エピローグ 新たな始まりに向けて

 それから数年後、さつきと楓は地元の大学に進学していた。二人の友情は変わらず、アニメや漫画への情熱も健在だった。


 キャンパスライフを楽しみながら、二人は新しい出会いと別れを経験していく。恋愛に悩んだり、部活動に打ち込んだり、バイトに励んだり。青春真っ只中の毎日だ。


 そんなある日、さつきは大学のキャンパスで偶然、涼介を見かける。

 彼はまた別の女の子と手を繋いでいた。


「あ、涼介くん……」


 思わず、さつきが声に出してしまう。

 涼介は驚いた顔をしながらも、こちらに歩み寄ってくる。


「あれ!? さつき? 楓? 久しぶり! 元気してた?」


 涼介は明るい笑顔で話しかけてくる。まるで、あの頃の約束のことなど、すっかり忘れてしまったかのように。


「ええ、まあね。アンタは相変わらずって感じ?」とさつきが皮肉っぽく言う。

「うん、そうだね。色々あったけど、今は充実してるよ」と涼介は照れくさそうに答える。


 そっけない会話を交わし、三人は別れていく。そしてわずかな邂逅は終わってしまう。


 さつきと楓は複雑な思いを抱えながら、歩みを進める。


「あの時の涼介くんへの想い、今でも残ってるのかな」と楓がつぶやく。

「わかんない。でも、あの頃の私たちがいたことは、紛れもない事実だと思う」とさつきは言う。


「「それ以上でも、それ以下でもないかー……」」


 二人は同時にそう言って、ふっと笑みを浮かべる。


 それぐらい二人の青春の一ページは、ささやかだけれど、かけがえのないものだったのだから。


「ねえさつき、私たち、変わったと思う?」と楓が問いかける。

「そりゃあ、変わったでしょ。あの頃よりは、ちょっぴり大人になったし」とさつきが答える。

「そうだね。でも、大切なものは変わってないような気がする」

「うん、そうだね。アニメも漫画も、相変わらず大好きだしね」


 二人は顔を見合わせて笑う。


「これからも、しばらくは一緒にいられそうだね」とさつきが言う。

「もちろん。私たちの冒険は、まだまだ続くんだから」と楓が力強く言う。


 そう、彼女たちの日常は、まだ始まったばかりなのだ。


 大学を卒業したら、どんな未来が待っているのだろう。社会人になって、新しい環境に飛び込むのだろうか。結婚して、子供を育てるのだろうか。


 でも、そんなことは今は考えなくていい。大切なのは、今この瞬間を精一杯生きることだ。


「よし、今日はあの新作アニメ、一気見しちゃう?」とさつきが提案する。

「賛成。徹夜覚悟でいきますか」と楓も乗り気だ。


 二人はコンビニに立ち寄り、夜食とエナジードリンクを大量に買い込む。


「いざ、尋常に、アニメ鑑賞~!」

「おー!」


 こうして、さつきと楓の新たな日常が幕を開ける。アニメと漫画とゲームに彩られた、地味だけれど充実した日々。それが彼女たちなりの、ハッピーエンドへの始まりなのかもしれない。


(了)

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【短編小説】女子高生のだらだらとゆるゆる ―楓とさつきの場合― 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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