第3話 みんな、それぞれの正義の中で闘っている。

「こはる、大丈夫か」

駅前での騒動から逃れてきた俺たちは、駅から少し離れた雑居ビルの間に身を潜めていた。


「うん、大丈夫だよ」

そういうこはるだが、表情や指先の震えから不安であることが容易に見て取れる。


俺は雑居ビルの隙間から顔を出した。

そこには、整然と雑居ビルが立ち並ぶ、いつもの大通りと、その車道の真ん中を、駅の方から逃げ惑う人々の姿があった。


あの後、警察の特殊部隊や自衛隊などが駆け付け、応戦したものの、僅か10数人という少数の部隊は、今の技術からは到底ありえないような強力で、非現実的な兵器を様々に用いてきて、十数分と持たずに駅周辺500メートルに及ぶ範囲を占領されてしまったらしいと、今、ニュースの中継で知った。

俺は、この期に及んで呑気に駅前にヘリコプターを飛ばしているテレビ局に、呆れと、されどそのおかげで情報を知れたことへの感謝と、それどころではないという危機感がごちゃ混ぜになった感情に苛まれた。


「いつまでもここに居る訳にもいかないな」

俺がそうつぶやくと、背後から足音が聞こえた。

こはるの足音かと思って振り返ると、俺とこはるの後ろに、近未来的なスーツを身にまとった人間が迫ってきた。さっき駅前で多くの人の存在を一瞬にして無に帰した恐ろしい銃口は、小刻みに震えていた。


「これは世界のため、これは世界のため、、、、、、」

僅かに聞こえる程度の小声で、自分に言い聞かせるようにつぶやきあがら迫ってくる。

フルフェイスのヘルメットの間から覗くその人間の目には生気がなく、しかし無感情ではなく、何かにおびえているように見えた。


「翔君、、、」

こはるは俺の背中から手をまわし、震えながら俺に抱き着いてきた。


「一度話を聞いてほしい!!」

俺はその人間に言った。


「これは世界のため、これは世界のため、、、、、、、」

しかしその人間は、一向に聞く耳を持たず、こちらに向けて銃を撃ってきた!


「っっ!!」

避ける間もなく撃たれた光に、駅前での光景が浮かんだ。

しかしその光は俺たちに当たることは無かった。


再び銃口を見る。

やはり銃口が小刻みに震えている。


俺は尋ねた。

「本当は誰かを傷つけたくなんか無いんじゃないのか?」


「うるさい!うるさい、うるさい!!君には関係ないだろう!」


「関係ないことは無い。今、まさに殺されそうになってるんだからな」


「、、、っ、」


「もしそうなら、なぜこんなことをしているんだ?」


「、、、言えない」

人間は目をそらし、唇をかみしめっている。


「、、、」

俺はその人間を見つめ続けた。体感5分くらいの長い沈黙の後、その人間は顔全体を覆うヘルメットを外し、今に至る経緯を話し始めた。

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終末ループ 真城しろ @mashiro-shiro

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