いからの指導のもとで進んでいた。


「よし、次は剣の技だ。篤志、光の剣を使って俺を攻撃してみろ。」


ガイアは剣を構え、篤志に挑戦を促した。これまでの訓練で、篤志は徐々に光の剣を自在に操れるようになってきたが、実戦形式の訓練は初めてだった。


「わかった、行くぞ!」


篤志は気合を入れて、ガイアに向かって剣を振り下ろした。光の剣が放つ力強い一撃が、ガイアの剣に直撃する――はずだったが、ガイアは軽やかにかわし、篤志の背後に回り込んだ。


「まだだな、動きが単調すぎる。もっと相手の動きを読んでみろ!」


ガイアの鋭いアドバイスに篤志は歯がゆさを覚えたが、それ以上に自分の未熟さを実感していた。覚醒した力を持っていても、使いこなせなければ無意味だ。彼は再び構え直し、集中力を高めていく。


「よし、今度こそ……!」


篤志は今度は冷静にガイアの動きを観察しながら、ゆっくりと距離を詰める。そして、一瞬の隙を見つけて素早く剣を繰り出した。ガイアもそれに反応し、篤志の攻撃を受け止めたが、篤志の成長を感じさせる一撃だった。


「いいぞ、篤志。だいぶ動きが良くなってきたな。」


ガイアの言葉に篤志はホッと息をついた。だが、安心したのも束の間、突然王城の外から警報の音が響いた。


「何だ?何か起きたのか?」


ガイアが表情を引き締めると、外から一人の騎士が慌ただしく駆け込んできた。


「ガイア様、大変です!近くの村が魔物に襲われています!」


「魔物だと?」


ガイアの顔が一瞬険しくなった。リュンシアの近郊は最近魔物の出現が増えており、村々への被害が深刻になりつつあった。すぐに対応しなければ、さらなる被害が広がってしまうだろう。


「篤志、これは実戦だ。準備はいいか?」


篤志は緊張を感じながらも、迷いはなかった。この瞬間のために訓練してきたのだ。


「行こう。俺も戦う!」


「よし、リーファ、トルフも準備しろ。すぐに出発だ!」


ガイアの指示で、篤志たちは魔物が襲っているという村へ急行することになった。


村に着くと、すでに多くの家屋が破壊され、住民たちが必死に逃げ惑っている様子が目に飛び込んできた。村を襲っているのは、巨大な狼のような魔物「シャドウウルフ」。体は漆黒に輝き、その鋭い牙と爪であっという間に村を荒らしていた。


「くそ、あんなにでかいとは……!」


篤志は一瞬ためらったが、ガイアがすかさず声をかける。


「怯むな、篤志!お前の力を試すときだ。俺たちがサポートする。行け!」


ガイアの言葉に背中を押され、篤志は光の剣を強く握りしめた。彼の中で何かが燃え上がる。村人たちを守るために、自分にできることは何か。考える余裕はなかった。ただ、目の前の魔物を倒すことしかなかった。


「うおおおおっ!」


篤志は渾身の力を込めて、シャドウウルフに向かって突撃した。魔物も鋭い爪で応戦しようとするが、篤志は光の剣でその攻撃を防ぎ、素早く反撃する。


「リーファ、援護を頼む!」


ガイアの指示で、リーファがすぐに篤志をサポートするための魔法を唱えた。彼の体が一瞬、光に包まれ、動きが速くなったのを感じる。


「今だ!」


篤志はシャドウウルフの腹部に強力な一撃を放った。光の剣が魔物の体を貫き、シャドウウルフは苦しみの咆哮を上げて地面に倒れ込んだ。


「やったか……?」


篤志は息を切らしながら魔物を見つめたが、ガイアがその肩を叩いた。


「よくやった、篤志。初めての実戦にしては上出来だ。」


ガイアの称賛に、篤志は少しだけほっとした。だが、村人たちの被害を目の当たりにして、彼の心には複雑な感情が渦巻いていた。


「これが……俺の戦いか……」


戦いはまだ始まったばかり。篤志は、これから先、もっと大きな試練や敵と向き合うことになるだろう。しかし、彼には仲間がいる。そして、自分の力を信じることができる。


――こうして、篤志は仲間と共にフェルナーラを守るための本当の戦いに足を踏み入れた。次に訪れる脅威、それは王国全体を揺るがす大きな陰謀の序章に過ぎなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

光剣の覚醒者──運命に導かれし異世界の英雄 hirohiro @hiroshig_fin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ