第5話 ゲームは人生

 文化祭当日の朝、知尋と市太郎は部室にいた。

「さあできたわよ、これが我が友ヶ浦高校非電子遊戯研究部が心血を注いで作り上げたゲームブックソフィアクエストよ」 

 どんと知尋はソフィアクエストのコピー本五十部をテーブルの上に置く。

「こう見ると感慨深いね知尋ちゃん。なんせ夏休みほとんどをついやしたからね」

「そうね市太郎。淡路島に行ったのと花火大会にコミケ、あとオタロード巡りをのぞいたらね」

「いやああの淡路島の海は忘れられないよ。特に知尋ちゃんの水着姿は一生の宝だね。知尋ちゃんってインドアだと思ったけどけっこうアウトドアも好きなんだね」

「ま、まあね。市太郎がどうしてもついていきたいっていうから家族旅行に同行をオッケーしたのだけどね」

「そうそう知尋ちゃんのお母さん結婚式は淡路島がいいって言ってたね」

「ちょ、ちょっとあれは母さん酔ってたからよ」

「えー知尋ちゅんもホテルの教会見たときのりのりじゃったない」

「あ、あれはコーラによってたのよ。さあ、その話はまた今度ね。文化祭がはじまるわ。放送部が開催の挨拶を流してるわ」

「あっそうだね。ソフィアクエスト売れるといいね。僕は友だち何人かに声をかけたけど知尋ちゃんはどうだった」

「ふふっ愚問ね。私に友だちはイマジナリーフレンド一万人いるのよ。泥舟に乗ったつもりで安心しなさい」

「ごめん、泥舟は嫌だな……」

「友だちいなくてすいません……」

「謝らなくていいよ知尋ちゃん。友達なら僕がいるじゃないか」

「市太郎は友達じゃないわ」

「えーひどいよ知尋ちゃん」

「だって市太郎は彼氏じゃないの♡♡」

「あっそうだった」

 二人はしばしみつめあう。


「ほら市太郎、お客様がきたわ。いらっしゃい、ようこそ非電子遊戯研究部の部室へ」

「どうぞどうぞ、面白いアナログゲームがいっぱい有りますよ。良かったらゲームブックも買って行ってくださいね」

「あらボードゲームがやりたいの。ええいいわよ。一緒にやりましょう。さあ市太郎本棚から人生ゲーム取ってくれるかしら」

「知尋ちゃん、いや部長の得意な人生ゲームだね。知尋ちゃんが人生ゲームをやると何故か子だくさんになるだよね」

「ちょっと市太郎変なこと言わないでよ。さあ人生ゲームやりましょうね」

 

 遊びに来た二人の男子学生と女子学生は市太郎のクラスメイトだった。五人で人生ゲームを遊び、知尋がトップで終了する。

「どううちの部長強いでしょう。運要素が絡むゲームじゃあ知尋ちゃんの右に出るものはいないんだから」

「ふふん褒めて褒めて。市太郎私を褒め称えなさい」

「知尋ちゃんはゲームの天才!!日本一、いや世界一かわいい!!頭脳明晰才色兼備月下美人!!」

「い、市太郎恥ずかしいからそのへんで勘弁してちょうだい」

 市太郎のクラスメイトたちはジト目を向けて、部室をでていった。彼らはついでに三冊ゲームブックを買っていった。


「知尋ちゃん幸先いいね」

「うんでもこれは市太郎の友達だからね。勝負はこれからよ」

「そう言えば去年はどうだったの?」

「去年は前の部長の力作ボードゲームがあったからね。結構好評だったのよ」

「へえー今年もそうなるといいね」


 部室にはそれ以降来客はなかった。

 時刻は午後三時をまわり、文化祭はあと一時間で終わろうとしている。

「あははっ閑古鳥が鳴いてるわ市太郎」

「でも僕はこうして知尋ちゃんと一緒にいれるだけでいいよ」

「ふぇっ市太郎恥ずかしいこと言わないでよ」

「だって本当のことだもん知尋ちゃん」

「市太郎……」

 見つめあう二人であったが、突如来客があらわれる。

「わっお客様よ、市太郎」

「えっあっそうだね。しかもこんなにたくさん。ソフィアクエストが欲しいって。いいですよどうぞどうぞ。一部三百円になります」

「そうです私が非電子遊戯研究部の部長黒澤知尋です。えっゲーム研究部とアニメ同好会の皆さんですか」

「知尋ちゃん、どうやら朝に買っていってくれたのを見たんだって」

「そのようね。えっシンプルながら良く練り込まれたストーリーがいいっですって。ええ、ええこれは私たちが夏休みを注ぎ込んで作った力作ですからね。あっ全部買ってくれるんですか」

「「ありがとうございます!!」」

 二人は同時に言う。知尋と市太郎の初めての共同作業であるゲームブック「ソフィアクエスト」はこうして完売した。


「知尋ちゃん、やったー!!完売だよ!!」

「市太郎すごいわ。私たちやれば出来るのね」

 二人は思わず抱きしめ合う。

「これからも一緒にアナログゲーム作ってくれるかしら市太郎」

「もちろんだよ知尋ちゃん。僕はずっとずっと知尋ちゃんと一緒にゲームを作りたいよ」

「私もよ市太郎。これからもよろしくね」

「うん、知尋ちゃん。知尋ちゃん大好き」

「私もよ市太郎。市太郎が大好きよ」


 ゲーム制作サークル「ソフィアワープロ」はこうして誕生した。「ソフィアワープロ」のモットーはゲームは人生である。


終わり

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友ノ浦高校非電子遊戯研究部へようこそ。黒澤知尋はアナログゲームで遊び尽くしたい 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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