第4話

これは夢だ。

満月のあの夜の。


魔女と呼ばれる古代種のジャーム。

悠久の時を生き、多くの人を不幸にしてきた化け物であった。

魔女は人を知ろうとした、解剖して、実験して、体を弄り、殺してきた。

その行いは人々にとっては許されるものでなかった。

そして、UGNは動き出した。

部隊を編成し、過剰とも見える戦力を整えた。

全ては、魔女を滅ぼすために。

肌を刺すようなワーディング。

オーヴァード以外は行動することができなくなる殺気があたりを包んだ。

そして、戦いは始まった。

オーヴァード同士による、能力での支援、連携によって、幾度の攻撃の末に魔女の心臓を貫いた。

そうして、戦いは終わるはずだった。

「ふむ、良い動きだ...けれど無意味だよ」

勝利したと確信したというほんの一瞬の隙、その隙に光に包まれ、その後爆発が起きた。

たった一撃の爆発で部隊は壊滅した。

「...なんで、心臓を貫いたのに...」

そう運よく生き残ってしまったUGNの少女は言う、

オーヴァードと言っても人体の基本構造は人間とそう変化はない。

異常な再生能力があると言っても、心臓を貫かれれば人体の機能を維持することは困難である。

「うん、そうだね...私の心臓を貫いたご褒美に教えてあげようか

私を殺せるのは古代種だけなのだよ」

貫かれた心臓を再生しながら、そう吐き捨てる。

条件付きの不死性、ジャームにおいて発現する力の一端。UGNの記録でも似たようなものはあった。

しかし、このような満たすことが難しいものが存在することは前例がなかった。

「それじゃあ、楽にしてあげる。」

そうして、少女は目を瞑って、死を覚悟した。

しかし、奇妙なことが起きた。

魔女は突然苦しみ始め、胸に手を当て倒れた

「に、にげて...これ以上殺したくない...」

魔女はまるで正気を取り戻したようにそう言った。

少女はその隙を見逃さなかった。

自信の残った力を振り絞り、空間操作を行い、少女は部隊と共にその場から去った。


女性は目を覚ます。

酷い夢を見ていた。

魔女との戦いの夢を。あの戦いで生き残っていたのは自分だけだった。

UGN精鋭部隊の壊滅、それによってこの街のUGNの支部は小さくなり、監視が主になっていた。

女性は諦められなかった。戦友たちは死に、体は傷つき、それでも魔女を滅ぼすことを目的に行動していた。

魔女はあれから表立った行動はない。しかし、魔女は確実にこの街にいると感じていた。

そして、それは当たっていた。

廃病院に現れた4つ足の獣。通常のオーヴァードでも殺すことのできない特殊な化け物。

特殊なレネゲイド、古代種特有のレネゲイドであり、その配列は魔女と同様のものであった。

そして、その事実は魔女がこの街に未だに潜んでいるということを示していた。

上層部に止められて交戦することなく、監視にとどめていた4つ足の獣を倒した彩音篝。

彼女は自分とは違い、魔女を殺す資格を持つものであり、きっと魔女の関係なのだろう。

「ポニーちゃん、篝ちゃん、私は悪いメイドです

あなたたちを危険なことに巻き込む、それでも...」

彼女は進むのだろう。

あの日、失ったものに意味を与えるために...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ダブルクロス「魔女との約束」 @shiffon4378

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る