第12話 盗賊、懐かしさを感じる。


 俺たちは冒険者ギルドへ戻ってきていた。


 ちなみに、ウェルタン村を襲っていた盗賊団については、サクッと壊滅させておいた。これでF級パーティーとしては、2回目の依頼の攻略となったわけだ。


 ちなみに、名もなき盗賊団の中にあの上級トラップを仕掛けたであろう盗賊は見当たらなかった。


 まあそんなもんだろう。あんな凄い罠を仕掛けられるくらいなら、盗賊の中でもトップクラスだし、そうそう尻尾を出すとは思えない。


 それでも、盗賊が関係している事件を着実にこなしていけば、いずれは本物と遭遇できるはずだ。


「おい、聞いたか? あいつらが盗賊団を壊滅したそうだぞ」


「あの名もなき盗賊団か。ウェルタン村を長年苦しめてたっていう」


「ってことは、ルファンが犯人じゃなかったのか?」


「まだわからんが、犯人だって断定もできんよ。盗賊が盗賊を叩くわけもないしな……」


「……」


 周りからは、そんな声がちらほらと聞こえてきた。まだまだ俺たちに対する疑念の視線は感じるが、それでも大分和らいできた気がする。


 俺はユユらとしたり顔を見合わせて頷いた。この調子で盗賊案件の依頼を着実にこなしていけば、自分たちに対する偏見はもっとなくなっていくだろう。


「あなた方、お手柄ですね! これが成功報酬です!」


「「「「「ぉお……!」」」」」


 そういうわけで、俺たちは受付で報告をして成功報酬を貰ったわけだが、思っていたものと全然違っていた。これは結構な大金だ。


「ククッ……これなら、お小遣いも増えそうですねえ」


 貪欲な顔をしたユユが両手で硬貨を持ち上げてニヤリと笑ったのち、俺らの視線で我に返ったのか気まずそうに受付嬢に尋ねた。


「で、でも、一体どうしてこんなに成功報酬の額が増えたんです……?」


「それが、例の連続殺人事件で盗賊が関係した依頼が避けられる状況で、依頼者はこの案件を誰も受けてくれないだろうと諦めていたんです。それで、当初設定した成功報酬のレートを変える気も起きなかったと。なので、故郷のウェルタン村が救われたことで報酬を倍にしてほしいと頼んできたんです。感激していて、涙を流されていましたよ!」


「「「「「なるほど……」」」」」


 俺が予想した通り、危険な依頼ではあったものの、やはり受けて正解だったな。報酬が増額したこともそうだが、それだけ喜んでくれたことが何より嬉しかったし、盗賊が見直される一因にもなるだろうと思えたんだ。


 それでも、例の盗賊はまだ捕まっていないし、正体すらも掴めてはいない。これからやつの尻尾を掴むための本格的な戦いが始まるってことで、俺たちは盗賊が絡んだF級の依頼を探し始める。


「ルファン、これなんてどうかな?」


「どれどれ……」


 アランが持ってきた依頼の貼り紙を見つめる。


 その内容は、風の洞窟にしか生えてない薬草を採取してほしいというものだった。そこまでは普通の依頼だが、その洞窟が盗賊の貯まり場になっているとの注意書きがあった。


 なるほど。


 冒険者にとって、ただの盗賊は大した敵ではないわけだが、例の罠を使った冒険者殺しの盗賊が関連してるかもしれないとなると、話はまったく変わってくる。


 って、風の洞窟か……。


 個人的にはとても懐かしい場所だったので、思わずその情景が脳裏に浮かんできた。


 洞窟の最奥にはボスがいて、仲間のためにシルフの弓を盗んだ場所でもあるんだ。


 こうしたレアを盗むには、モンスターが持っている他のアイテムがどうしても邪魔になってくる。


 また、上級のレアを盗むには、試行回数もそれなりに必要だ。ボスもそうそう易々とレアを盗ませてくれるほど甘くはないからな。


 俺たちの本当の戦いはこれから始まるといっても過言ではないだろう……。

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S級パーティーを追放された盗賊、初心者パーティーに拾われる。~この盗賊、とんでもない能力を持つ大怪盗だった~ 名無し @nanasi774

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