第1話 転生・・・してる?


ん〜〜〜。眠い。なんか、温かい。ぬるま湯の中に使っているような・・・暖かくて、安心するような・・・


ん!?なんか、潰されてる!?頭が、ぎゅうぎゅうと締め付けられるような・・・しかも、抵抗できない・・・


ひゃっ!なんか、頭の部分がスースーする・・・どこかに出た?


次々と体が外へと出ていく。何だ!?何が起こっている!?


肩、腰、ついには足。全身が、何かの外へ出た。開放感と、寒さ、そしてどことない息苦しさを感じる。


何だ?ムズムズする。自分の意思に反して体が動いて・・・



 オンギャー! オンギャー! オンギャー!



!?!?!?!?!?!?

これは・・・俺の声!?!?まるで赤ちゃんじゃないか!?

へ??待て待て、何が起こっている!?体が言うことを聞かない、泣きやめない!


混乱しながらも、泣き続ける。あっ、止まった。

ん?なにか・・突起が、口の部分に・・?あっ・・まさか・・・いや、まさかまさか。・・・一旦思考停止しよう。

口が勝手に動く。なんかちゅぱちゅぱ言ってる気がするが、気のせい気のせい。

あー、なんか出てきた?口の中に・・これってミルk、いや、そんなはずないよな、いやー、何かわからないなー。

あっ、おいしい。


そこで意識が途切れた。



目が覚めた。

さっきは気づかなかったが、周りが明るい。でも、視界はぼんやりしている。

誰かにだっこされてる。温かい。

いつのまにか、服のようなものを着せられてる。赤ちゃんの着る、あのバスローブみたいなの。

あっ、泣く。おぎゃー。あっ、またおっp、いや、なにかの突起が、ちゅぱちゅぱ。

おいしい。




・・・そうじゃなくて!

改めて、なんだこの状況?俺は・・・確か、宇宙船が小惑星に衝突して沈んで、脱出ポッドに乗って、宇宙空間で漂って・・・酸素が足りなくなって・・・・死んだ?よな。


ん〜〜?じゃあ、ここは・・・天国?いや、地獄・・か?それにしては温かくて幸せだが。


もしくは、輪廻転生、か?

だが、記憶を持ったまま生まれ変わるなんて、眉唾物だろう。それに、そんなことが起こるような心当たりなんて・・・


そういや、死ぬ前に宇宙で見たあの目玉。今もしっかりと思い出せるが、幻覚だとしてもあまりにもはっきりし過ぎだった気がする。それに、あの声も、俺の知らない声だった。その上、死の間際に、あそこまで鮮明に聞こえたのもおかしい。


あれが俺の幻覚でないとするならば、あれは宇宙に存在する何らかの地球外生命体?それなら最後になってミッションの一つを達成できたか。


もしくは、神・・・か?俺が転生しているのがあれのせいならば、そう言われたほうがしっくりくる。だが、分からない。そんなことをしてあの存在になんのメリットがあるんだ?


・・・ま、いっか。わからないことはいったん頭の片隅においといて、とりあえず生まれ変われたのはあの目玉のおかげかもしれないんだ、感謝しておこう。ありがとう、目玉さん。いや、呼びづらいし、アイさんとお呼びしよう。アイさん、ありがとう!俺、がんばるよ!






・・・よし、じゃあ、現実逃避をやめよう。今の自分は、多分赤ちゃんになっている。そのことへの不安もあるが、何より今は


ト イ レ に い き た い


やばい、さっきからもよおしていたが、そろそろ決壊しそう。それに、全く踏ん張れない。ビーバーのダムよりも頼りない。いや、あれって意外と頑丈だが。


赤ちゃんだから漏らしても大丈夫?おむつも履いてるし?そうかもしれないが、だが、中身は立派な成人男性。たとえ今が0歳児(暫定)だとしても、大人としてのプライドが傷つく。それに、あっさりと認めてしまってはなにか大事なものを失ってしまう気がする。


あ、やばい。もう限界。かくなる上は・・・泣いて気づいてもらうしかない。よし、泣くぞ、泣くからな。・・・・やっぱりちょっと恥ずかしい。あっ、やべっ


 オギャー、オギャー!




・・・・このときのことは、黒歴史として封印しよう。だって俺、もう30近くなのに・・・もう、お嫁に行けない・・・・




シクシク・・・人として大事なものを失った喪失感の中、おむつをお母さん(暫定)に替えてもらう。ここでもまた成人男性としてのプライドが・・・あれ、おしり拭くの?大はしてないけど・・・


・・・ゑ?この感覚は・・


・・・・・・俺の・・・長年連れ添ってきた息子が・・・いない?



・・・まさか、俺、女の子!?!?!?



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