第6話

 夏の日、白色のワンピースを着て外に出た。

 セミが鳴く声が暑さを倍増させる。

 歩いていると女の人が私に向かって歩いてきた。

「夏姫ちゃん、お葬式来てくれてありがとう。あの子も喜んだと思うよ」

 鈴のお母さんだった。

「いえ、鈴夏さんにお世話になったので」

 鈴は失踪してから三日後に海の浜辺で見つかったらしい。

 鈴の姿はとても人とは思えないほど膨れ上がっていた。

「そういえば、左耳見つかったんですか」

 とても苦い顔をした。

 鈴の死体は見つかったけど、左耳だけ見つかって無いらしい。

「それがね、まだなのよ」

 鈴のお母さんを少し遠くを見た。

「これからうちに来ない?あの子の部屋何も片付けてなくてね」

「よろしいんですか?」

 鈴のお母さんと一緒に家に向かった。

 そのまま鈴の部屋に入れてもらった。

 見渡すと何も変わってなかった。

 でも知っている。

 鈴の家に泊まった時に鈴が焦っていた。

 クローゼットに向かった。開けるとそこには私の写真が貼ってあった。

 その中に一つの封筒があった。

 中を開けると私宛だった。

「夏姫ちゃん、私出かけるけどどうする?」

「私も出ます」

 封筒をカバンに入れて鈴の家を出た。

 そのまま海に来た。

 ベンチに座って封筒の中身を出して読み始めた。

『拝啓 夏姫

 あなたがこれを見てることは私はこの世にいないか、生きていても喋れない状態だと思います。

 だから書きたいことを書きます。許してね

 私は夏姫のことが好きです。だから夏姫が涼太のことを好きって言ったときとても嫉妬しました。

 私は夏姫のことをずっとお姫様って思っていました。だから姫を誑かす奴は処分します。許して

 それじゃあ、行ってくるね』

 読み終わった手紙をもう一度封筒の中に戻した。

 これを書いて涼太くんのところに行ったならこれは辞別みたいじゃん。

「らしいな、しかも面白い」

 笑いが溢れてくる。

 私は昔から愛されていた。周りからよくチヤホヤされてた。

 色んな人が私を愛してくれた。

 でも誰も心から愛せなかった。

 そう思った時は相手を誑かして破滅へ追いやった。

 誑かす時は決まっている、絶対に本名で呼ばない。

 自分が相手に依存したくないから。

 それにハマってときくらいに鈴にあった。

 この子は愛せるかな?それともまた破滅かな?

 思いのほか勝手に破滅したけど。

 個人的にはこの子はいけるかなって思ったんだけど。

 涼太くんもありなんだけど、あの子タイプじゃない。

 鈴に腹を刺された涼太くんは一命は取り留めたらしい。

 今は話せる状態まで回復しているらしい。

 でも、私のためにここまでしてくれたのは鈴が初めてだよ。

 失いたくなかった、もっと可愛がりたかった。

「帰ろう」

 海を見てると見え覚えがあるものがあった。

「これ、鈴にあげた物じゃん」

 手に取り海を眺めているとあるもの流れてきた。

「ああ、やっぱ最高だよ。鈴夏」

 鈴の耳が流れてきた。

 見つかってない左耳。椿の花のピアス。

 耳を小瓶に入れてカバンの中に入れた。

 近くを見渡すと、一部だけ赤くなった場所があった。

 走ってそこに行くと赤黒く染まった砂があった。

 それを手にとって同じ小瓶の中に入れた。

 その小瓶を頭の上に掲げた。

「綺麗だよ、鈴夏」

 今だったら言える私は鈴夏を愛していた!!

 大好き。ここまでしてくれるのは鈴夏、あなただけだった。

 愛してもいたし、同時に誑かしてけがしてた。

 私はあの子が好きだ。

 恋愛的な感情かわからない。

 でも、誰よりもあいしていた。

 二人ともお互いに穢しあっていた。

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夏をアイした少女 @__miya__

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