第3話
竹刀を持ったポニーテールの少女が目の前に立つ。
「じゃあ、始まるぞ」
1時間前
「抑制法の訓練は以上です」
少女、彩音篝はレネゲイド抑制法の訓練を受けていた。
支部のあるメイドカフェの地下空間、レネゲイドの技術によって拡張されたトレーニングルームで。
レネゲイドの抑制法は想像していたよりも普通な心身を落ち着かせる方法であり、想像していた特殊なものでなかった。
力をむやみやたらに使わない、大怪我をするような危険なことをしない、
落ち着かないときは好きな音楽やテレビや動画などを見る、友達などの人とのつながりを大切にする。
「あの、本当にこんな普通なことで抑制されるんですか...」
「大丈夫ですよ、ちゃんとUGNの統計情報で示されたエビデンスのあるものです
それに、いざというときは私がいます!」
と自慢げにメイド服を着た支部長である凛香は言う。
「それは一体どういう...?」
ポニーテールの少女、鈴子という名前を先ほど教えてくれた少女は言う、
「支部長はレネゲイドを抑制する力を持っているんだ
だから、篝、あんたが、あの病院で無茶をしてもなんとかできたんだ」
「私、とっても凄いメイドさんなんですよ!!」
胸に手を当て決め顔しながら、凛香は言う。
「ってそろそろお店の開店時間ですね、準備をしないと
ポニーちゃんは今日はどうします?」
「とりあえず、パスで。今日の午前は訓練をするよ」
「篝さんは、お店の見学でもしますか?
専用のメイド服の準備をしたので!!着て座っているだけでもいいですけど!」
「えっと...」
篝は迷っていた、正直に言ってオーヴァードの力を使ってみたかったが、
自分のことを助けてくれた人を裏切ることは悪いと感じた。
そんな迷いを感じとったのか、ポニーテールの少女、鈴子は言った
「篝、良かったらお前もいざというときのために戦闘訓練をしてみたいか?」
そうして、準備運動や体の使い方を教わり、1時間が経った。
「よし、最後に力を使った訓練をやろうか」
と鈴子は言った。
「えっ、いいの!?」
篝は驚いた。先ほどむやみやたらに力を使わないと聞いていたために。
「だって、お前、力を使ってみたいだろ」
鈴子は見透かすように言った。
「うっ」
図星だった。
「別に悪いことじゃない、普通の人間ならば新しいものは試したくなる」
そう言って、彼女は模擬戦のルールを説明した。
力は最小限に抑えること。
力を使うのは一瞬にすること。
有効な一撃与えた方が勝利。
武器は本物ではなく模擬戦用の竹刀。
竹刀を持ったポニーテールの鈴子が目の前に立つ。
「じゃあ、始めるぞ」
そういうと鈴子は目の前から消え、高速の突きの一撃を行った。
超人でなければ不可能な高速での移動、そして攻撃。
人間の反射できる速度の限界を超えており、常人ならばこの攻撃を防ぐ手段はない。
そう、常人ならば。
超常の力には種類がある。熱を操るサラマンダー、音を操り高速での行動を可能にするハヌマーン、時と重力を操るバロールなど。
現在特定されているものは12種類。
そして、篝の発症したシンドロームの1つはノイマンであった。
ノイマンの力を発症したオーヴァードは脳内に専用の神経が作られる。
その作用によって、通常の人間では行い思考速度、反応速度、答えを導くことが可能になる。
篝は強化された感覚により、わずかな予備動作、レネゲイドの流れを感じ取り、能力をほんの数秒発動した。
思考の超加速、常人では捉えることすら無理な高速で移動する鈴子の移動と攻撃の一挙手一投足を認識した。
しかし、それでも鈴子の攻撃に対してカウンターで終わらせることは経験の差から不可能であり、的確に弾くことが精一杯であった。
「へえ、今のを防ぐのか」
鈴子はそう言う。
そして、
「じゃあ、もう一度」
そうして鈴子は一度距離を取り、先ほどと同じ高速の突きを繰り出した。
篝はそれに対してカウンターを狙った。
先ほど違い、思考の超加速を鈴子が高速になる前に発動していた。
そのため、経験の差を埋める完璧なカウンターの一撃を導き出した。
そして、鈴子の方を向き、カウンターを行い、篝の勝利で終わるはずだった。
しかし、カウンターは空を舞った。確かに鈴子に当たったはずだったがまるで手応えがなかった。
そして、目の前で高速の突きをしていた鈴子は消えた。
そこで篝は気づいた。ノイマンの能力故、すぐに。自分がカウンターを行おうとしたのは鈴子の作った幻影だったと。
彼女の能力はハヌマーンだけではなく、光を操るエンジェルハイロゥの能力があることを。
そして、後ろから、肩を竹刀でぽんと叩かれた。
「はい、私の勝ち」
オーヴァードは最大で3つ種類の力を発言する。
力の種類が増えると1つ1つの力の能力の出力は低くなり、逆に種類が少ない場合は能力の出力が高くなる。
3種類ならば器用貧乏、2種類ならばバランス型、1種類ならば特化型と言った具合に。
「そして、戦いにおいては相手がどのタイプか知ることが生死に直結する」
そう、ポニーテールの少女、鈴子は言う。
「まあとは、言ってもジャームの中にはそんなことを関係なく、ありえないことを起こす奴もいるから過信は禁物だけどな」
「篝、お前は覚醒したばかりとは思えないくらい強いよ、けどだからってなんでもはできない
だから、私たちを頼れよ、支部長は変なメイドだけどあの人は尊敬できる良い人だからな!」
そう言い、彼女は優しく微笑んだ。
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