第6話ゲーム部vs生徒会


 僕は午後の授業を無事に終えてゲーム部の部室へ行くことにした。


 いつもと変わらない廊下、いつもと変わらない部室……はずだった。


 僕が部室に入ろうとするといつもとは違う聞きなれない声が聞こえた。


 少し不審に思い、僕は部室のドアに耳を当てて耳を聞いてみることにした。


 マジでなにしてんだ……?


「本当に少年が酷いんだ」


 巫先輩の声。


「それはお前が悪いんだろ……」


 蓮先輩の声。


「てかこの部活まだ生きてたんだね〜〜」


 お前は誰やねん。


 男……? いや声が高めだから女か。


「少年が来てくれたおかげでな。部活の最低人数が三人ということを初めて聞いたからな」


「いや俺説明したけどな」


「で、何の様なんよ? うちを呼び出して」


「いやちょっとな。この部室のことだ。狭い!! 暗い!! 遠い!! の三拍子揃ったこの部室以外のところを部室にしたい。探してくれ」


「無理だよ〜〜無理がある〜〜」


 女は困ったように巫先輩の頼みに返答した。


 それもそのはず親鸞学園の部活動に使う部室は生徒会によってそれぞれ用意される。それも一学期ごとに一回のみ。部員人数三人のところに生徒会が耳を貸すわけがない。


 僕はため息をついた。あまりにも不毛な会話にだ。


「分かってる。私は分かっている、友よ。ゲームで決めようじゃないか」


「ゲーム?」


「私がゲームで勝ったらいずみには生徒会に頼み込んでもらう。私が負けたら八万円を払おうではないか」


 巫先輩が得意げに言った。


「分かった〜〜〜いいよ〜〜〜」


 泉と呼ばれた女もそれを了承する。


「ではゲームはーーー」


「ちょっと待てーーーーーい!!!!」


 僕はドアを蹴って、部室に入る。


 そこにいたのは巫先輩と蓮先輩とパツキン長髪、深緑の瞳の女の子。恐らく巫先輩が泉と呼んでいた女の子だろう。三人ともポカンとして立ち尽くしている。


 僕はそんなものは無視して巫先輩の腕を引っ張り、自分の方に寄せ耳の近くで囁いた。


「ちょ、それはまずいですって!」


「なんの話だ?」


 相変わらず巫先輩はいつもの調子でとぼけた。


「なんの話だ? じゃないですよ。生徒会に申し出とかどうかしてます! やめときましょう」


「なぜやめる必要があるんだ? 少年だってこの部室いやだろう?」


「だからって生徒会に申し出とか……。先生に怒られますよ」


「なぜ?」


「だってこの部活三人しかいないじゃないですか〜〜〜」


「つまり?」


「話すら無意味ってことですよ! 部員三人しかいない部活の部室変更なんて生徒会が認めるわけないでしょうが!!」


「それは安心しろ。そこにいる泉が生徒会副会長だ」


「え?」


 え? え?


 僕がくるりと振り返るとその女の子は金髪をくるくるといじっており何やら気まずそうにしていた。


「えっとぉーーーー」


 彼女は血色の良い太ももと腕を交差させながらゆっくりと話した。


「私は和泉京荘いずみきょうそ。巫ちゃんから聞いての通り、生徒会副会長だよ。泉って呼んでね。よろしく、えっとぉーーー少年くん?」


「あ、よろしくお願いします。僕は詩琴琳です。呼び方は好きにどうぞ」


 僕は少し緊張して距離を取った。


「じゃあ詩琴くんだね。さっきはどうしたの?」


 さっき? ああ、ドアを蹴って登場したやつのことか。


 先ほどの記憶はぶり返し、少し恥ずかしくなってしまった。


「いや、あのですね……。巫先輩はタチが悪いのでゲームを止めようと……」


「なんだ、そうだったの。でも大丈夫よ慣れてるから」


 泉先輩はニコッと笑い、深緑の目を細めた。


「どんなゲームなの?」


「『宣誓ジャンケン』にしよう。シンプルでいい」


 泉先輩の質問に巫先輩がいたずっらぽい笑みで返す。


 『宣誓ジャンケン』って確か僕が昼間やったやつだよな。


 その時、僕の背後から肩を置かれるのがわかった。


「いや本当タチが悪いな」


 蓮先輩だ。


「あのゲームね、一見運ゲーのように見えて意外と思考力を鍛えるゲームなんだなこれが。相手の性格や表情でなにを出すのかを把握、相手が何を思って何を考えているのかをよみとるゲームだ」


 蓮先輩が語り出した。


「このゲーム、勝てると思いますか? 巫先輩」


「ま、大丈夫だろ。負けたの見たことないし」


 そう言って僕たちは二人の方に視線を移した。


「うちはグー出す!」


「じゃあ私はパーで」


 ほんとにあれで考えてんのかね。


 あっさりと決めた泉先輩と巫先輩に対してそんなことを思った。


「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」


「オーイェーーース!!」


「ふぇぇぇぇぇえええええ」


 まぁ知ってた。


 結果はもちろん、巫先輩が喜び泉先輩は泣いている。


 泉先輩は金髪を頭に抱え体育座りをしながら俯いている。


 この悲しみ方する人あんま見ないよな、と思いながら僕は見ていた。


「という〜〜〜わけで、よろすく! 泉!」


 巫先輩はニッコニコ顔で泉先輩をヨシヨシする。


「うぇぇぇぇえええええん、負けちゃったよ〜〜〜蓮く〜〜ん」


 泉先輩はそんな巫先輩を無視し、蓮先輩の制服に顔を突っ伏せる。


「はいはい、よしよし」


 蓮先輩は適当にあしらいながら長時間泉先輩を膝の上に乗せていた。


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パラレル・ザ・ゲームズ 星川亜里 @christmas1472580

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