第3話 なにやら不穏な空気が・・・


あのスカした野郎(暫定父親)が部屋に来てから数日。この部屋に来る人が増えた。


それも、ただかわいい赤ちゃんを見ようという雰囲気ではなく、なにか不吉なものを見るような、異物を見るかのような、嫌な視線を向けてくる老人ばかりだ。


なんか気持ち悪いし、そんな目を向けられていい気分にはならないので、だいたい睨みつけてやるのだが、なぜかそうするとあの偏屈そうな老人たちが腰を抜かして出ていくのだ。


たまに出ていく前に唾をはきながら何かを叫んでいく老人もいるのだが、そういう奴らはママに睨まれて出ていく。


今日もまた、同じように偏屈そうなジジイが・・・って、うん?

この人はなにか違う気がする。俺に向ける目が優しい。それこそ、おじいちゃんが初孫をみるような目だ。


それに、よく見ると今までの老人のように腰の曲がったヨボヨボな感じではなく、歳をとっていても見てわかるほどにムキムキで、精悍な顔つきをしている。ハリウッド映画にでも出てきそうな、ナイスミドルならぬナイスシニアという感じで、歴戦の強者っぽさがすごい。


俺をおそるおそる抱っこして、笑いかけてくる。だいぶ強面だが、見ていて安心できる、優しい笑顔だ。よし、サービスしてやろう。


「でぃーぢ!」


じいちゃん!って、また言えてないが・・・というか、これで通じるのか?思いっきり日本語なんだが。


キマらなくてモヤモヤしている俺の内心とは対象的に、このおじいさんはとんでもない喜びようだ。今にも飛び立ちそうなほど翼をバッサバサしている。


・・・通じているのか?日本語が?いや、だが、俺はこの人たちが何を言っているのかは分からない。まあ、赤ちゃんが自分に話しかけてくれたってだけで大人は嬉しいものだから、通じているとも限らないか。


うん?どうしいたんだいママ?俺に話しかけてきて・・・

ん?まーま、まーま?ママ?って俺に言わせようとしてるのか?まあ、


「まーま!」


おお!今までで一番はっきり言えた!

ママも大喜びといった表情で、翼を大きく広げている。

うーむ、それにしても、やっぱりママ、が母親、という意味で通じていそうだ。ただの偶然か?それとも、なにか理由が・・・?


そうしてこの世界について考えを巡らえせていると、部屋の扉から誰かが入ってきた。



なんか趣味の悪い金色の服を着た、でっぷりと太ったハゲの老人だ。今までで一番嫌な感じのするやつだ。ノックもせずに入ってきて、大きな足音を立ててずんずんと偉そうに歩いてきた。しかも、明らかにママの胸元にいやらしい視線を向けている。


さっきまで笑顔だった二人も、こいつが入ってきた途端に険しい表情をしている。入ってきて早々なにかを喚いているが、俺には理解できない。だが、二人がさらに険しい表情をしたのを見ると、どうやらろくでもないことを言っているのだろう。


じいさんから俺をひったくるように奪い、背中を見て何かを大声で叫んでいる。うるさい。しかも、持ち方も雑だ。首根っこを掴んでいる。赤ちゃんにそんなことをしてはいけないとわかっていないのだろうか。しかも、喚いているせいで体が上下にゆらされて気持ち悪い。

このクソジジイ、成長したらぶち殺してやる。



ママが何かを言って、このクソジジイが俺をママの方に放り投げた。


ママは俺に一切衝撃の加わらない完璧な抱っこで受け止めたが、鬼神もかくやというほどの憤怒の形相だ。というか、投げられて衝撃がゼロってなに?物理的にそんなことが可能なのか?


そんな俺の困惑をよそに、クソジジイはずっと唾を飛ばしながら、なにかを声高に主張し続けている。最後に俺に指を指して何か言って腹立つキメ顔をした。人にゆびをさすな。


その後にいやらしい顔でママに対して何かを言っている。

うっわ、ここまで典型的な悪人だと何を言っているのか逆にわかりやすいな、



 ドッゴオオオォォォォォン!!!!!!!!!!!!!



ん!?!?!?急に視点が変わったかと思ったら、クソジジイが吹っ飛んでる!?

頭から壁にめり込んでいるが、生きているのか?

というか、状況とママの体勢からして、もしかしてママがこの一瞬で移動してクソジジイを殴ったのか?やば・・・


・・・というか、殴ってよかったのか?このクソジジイ。なんか金ぴかだし、偉そうにしてるからあんまし殴っちゃいけない人な気がするんだけど・・・じいちゃんも驚いて・・・って、ガッツポーズしてる!?大丈夫なんか?

まあ、多分大丈夫、なの・・か?





 大 丈 夫 じ ゃ な か っ た よ ね 。


まあ、そりゃそうだ。明らかにあのクソジジイは権力を持っている人間だったし。


あれから日常的に嫌がらせが起きた。窓に石が投げつけられたり、外で子供らしき声が何かを叫んでいったり、俺は寝ていたからわからなかったが、夜には侵入者らしき人も来ていたっぽい。朝に部屋の壁に男の人がめり込んでいることが何回かあった。というか、音もなく壁にめり込ませるって、どうやったんだ・・・


そうしているうちに、半年ほどが経ち、そしてついに想定していた最悪の事態が起きた。

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転生TS宇宙飛行士、もう一度宇宙(そら)をめざす! しゃなぎ @SyaNagi

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