第5話
(二人は雨が降っている中、走って帰ったが、大粒の雨のせいでビショビショに濡れた状態で家に到着する)
「あ~、ずぶ濡れで気持ち悪いぃ~。ヒロ君、お風呂に入るよ ──え、面倒臭いから拭くだけで良い? ダァメ! 泥水が飛んで汚れたりするんだから、入るよ。一緒に入ってあげるからさ」
(女の子はヒロをグイグイと押しながら家の奥へと進み、脱衣所へと押し込む)
「ヒロ君はここで待っていて。色々と準備してくるからさ」
(女の子は棚からタオルを取り出し軽く自分を拭くと、替えの下着などを用意して、脱衣所へと戻る)
「ヒロ君、入るよ~」
(女の子は脱衣所に入るとカゴに準備したものを入れ、着替え始める──)
「何よぉ、ジロジロ見て。え? なんでタオルを巻いているかって? いやぁ……さすがに恥ずかしいからに決まってるじゃない。そんなことより体が冷えちゃうから早く入ろ!」
(女の子はグイグイとヒロを風呂場へと押し込む)
「体とか洗ってあげるね。まずは頭……次は……背中かな? 腕に……足……こうやって洗ってるとさ、ヒロ君って結構、筋肉あるよね……あれだけ動き回れるのも納得。え? 恥ずかしいから、そんなにマジマジ見ないでくれって。ふふ、分かったよ」
「──は~い。洗い終わったから流すよ~」
(女の子はヒロの体についた泡をシャワーで流す)
「よし、おしまい! じゃあ今度は私がシャワーするから、端っこで待っていて。──言われなくてもそうするって? ふふ、だよね。せっかく終わったのにまた濡れるのは嫌だもんね」
(女の子はサッと体を洗い、シャワーを済ませると、先に脱衣所に行く。自分の体を拭いてから、着替えを済ませ、バスタオルを持って風呂場へと戻った)
「じゃあヒロ君。体を拭いてあげるねぇ……終わったらドライヤーもしてあげるから──毛が絡まりやすいから優しく頼むって? ふふ、クセッ毛なところあるもんね。」
(女の子はヒロの体を拭き終わると、ヒロと一緒に居間へと移動する。ソファに座ると、ドアイヤーで乾かし始めた)
「──は~い、乾きましたよぉ。どうだった? ──うんうん、気持ち良かったって? ありがとう。雨に降られたのは災難だったけど……今日のお散歩デート楽しかったね!」
「ん? また追いかけっこをしようって? ん~……どうしようかな? ちょ、ちょっとそんなキラキラした目で見ないでよ。分かった、分かったから……元気だったら、また付き合ってあげるよ!」
※※※
「ただいま~。お、ヒロ君。今日も出迎えてくれて、ありがとね。話したい事があるから、一緒に居間に行こうか」
(女の子は靴を脱ぎ家に入ると、ヒロと一緒に居間へと移動する。そしてソファに座った)
「ヒロ君、もう直ぐ文化祭があるんだけどさ。そのぉ……一緒に見て回らない? って……ダメだよね? 他に一緒に回りたい女子、いっぱいいそうだし!」
「え……良いの? 確かに誘ってくる女の子はいるけど、これといって気になる人はいないから? へぇ~……誘ってくる女の子がいっぱいいる事は否定しないんだね」
「そんな言い方するなら、一緒に回らないって? あ~、ウソウソ。冗談だって! ヤキモチを焼いただけだってぇ~。あ! その悪戯っぽい顔……さてはからかったな? ヒヤヒヤして焦ったよぉ」
「じゃあ、当日はどこに行こうか? 縁日気分が味わえる教室とか、占いの館とか……色々あるみたい。そういえばヒロ君は怖いのは平気な感じ?」
「あははは、その嫌そうな表情。ダメみたいね! だったら違うのにしようか。そうねぇ……え? 食べ物は何があるのかって? いっぱいあるよ。焼きソバ……たこ焼き……フランクフルトに鶏の唐揚げ!」
「ふふふ、最後の方が魅力的だったって? そう言うと思った! じゃあフランクフルトと鶏の唐揚げは確定ね。甘い物はどうですか? ──ふんふん、お腹の空き具合によるね」
「じゃあさ……クレープを一つ買って一緒に食べない? ふふん、その嬉しそうな顔は決定って事ね。後は……後夜祭はどうする? 後夜祭に出るか出ないかは任意だって、先生が言ってたけど」
「──やっぱりねぇ、出ないって言うと思った。私は出たいなぁ……誰かナンパしてくる男子生徒から守ってくれないかなぁ。チラッ」
(女の子は何か言いたそうに視線をヒロに向け見つめる。ヒロはそれを感じ取ってはいそうだったが、無表情のままだった)
「そんな男子いるのか? って。酷い! こう見えても私、何回も告白されたことがあるぐらい結構モテるんだぞ!? えっへん! ん? その割には高校一年になっても彼氏といる所を見たことが無いって?」
「ズバッと言うね……。そりゃぁ……ねぇ……だって、それは小さい時からずっと好きな人が居るからでぇ……」
(女の子は気まずそうに、自分の人差し指を突き合わせ、モジモジする)
「え!? それは誰かって? いまここで聞いちゃうの? ……と、とりあえず! 後夜祭も付き合って貰って良いですか!? ──はい! 嫌そうじゃないから決定ね」
「勢いで誤魔化しやがったなって? だってぇ……そうするしかないじゃない? とにかく文化祭、楽しみだね!」
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