セレスティアは非常に心の清らかな聖女。だけれども婚約者の王子から「てやんでい!!!」といいたくなるふざけた理由で忌み嫌われた。しかも王子は癒やしの聖女を連れてきており、その聖女ミラベルを溺愛する。
ついにセレスティアは「ばーーろーーーめーーーー!!!!」と叫びたくなるような理不尽な理由で国を追放されてしまった。
放浪先でたどり着いたのは獣人族の国。そこのもふもふ王太子に拾われて幸せに過ごす──。
見事なのはセレスティアとミラベルの対比です。
こういう話の定番だとミラベルは大したパワーを持たない偽聖女だということになるんですが、そうじゃないんです。ミラベルもちゃんとした絶大なパワーを持つ聖女、というところがこの話の深いところ。
穏やかでいつも礼儀正しいセレスティアと、人生楽しんでなんぼのもんじゃい!という精神で「楽しみ方」を間違えるミラベル。
もともと二人は種類は違うとはいえ同じパワーを与えられていた。
けれどミラベルは使い方を徹底的に間違えた。
そしてどんどんとミラベルは堕ちていきます。
強大なパワーをあたえられたとき、セレスティアのように正しく扱えるのか。それともミラベルのように私利私欲のために使ってしまうのか。
恋愛ものではありつつも、非常に哲学的なお話でした。
どんなに理不尽な仕打ちを受けても、心まで折れるとは限りません。
聖女セレスティアの物語は、そんな強さと優しさを持つ少女が、自らの道を歩き出す姿を描いています。
彼女を待ち受けていたのは、華やかな宮廷ではなく、冷酷な追放劇でした。
けれど、その先に広がるのは決して絶望だけではありません。
仲間たちの温かさ、そして新たな出会いが、彼女に本当の居場所を示してくれます。
物語の魅力は、登場人物の生き生きとしたやり取りにあります。
セレスティアを支えるメイドたちの掛け合いはユーモアがあり、シリアスな展開の中でもほっとできる瞬間が生まれます。
彼女たちが築く関係が、どれほどセレスティアの支えになっていたのかを思うと、胸が温かくなります。
静かに微笑む彼女の背後には、かつての痛みもあります。
それでも前を向く姿に、思わず心を動かされる物語です。