第2話: 覚醒の力と仲間たち
フェルナーラの首都リュンシアに到着してから数日が経った。
篤志は未だにこの異世界の現実感に戸惑いながらも、エリスの案内で王城に滞在していた。城内は広大で、貴族や騎士たちが行き交う光景はまるで映画の中のようだ。しかし、そんな幻想に浸っている暇もない。篤志にはこの世界を救う使命があるらしい。
「さて、篤志様。この先はあなたの力を覚醒させるための儀式が待っています。」
エリスはそう告げると、彼を城の奥深くへと導いた。石造りの回廊を進むうちに、篤志の心には少しずつ不安が募っていく。自分が本当に役に立つのだろうか?
「大丈夫です。あなたには確かに特別な力が眠っているのです。それを信じてください。」
エリスの励ましの言葉に、篤志はかすかにうなずくしかなかった。
やがて、彼らは大きな扉の前にたどり着いた。エリスがゆっくりと扉を開けると、そこには神秘的な祭壇があった。天井には満天の星が輝き、部屋全体が不思議な光で包まれている。中央に置かれた石台の上には、宝珠が静かに浮かんでいた。
「篤志様、ここに立ち、心を無にしてください。この宝珠は、あなたの中に眠る力を引き出します。」
篤志はエリスの指示に従い、祭壇の前に立った。そして、目を閉じ、深呼吸をする。静かな時間が流れ、彼の意識が徐々に深いところへと沈み込んでいく。心の奥底で、何かが動き始める感覚があった。
――突然、篤志の周囲に光が広がった。
体中に力が漲り、まるで自分が別の存在になったかのような感覚に包まれる。同時に、頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。この世界の歴史、魔法の原理、そして彼が使うべき力――「光の剣」。そのすべてが一瞬で彼の中に刻まれた。
「これが……俺の力……?」
篤志が目を開けると、彼の手の中に一振りの光の剣が握られていた。美しく輝く剣は、彼が心の中で思い描いた通りに形を変え、まるで生きているかのように反応していた。
「あなたの力が覚醒しましたね。これで、フェルナーラを救う戦士としての一歩を踏み出しました。」
エリスは満足そうに微笑んだが、篤志はまだ信じられない様子だった。しかし、そんな彼の迷いを打ち消すかのように、扉の向こうから足音が聞こえた。
「おい、君が新しく覚醒したって噂の篤志か?」
そう言って現れたのは、精悍な顔立ちをした青年だった。短く刈り込んだ金髪に、鋭い青い瞳を持つ彼は、まるで騎士そのもののような姿だった。彼の後ろには、緑色のローブをまとった少女と、巨体の男が続いている。
「自己紹介が遅れたな。俺はガイア、フェルナーラ王国の騎士団長だ。そして、こいつらは俺の仲間たちだ。」
ガイアが紹介したのは、魔法使いのリーファと、斧を持つ戦士のトルフだった。リーファは少し控えめな性格のようで、優しげな笑みを浮かべていたが、トルフは一見すると怖そうだが、実は温厚な性格らしい。
「君が俺たちの新しい仲間になるって聞いて、挨拶に来たんだ。これから一緒に戦うんだ、よろしく頼むぜ!」
ガイアは篤志の肩を軽く叩いた。篤志は突然のことに戸惑いながらも、彼らの温かい歓迎に少しずつ心が和んでいくのを感じた。
「……ああ、こちらこそよろしく頼む。」
その言葉を口にした瞬間、篤志の中にあった不安は少しずつ消え去り、代わりに冒険への期待が膨らんでいった。
――こうして、篤志は仲間たちと共にフェルナーラを救うための戦いへと足を踏み出した。
だが、この先に待ち受ける試練や敵の恐ろしさを、彼はまだ知る由もなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます