第三章 冬の日のぐだぐだ

 季節は移ろい、冬を迎えた。さつきと楓は相変わらず、放課後は部屋でアニメと漫画、そしてゲーム三昧の日々を送っていた。


「ああ、もうこんな時間……」と楓がぼやく。

「ん? もう一話見ちゃう?」とさつきが提案する。

「いいね、いいね。次、どれにする?」


 二人はアニメの話題で盛り上がる。

 今期のアニメから、昔の名作まで、見たいアニメはたくさんある。先人に感謝である。


「そういえばこのアニメ、主人公の女の子、私に似てない?」と楓が冗談めかして言う。

「えー、全然似てないよ。楓そんなに可愛くないし」とさつきがからかい返す。

「ひどい! 私だって、ちょっとは可愛いところぐらいあるわよ!」


 二人は笑い合う。

 こうしてふざけ合うことが、何よりの息抜きになっていた。


「あ、そろそろお腹空いてきたね」とさつきが言う。

「そだね。ちょっとコンビニ行ってくる?」と楓が提案する。

「いいね。ついでに新作のアイス買ってこようか」

「おっ、いいねいいね。私、チョコミントが食べたーい」


 こうして、二人はコンビニへ向かう。寒空の下、肩を寄せ合いながら歩く。


「ねえねえ、今日の夕飯どうする?」とさつきが聞く。

「んー、カップラーメンでいいんじゃない? 手抜きしちゃう?」と楓が言う。

「まあ、たまにはいいか。じゃあ、いろんな味買ってこようか」

「賛成。あ、あとポテチも忘れずにね」


 コンビニで夕飯の買い出しを済ませ、二人は再びさつきの部屋に戻る。


「はぁ~、外寒かったね」と楓が言う。

「ほんとほんと。……ってあれ? なんかこれ……」とさつきが気づく。


 スマホを見ると、そこには涼介のSNSの更新通知が来ていた。内容を見て二人は愕然とする。


「ねえ楓、これ見て……涼介くん、彼女できたっぽい」とさつきが絶望的な声で言う。

「まじで? ショックだね……」と楓も落ち込む。


 涼介の横で微笑む知らない女の子。

 誰だ。


 涼介が他の女の子と付き合っているなんて、信じられない。


 でも、それが現実なのだと、二人は認めざるを得なかった。そもそも二人とも涼介とつきあってるわけじゃないし、涼介が誰と付き合おうが彼の勝手なのだが、何かショックだった。


「私、涼介くんのこと、好きだったのかも……」とさつきがつぶやく。

「私も、同じだよ。気づかなかっただけで、ずっと好きだったんだ」と楓も告白する。


 二人はしばし無言で座り込む。

 涼介への想いは、友情を超えるものだったのだと今更気づいたのだ。でも、もう手遅れなのだと、わかっていた。


 失恋というほどの痛手でもなく、かといって無傷でもない……微妙な痛みだった。


「ねえ、これからどうする?」と楓が問いかける。

「わかんない。でも、私たちには私たちの世界があるから。アニメも、漫画も、ゲームも……」とさつきが言う。

「そうだね。あたし達はそれでいいのかもしんないね……」と楓も同意する。


 二人はそう言って、また日常に戻っていく。涼介への想いは、胸の奥にしまい込んで。


「よし、じゃあカップラーメン食べよっか」とさつきが言う。

「そうだね。ああ、お湯沸かすの面倒くさいなぁ」と楓がぼやく。

「ほんとそれ。……まあいっか、たまにはこんな日もありだよね」

「そだね。こういうぐだぐだした時間も、悪くないかも」


 二人はカップラーメンを啜りながら、またアニメの話を始める。涼介のことは、少しずつ忘れていけばいい。今は目の前のカップラーメンと、好きなアニメを楽しむことだけを考えればいいのだ。


「ん~、このカップラーメン、味薄くない?」とさつきが言う。

「え、そうかな? 私はちょうどいいと思うけど」と楓が首をかしげる。

「もやしも、いまいちシャキシャキしてないし」

「まあ、カップラーメンだしね。贅沢言っちゃダメだよ」


 こうして、さつきと楓のだらだらとした冬の日常は続いていく。涼介のことで少し心に傷を負ったけれど、二人の友情は揺るがない。


「ねえ、次のアニメ見ようか」

「うん、そうだね。今日は徹夜で見ちゃう?」


 少女たちの秘密基地は、今日も賑やかだ。吹きすさぶ冬の風など、何のその。彼女たちには、かけがえのない時間があるのだから。

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