第7話 神話の終焉
この言葉は…誰だっけな。全く覚えていないのだが。左を向いて顔を見ても、それでもわからないので、「お前、誰だっけ?」と尋ねると、
「おいおい、俺のこと忘れたのかよ!中村だよ!」と、怒り気味に言われたが、悪いやつとしか覚えていない。それより、なんでこいつがここにいるんだろう?この世界に来るには特殊なゲートを使わないと来られないはずなのだが。まあ、裏ルートでも見つけたのだろう。
「俺が呪いの元だ。」中村はそう言うと、ポケットからお札のようなものを取り出して見せつけた。呪いというのは、お札のような呪具から始まる。それが壊れない限り、呪いの連鎖は止まらない。逆に言えば、それさえ壊してしまえば連鎖は止まる。
正直言って、あれが本当に今この世界で広がっている呪いの呪具なのかは確証が持てないし、そうだとしても中村がわざわざ私の目の前にいる理由がわからない。しかし、もう時間がない。このままでは呪いを止める前に全員死んでしまう。ならば、あれが本物という可能性に賭けるしかないだろう。
とはいえ、相手は普通の人間だ。勝機は十分にあるだろう。でも、もちろん油断はしない。戦闘態勢に入る。絶対に勝ってこの連鎖を止めてみせる。そして、凜を助ける。
お互いに戦闘態勢を取り、にらみ合う。経験したことのないような緊張感が漂う。
最初に攻撃したのは中村だった。あいつは人間のはずだから、私たちと違って特別な能力は使えない。それにもかかわらず、スピードは私と同等かそれ以上で、強烈なパンチが繰り出される。スピードだけでなく、連発されるパンチの量が多すぎて、私は避けてガードするのが精いっぱいだった。しかし、当たらなければ消耗戦となり、こちらが有利になるはずだ。
その形勢は1時間も続いた。私は攻撃を一度もせずに、相手の体力切れを待っていた。しかし、相手の体力は一向に切れそうにない。このままでは時間がない。だから隙を狙って攻撃せねば。一時間も戦い続けて気づいたことが一つだけある。それは、一度パンチを打ってから次のパンチを打とうとする、本当に僅かな間、彼はまばたきをしている。だからそこを狙う。その瞬間に姿を消す。
目を開けている状態で姿を消しても、彼ほどの実力者であればすぐに位置がばれてしまうだろう。そして、高速で彼のお札を切り刻む。よし、次のパンチの後にやろう。
躊躇なくパンチが繰り出される。そして、それを防いで姿を消す。きっとまだばれていないだろう。あとは高速で前に切り刻みに行くだ…
驚くことに、彼の姿は私の目の前からいなくなっていた。うそだろ…?そして、私の背中に何かが突き刺さった。痛い。痛い。痛い。焼けるような痛みが背中を襲う。おそらく長い刃のナイフで心臓を刺されたのだろう。
地面に倒れながら、「なんでお前が呪いなんか広めるんだよ」と聞くと、彼は怒り気味にこう言った。「特に理由はない。強いて言えば、こっちの世界が嫌いだからかな。こんな平和すぎる世界は必要ないんだよ。」
意識が朦朧もうろうとしてきたが、「そのお札は本当にこの世界で…広まっている呪いの…呪具なのか?」とかろうじて聞く。
「ああ、そうだぞ。」
彼がそのセリフを言った瞬間、彼の手と足は消えていた。
「んな…え…?」彼は驚く。まあ、無理もない。なんたって人間技じゃないからな。
歩いて彼に近づき、お札を取り上げて粉々にして燃やした。
「惜しかったね。中村。」そう彼に言い放ち、凛の封印を解いた。
私の体は全回復していた。刺された心臓もピンピンしている。
「私、一応神様だからね?基本的になんでもできちゃうんだ。負けたふりも回復も嘘を見抜くこともできるし、即死攻撃だってね。」
「そんなわけで、じゃあな。中村。」中村を例の箱に封印する。これじゃあ、この箱が犯罪者用ボックスではないか。まあ、いいけど。
「一件落着…かな?」と凛に聞くと、「はい!」と嬉しそうに返事をしてくれた。いやはや、かわいいなあと思ってしまう。
さて、復旧作業に入らなければならないな。いや、その前にちょっと休憩するか。
ーーー
彼女は前と同じように<<黄色の木>>に寄りかかりながら目を閉じる。しかし、彼女の顔には好奇心はなく、疲労感が感じ取られた。
「神様は忙しすぎる。せっかく人間界の学園生活を楽しんでいたというのに。次に行くのはいつになるのだろうか。何百万年後ぐらいが妥当か。はあ…。」とつぶやいている。
神は万能である。しかし、人間のように楽しむことができない愚かな存在である。
神さまの少しおかしな日常 ~ほんのり混乱中~ ろん11号 @ronron115
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