第2話 ここはどこ?わたしはだれ?


赤ちゃんになったことを受け入れ、息子との別れを確認してから早3日。


さすがに驚きも薄れ、周りに目を向ける余裕が出てきた。生まれてしばらく経った影響なのか、視界もはっきりしてきた。

そこで気がついたのだが、



 もしかしてここ、地球じゃないんじゃね?



いや、何を言ってるんだと思うかもしれないが、いま自分をだっこしているママ(暫定)に、翼が生えてるんだよね。

なんか、でかくて白い、いわゆる天使っぽい羽根だ。

しかも、服もいわゆる天使が来てそうなイメージのあるひらひらした布を巻き付けたみたいな、古代ローマ風の、たしかトガと呼ばれる種類の服を着ている。


地球には翼を持った人類は存在しなかったはずだし、仮にこのママ(暫定)が、出産のときにもコスプレをする変人じゃなければ、たぶん異世界?なのかもしれない。

もしくはどこかの国の極秘の人体実験か。


それに、言葉も聞き取れない。宇宙飛行士として5カ国語をマスターし、その他の色々な国の言語も軽く触れていた俺が、全く聞き覚えのない言語を喋っている。時々日本語のような単語が聞こえることもあるが、空耳だろう。


それに、家もだ。木の中をくり抜いたような、不思議な部屋で、その上に全く見覚えのない筒?のようなものから飲み水がでてくる。


ちなみにママ(暫定)は、超美人だ。サラサラのブロンドヘアーの長髪、サファイアのような碧眼に、非常にえr、いや、母性を感じる巨乳。控えめに言っても、どこのモデルなんだって感じ。というか、身なりもいいし、実験体説はなさそうか。


うーむ、だとしても、異世界というのはやはり信じ難い・・・


 ガチャ


うん?誰か入ってきた。生まれてから一度もこの部屋にママ(暫定)以外入っているのを見たことないというのに。


なんか、冷たそうな男だ。金髪碧眼なのはママと変わらないが、髪は全体的にくすんでいて、目も死んでいる。あと、この人も白い翼を持っている。ママと違って広げてはいないが、背中からはみ出ている。

ママが親しげに話しかけているが、もしかしてこの人が俺の父親なのだろうか?それにしては俺に向ける目が冷たすぎる気もするが。



ん?ママがなにかを俺に言っている?ソ・ラ、ソ・ラ、って、もしかして、俺の名前か?ソラ?

試しに聞き返してみる。


「お、あ?」


くっ、絶望的な滑舌だ。でも、ママがすごい喜んでソラ、と呼びかけ続けるので、きっと間違いではなさそうだ。それにしても、ソラ、か。空、もしくは宇宙?地球と同じ意味を持っているわけではないだろうが、奇しくも俺にぴったりな名前じゃないか。



ソラ、ソラ・・・気に入った。よし、今日から俺の名前は、ソラ、だ!




それにしても、この暫定父親、この一連の流れでピクリとも表情を動かさない。感情豊かなママがいるせいで、少々不気味に感じる。



?俺を抱っこするのか?やっぱり父親らしく・・って、なんかひっくり返されてる?

背中の方を見ているのか?


そういや、俺がこの翼の生えた両親から生まれたのであれば、俺にも翼が生えているのだろうか?ちょっと動かせるか試してみるか。


背中の方に、これまでにない筋肉があるのを感じる。いままで気づかなかったが、意識してみるとなかなかに違和感があるな。

とりあえず、力を入れてみるか。


 ピョコピョコ


おおっ!動いた!なかなか不思議な感覚・・・だが、翼があるなら、もしかするとこの世界でも・・・



???


なんか、ママの反応が変だぞ?なんか、悲しそうな顔をしている。あ、暫定父親が俺をママに返した。相変わらず無表情だ。


?暫定父親が、ママになにか言ってる・・・って、ママが、泣いている!?

くっそ、この無表情野郎・・・


「あうあー!」


あっちいけー!って、滑舌が・・・

まあ、ママが笑ってくれたからいいけど。


それにしても、なんだ?どうしてママが悲しんでいる?それに、このスカした野郎も、さっきよりも割増で無表情だ。


うーむ、反応から察するに、俺の翼になにか問題があるのか?

まさか、なにか障害がある、とか?

いや、でもちゃんと動くし、違うと思いたいがなー。空は飛びたいし。



あ、スカし野郎も帰るっぽい。ん?帰り際になんか言って・・・ってまたママの表情が曇った。おいこら、このスカし野郎ー!たとえお前が父親だったとしても、ぜったいにパパとは呼んでやらねえからなー!



「ばぶぶーー!!」



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