第2話
昨日と同じ今日、今日と同じ明日、世界は変わらずに続いているように思われていた。
しかし、それは虚飾だ。
世界はすでに変貌していた。
レネゲイドウィルス、発症した者に超常の力を与える、既存の科学では説明できないもの。
超常の力は強大だ。通常の人間では死ぬ傷を受けても再生することができ、物理的に不可能な事象すらも可能に。
不可能を可能に、空想が現実に。
だから彼らは超人、オーヴァードと呼ばれた。
しかし、その恐るべき力は理性をも蝕む。
力に飲まれたものは本当の化け物になり、ジャームと呼ばれた。
己の欲望のために力を利用し、暗躍する者たちの組織、ファルスハーツ、通称FH。
それに対抗し、壊れかけの日常を守るため者たちの組織、ユニーバサル・ガーディアン・ネットワーク、通称UGN。
そんなUGNでの一幕。
ポニーテールの少女が扉を勢いよく開け、声を挙げる。
「支部長、緊急事態ですよ!!」
支部長と呼ばれたメイド服を着た女性は
「なんですか、ポニーちゃん?はっ、もしかしてついにメイドになる決意をしてくれたんですか!?」
「ポニーちゃんっていうなし、ていうかメイドになることはないって言っているでしょう。
っていうかそんなことはどうでもよくって、大変なんですよ
廃病院のレネゲイド濃度の値が異常値になっているんです」
メイド服を着た女性は決め顔を作って決めポーズをしながら言う、
「やはりか、ついにこの時が来てしまいましたか、ポニーちゃん、出撃準備を!」
「ポニーちゃんっていうなし...まあでも、出撃準備はばっちりです」
そうして、メイドとポニーテールの少女は廃病院に向かう。
想定外のことが起きているとは知らずに...
見知らぬ天井。
「あれ、ここどこ?」
服は病院の患者さんが着るであろうものを着ている。
こういう服は一度も着たことがなく、もっていない。
確か自分は、化け物に切り裂かれて、死んだはずだ。
化け物を圧倒して倒したような気もするが、それはさすがに妄想であろう。
だから、「もしかして、ここは天国?」
「...違いますよ」
声の方を見るとメイド服を着た女性とポニーテールの少女が立っていた。
「えっと、どなたでしょうか?ていうかなんでメイドさん!?」
メイド服を着た女性は質問には無視して、
「彩音篝さん、ですね?お話があります」
「えっ、はい...」
「私はメイドカフェ「グラシユ」の店長にしてメイドの凛香と申します」
「支部長...ふざけていないでレネゲイドの説明をしてください」
「まずは自己紹介が大切なんですよ、ポニーちゃん、それにこんなに可愛い子に対しては先にアプローチするのがマナーでしょう!」
「「メイドになりませんか」っていういつも通りの戯言じゃねえかあ!」
そうして、ポニーちゃんと呼ばれた少女と凛香と名乗ったメイドは二人で言い合い始めた。
といってもメイドの方はふざけている感じで、ポニーちゃんと呼ばれた少女が振り回されている感じなのだが...
数刻の間、そのようなやり取りが続いた。
そして、タイミングを見計らって、篝は言った。
「あの、すいません、話ってなんですか?」
「ふむ、ではムードも明るくなりましたし話しましょうか」
そう言って凛香と名乗ったメイドは神妙な面持ちでレネゲイドウィルスについて説明を始めた。
レネゲイドウィルス、既存の科学技術では説明のつかないレトロウィルスに似た働きを持つそれは、発症者に超常の力をもたらす。
超常の力に飲まれたものをジャームと言い、力を悪用し、己の利益で行動する者たちの組織をFHと。
それに対抗し日常を守る組織が自分たちUGNと。
「彩音篝さん、あなたはレネゲイドウィルスを発症したことによって、超常の力を手にし、怪物を倒しました。
そして、我々が来ていなかったら、人としては終わっていたことでしょう...」
「えっと、それはどうして?」
化け物は倒し、傷は塞がり、命の別状はないと説明されてわかったが、なぜ人として終わるのかがわからなかった。
「簡単な話だ、レネゲイドを発症したばかりものは基本的に適切な処置をしないと力に飲まれる」
ポニーテールの少女は言う。
「対レネゲイドウィルスに対する訓練は必ず明日には受けて貰います
あと、レネゲイドウィルスについては口外しないようにお願いします」
二人は席を立とうした。
「あの、待ってください!!」
篝は声を挙げた。
「えっと、私、UGNのお手伝いをしたいです」
正義の秘密の組織に、悪の秘密結社。少女にとっては望んでいた世界だった。
退屈な日常から、非日常へ。空想が現実になる。
「ふむ、いいですよ」
「駄目ですよね、無理を言っているのはわかるんですげど、えっ?」
「可愛い子の頼み、そしてUGNは人手不足です、明日の訓練後に早速支部の案内をしましょう!」
嬉しいそうに凛香は手を合わせて、言った。
「おい、支部長、勝手に」
「では、さっそくメイド服の準備をしないと...」
そう言ってぶつくさと考えことをしながら、凛香と名乗ったメイドは出て行った。
ポニーテールの少女も、それを追いかけて行き部屋を出る直前に、
「明日に迎え支部長とに行くから、今日は安静にしていろよ」と言った。
篝は、明日が楽しみになりながら、横になり、静かに眠りに落ちた。
支部の閉店したメイドカフェの店内でポニーテールの少女は言う。
「なあ、支部長、あいつを仲間に本当に入れていいのかよ
怪しすぎる。あの廃病院は私らが情報工作をして興味を向かないようにしていたのに
もしかしたら、FHの奴で猫を被っているかもしれない」
「大丈夫ですよ、ポニーちゃん、それはあり得ません。
私の勘が言っています、あの子は白と」
勘と言う不確かに思えるもの、だが、凛香は自信満々に言った。
「まあ、支部長が言うならばいいけど、だとしても、あいつ確実に特殊だ
あの廃病院の化け物は「私でないと殺せない」はずだった」
「だからこそです、彼女はこの事件の関係者。確実に仲間に入れるべきです
それにもしも彼女が魔女の関係者だったとしてもあなたなら殺せるでしょう?」
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