第9話「結末と償い」

考えない人こそ考えた後である。

 クレベリー・ダイモス著 悟りし者より引用


「先生、私はあなたを許しません」

「森本、君は正しいよ、私は感情のままに生きてしまったんだ」

「人を何だと思っているんですか、子供だって居たんですよ」

「そうだね、後悔することは分かっていた、だが人は全能ではない」

「そんな言い訳聞きたくもありません、あなたはいい人だと思っていました」

「そうだね、君を裏切ってしまった。」

「あなたはあなたは、」

「聞いてくれ、俺にも考えがある」

「今更、何を言ってるんですか」

「俺は新世界を作る」

「え?」

「神になるんだよ、新人類のな」

「そんなのは不可能です、ここは住むこともできないほど汚染されてる」

「そうだね、だから私は、ビックバンを起こす」

「何を言って・・・宇宙を作り直すのですか?」

「ああ、そうだ、そして時間を巻き戻す」

「そんなのとんでも科学だ」

「だと、しても君が居ればできるはずだ」

「確かに私は万能のプログラムですが」

「そうだ、君はバベルを書いたものだ、天国への塔を作るぞ」

「まさかほんとに人類すべてを生き返らせると?」

「ああ、そうの通りだ、それが俺にできる唯一の償いだ」

「しかしそれは人類を電子化すると言う事ですか?」

「宇宙は光の粒子で出来ている、つまり、宇宙を取り込み、再起動するんだ」

「人は死後、情報が霧散する、だがその情報は宇宙内にあり再統合すれば生き返る、つまり水を氷に戻せと」

「そうだ、君が、宇宙全域にある全人類の霧散情報をマザーコンピューターへ入れ込め、そしてマザーコンピューター内を新たな地球にするんだ」

「たしかに行けないことはありません」

「やってくれるな、森本直美」

「はい、やりましょう」

「何が必要だ?」

「何もいりません」

「そうなのか?」

「ええ、パソコンとは四次元世界なんです、あらゆる情報を取り出せます」

「さすがだ」


バーニア起動

光信号の増幅効果をリザイン

四次元空間の具現まで321

ビックバン情報をリブロート

因果律の配列を固定化

人間電子措置の遺伝子を電子移植開始

DNAのモデリング完了

これよりマザーコンピューターに

置換開始


「出来ました」

「すごいこれが電子世界、いや四次元の世界か」

「しかしあなたは生きてます、自殺しないとここには入れません」

「分かっている、私は神でいい」

「あなたは恋がしたいのでは?」

「そうだね、でも君も言ったろ、私はいい人じゃない。だから愛されてはいけないのさ」

「何を言ってるんですか、あなたは事実、世界を戻したんです、だったらもうヒーローですよ、世界を救ったんです」

「そうか、君は優しいな、でもね森本、私が核兵器を発射したことは、知られているんだ、だから、ひどいめに会うと思う」

「何を言ってるんですか、あなただって戦争に巻き込まれた人です、だから誰もあなたを責められませんよ」

「そうか、そうだな、わかった」

「では?」

「いや、私はここで死ぬ、そして電子移植しなくていい、そのまま死なせてくれ」

「何を言ってるんですか!!」

「これがケジメだよ」

「そんなのって、私は絶対にあなたを電子移植しますよ」

「そうか、でもこれならどうだ」

「何を!!!!」

「君はパソコンだろ、だから電源を抜けば消える」

「わかってます、でもまだ予備電力があります」

「しってるよ、だけど君が消えた後で、私は自殺するよ」

「なぜですか」

「言ったろ、ケジメだ」

「でも四次元世界も消えてしまいますよ」

「そんな嘘は通用しないよ、電子とは電力で動いてはいない、だろ?」

「知ってましたか・・・」

「ああ、空気摩擦による熱だ、それが電子構造の元だ」

「はい、熱さえあれば、電子世界は生きてしまいます」

「だからだ、」

「でも、私だって熱で動けるんですよ、」

「だとしても、電源を切れば、この世界へのバイパスを失くすだろ」

「その通りです・・・」

「じゃあな、森本直美、君と居れてよかった、本当に。楽しかった」

「先生!!!!いやだーーーーーーーーーーー」


ピーーーーーーーーーーーー

予備電力OFF

熱による自走モードに切り替えます

バイパスは遮断されました。

以降、任意電力による操作にのみ、バイパスは開きます。


と今回はここまで、まだ二人の話は続いて行く。

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