第10話薬《くすり》

「キャー!!なによこれ!?」

むすめかがみさけんだ。おどろいた家族かぞくってくる。

「どうした!」

「これ!て!!」

左耳ひだりみみうえに、なんともいえないうつくしいはな上向うわむきにいている。家族かぞくはそのはな一瞬いっしゅんとれたが、われかえってあわてた。

れないのか!」

「ムリよ!」

「ま、まあキレイなんだし、そのままつけておけばいんじゃないか?」

「ええっ!?」

「とにかく病院びょういんきましょう!」

あたまからえているのでのう検査けんさをした。結果けっかは…。


「これはるとかえってあぶないですな。脳全体のうぜんたい植物しょくぶつっています。」

「そんなあ…」

むすめはうなだれた。そのときはななかまっていたみつゆかに落ちた。フワッとあまかおりがひろがる。それにつられた家族かぞく1人ひとり母親ははおやむすめはなゆびを入れ、みつをつけてべてみた。

すると母親ははおやこしあたりがひかった。

「あら…?こしいたくなくなったわ!」

長年ながねん腰痛ようつうえたのだ。医者いしゃおどろいて「わたしにもためさせてくれ!」とみつをなめた。するとのどひかり、いたみがえたのだった。

「このくすり万能薬ばんのうやくだ!」

医者いしゃ興奮こうふんした様子ようすった。むすめおどろき、そしてこのことは秘密ひみつにするようおねがいした。

みつがどれくらいのりょうつくられるのかからないし、かね亡者もうじゃ悪用あくようされることをおそれたからだ。しかし、せっかくの万能薬ばんのうやくなかやくてたいとおもい、たびることにした。


病気びょうき人達ひとたちをこっそりなおしにいくのだ。みつ1日いちにちやく100ccひゃくしーしーほどれた。1滴いってきやく0.1ccれいてんいちしーしー病気びょうきは治るので1000人せんにんを治すことができる。しかし、むすめあしでは1日いちにち数十人すうじゅうにんほどしかなおせなかった。そんなみつべたくらいでなおらないとしんじないひとおおかった。


ある世界一せかいいち薬剤師やくざいしがいるとうわさき、たずねてみることにした。薬剤師やくざいし事情じじょうはなしたところ、わたしのもとでカプセルにみつ1滴いってきずつ入れて、わたし名前なまえり出せば信用しんようしてもらえるのではないかと提案ていあんされた。また、このみつ解析かいせきしておなじものをつくり、全人類ぜんじんるい病気びょうきなお挑戦ちょうせんをさせてしいとった。


むすめ大賛成だいさんせいした。自分じぶんいたこのはなみつ全人類ぜんじんるいのために役立やくだてられるなら、こんなにうれしいことはない。みつ毎日まいにち80ccはちじゅっしーしー(800人分はっぴゃくにんぶん)をカプセルに、20ccにじゅっしーしー研究用けんきゅうよう使用しようした。全人類ぜんじんるいやく3億人さんおくにんほど。むすめきているうちに完成かんせいさせなければならない。


数十年すうじゅうねんって、世界一せかいいち薬剤師やくざいしみつ成分せいぶん解析かいせきくして、ついいちからみつつくることに成功せいこうした。

それまでもむすめつくっていた毎日まいにち800カプセルはっぴゃくかぷせるくすり重病人じゅうびょうにんから優先的ゆうせんてきすくっていたので、おおくのすくわれたひとたちから感謝かんしゃされていた。しかし、くすりわなかった人々ひとびともいる。突然死とつぜんし場合ばあいだ。それは天寿てんじゅだったとあきらめるしかなかった。


むすめ老女ろうじょになりかってきたことだが、ムリな生活せいかつさえしなければみつ1滴いってきべた人は生涯しょうがい病気びょうきにかかることはいそうで、死因しいん老衰ろうすいむ。そのためあかぼうころみなみつあたえられ、生涯しょうがい健康けんこうしあわせにごしました。



ひとこと

老女ろうじょ聖女せいじょたたえられ、もなくこのりました。

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国語辞典ショートショート小説チャレンジ 十神愛 @nagakami_airi

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