第6話
「ただいま……あ、ヒロ君。今日も待っていてくれたんだね、ありがとう。ん? 何だか元気が無いけど大丈夫かって? 気のせいだよ。悪いけど今日は何だか疲れたから、今日は一人で過ごすね」
(女の子は靴を脱ぎ家に入ると、ヒロを置いて一人で奥へと行ってしまった──女の子はほぼ一人で過ごし、夜になると、いつもより早い時間に布団に入る)
「はぁ……」
(月の光が差し込む薄暗い部屋で女の子がため息をつく。そこへヒロがゆっくり部屋の中に入って来た)
「ヒロ君? 今日は私、もう寝るよ?」
(女の子はそう言ったが、ヒロはお構いなしに奥へと進むと、女の子のベッドに乗り、横になる)
「ちょ……ちょっとヒロ君。布団の中までダメだってばぁ……」
(無理矢理、布団を退かして入ってくるヒロに、女の子は注意したが、ヒロは言う事を聞かずに出て行こうとしない)
「もう……今日だけだからね」
(女の子は観念したようで、そのまま動かずにヒロを見つめる)
「──何? ヒロ君。具合でも悪いのかって? うぅん、そうじゃないよ」
「じゃあ何でそんなに悲しい表情をしているのかって? ──ふふ、流石だね。ちょっと学校で上手くいかない事があって、私ってやっぱり臆病だな……って思ってね」
(ヒロは無言で女の子に擦り寄り体を密着させる)
「……慰めてくれているんだね? ありがとう──ねぇ、ヒロ君。ヒロ君はさぁ……私の事、好き?」
(ヒロは直ぐに返事をするかのように、女の子の口にキスをする)
「ちょ、ちょっとヒロ君……舌はダメだってぇ……そう言いつつも嬉しそうだって? もう……私のファーストキスを奪っちゃって……」
(女の子は嬉しそうな表情を浮かべながらも、どこか悲しげにヒロの髪の毛を撫でる)
「はぁ……私にもっと勇気があれば、ヒロ君に言ったみたいにヒロト君を誘えたんだけど……どのみち大好き過ぎて小さい頃に拾ってきた愛犬に好きな人の名前を付けて、妄想するような女の子は嫌かな?」
(ヒロはそんな事ないと言わんばかりにベロベロと女の子のホッペを舐める)
「ふふ、ありがとう! じゃあ……勇気を出して告白、じゃなかった。まずは文化祭、誘ってみるね!」
(次の日の放課後、クラスメイト達が、続々と帰り支度を済ませて帰っていく中、女の子は帰ろうともせず、複雑な表情を浮かべて一人の男の子を見つめていた。その男の子が席を立ち、一人で教室から出ようとするのを見ると、急いで席を立ち、後を追い掛け始める)
「ヒロト君、ちょっと待って」
(女の子が追いかけている男の子に声を掛けると、男の子は足を止め、後ろを振り返る)
「えっと……ヒロト君。今度の文化祭だけどさぁ、そのぉ……私と一緒に回ってくれませんか!?」
(女の子は恥ずかしさのあまり、ヒロトと顔を合わせられない様で、俯いている。その間、ヒロトは待っていましたと言わんばかりに満面な笑みを浮かべていた。そしてヒロトは返事を返す)
「え……本当!? 本当に良いの?」
(女の子は帰ってきた返事が信じられない様子をみせる。ヒロトはちょっぴり苦笑いを浮かべて、もう一度、同じ返事をした)
「わぁ……ありがとう! 当日はお願いします!」
(二人は肩を並べて歩き出し、楽しそうに会話を始める。その光景はまるでヒロと一緒に歩いている様だった)
一緒に住んでる身近な存在とのやり取りは、恋人同士でもないのに距離感がバグっていて、毎日ラブラブ 若葉結実(わかば ゆいみ) @nizyuuzinkaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます