最終話 二度目のセカンドライフは大神官様と
五年後____
あたしは、21歳になっていた。お腹にはキャスパー様の赤ちゃんがいる。今のあたしは、『ゼナ・リーア』として、月に一回礼拝の時に、集まった人の前で、聖典を読んでいる。
時には、キャスパー様といっしょに聖典を読むこともある。
最初はすごく緊張して、声も出なかったけど、タナトス・リーアがいっしょにいてくれた。これはかなり稀有な例らしい。
20歳になったあたしは、キャスパー様と結ばれた。
この日を待ち望んでいたキャスパー様は、あたしが壊れるんじゃないかと思うくらいに愛してくれて、次の日は、昼まで寝ていて賢者様に大目玉を食らったんだとか。
「大人になりましたね。マリオン」
「え? どうしてですか」
「色々無茶なことを言っていたのが嘘のようです」
「聖典を読んでると落ち着くんです。色々なことが書いてあるでしょう?この世界の成り立ちから、精霊の加護のおかげで人間が暮らしていける事まで」
「そうですね」
キャスパー様は、私を側に抱き寄せて、頬にキスをした。
「あなたを加護する精霊は、大変上位の大地の精霊だと分かりました」
「今頃分かったのですか?」
「普通、精霊は人間の魔法使いと契約して力を発揮します。あなたの場合は、あなた自身の身体に精霊が取り付いていたようです。あなたに魔法使いの片鱗でもあれば、もっと早く分かった事でしょう」
あたしは、そっとお腹に手を振れた。
今ここに、キャスパー様との愛の結晶がいる……。
そのせいなのかしら……? 感じられる……この子は、偉大な大地の魔法使いになると。
「もともとサントスの神殿は、愛の神殿だとも言われています。ワタシたちの聖典読みもきっと、人々の励ましになるでしょう」
「ええ……」
あたしたちは、深く誓い合った。
数ヶ月後、元気な男の子が生まれた。女系家系のキャスバー様の実家は男の子が生まれたことで、また大騒ぎだった。
賢者様から、『マーキュリー』と名付けられた我が子は元気だ。
タナトス・リーアが、銀の森から駆け付けてくれて、我が子に大地の精霊が祝福に来ていることを教えてくれた。
この子自身にも、魔法の力に恵まれていることも。
七歳までしか、いっしょにいられないらしい。その後は、銀の森の学舎に入って、魔法使いとしての修行に励むことになるという。
寂しいことだけど、七歳までは愛情を込めて育てようと思う。
あたしとキャスパー様の子供だもの。
(完)
二度目のセカンドライフは大神官様と 月杜円香 @erisax
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