第15話 よそ見のしすぎはだめです!

 今日の買い物の目的地は東京の都心部だ。

 迷宮特区が所在するのは多摩地域の山間部。

 奥多摩エリアにしては、迷宮特区専用とも言えるJRの路線が通っていて意外と交通の便は良い。

 その路線でまずは青梅駅まで行ってから、中央線の特別快速に乗り換えだ。


 ホームに停まっている特別快速には既にそれなりの数の乗客がいた。

 同年代くらいの若者が多め。

 俺達と同じで、迷宮特区に存在するいくつかの学校の生徒かな。

 ゴールデンウィーク中だし、みんな遊びにいくなら都心が良いよね。


「えーと、空いている座席は……ここだけだね」


 運良く空席を見つけるも、空いているのは2人分のみ。

 俺は当たり前のように女性陣2人に座ってもらう。


「江口君ありがとうございます」


「ありがと江口。……まあ、このくらいはね?」


 別に千浦さんの好感度を上げようとして取った行動ではなかったのだが、好印象を与えられたようだ。

 千浦さんが「ふむふむ」となにやら呟きながら頷いていた。

 

 俺は2人に向かい合うように立つ。

 それからしばらくして電車が発車する。


「えっと、2人はダンジョンで使う武器を買うんだよね?」


「ええ、そうですよ」


 千浦さんが話題を振ってきた。

 助かる、俺は口下手だから。


「予算はどうなの?ダンジョン用の武器ってけっこう高くない?」


「ああ、それなら……」


 昨日、徘徊者とコボルト・アサシンの魔結石を公的機関である迷宮産出物取引所で査定して貰ったところ素晴らしい結果が出た。

 コボルト・アサシンの魔結石は約2万円の値が付いた。

 これも十分凄いが、徘徊者の魔結石はもっと凄かった。

 なんと査定額約60万円。

 その場ですぐさま売却して2人で分けた。

 玉橋さんは「江口君が倒したのですから……」と私は要らないという素振りを見せたのだけれど、説得して受け取って貰った。

 パーティーをで倒したものはメンバーで等分するべきだ。

 その役割に関わらずね。

 それに、玉橋さんのお陰でスキルが発動したから倒せたようなものだし、玉橋さんが思っている以上に彼女の貢献度は高い。


 そんな事をかいつまんで千浦さんに教えるとめちゃくちゃ驚いていた。


「え、60万!?大金じゃん!……ていうか江口、アンタ徘徊者倒したの!?ヤバっ、ほんとに!?」


「本当だよあーちゃん。江口君は凄いんだよ。途中から武器捨てて素手で殴り倒しちゃったんだから」


「素手で、徘徊者を……?うそでしょ?」


「江口君は最強ですから!」


 千浦さんは口をポカーンと開けて、眼の前にいる俺をまじまじと見てきた。

 なんというか、美人は得だよね。

 どんな表情しても可愛いもん。


 玉橋さんがダンジョンでの出来事を熱弁して、それに対して千浦さんが色々聞き返す。

 タイプの違う2人だが、仲は非常に良さそうだ。

 物静かなタイプの玉橋さん、見るからに陽キャな千浦さん。

 

 千浦さんみたいな明るい人に笑顔を振りまかれたらコロっといく男子が大量発生しそうだ。

 彼女みたいなタイプは凄くモテそうだなぁ。

 なんて千浦さんを見ていたら何やら視線を感じる。

 ちょいっと視線を横にすると、ジト目で俺を見つめる玉橋さんが。

 うん、ちょっと千浦さんを見過ぎたらしい。

 ごめんって。

 

 そして不意にスマホを取り出す玉橋さん。

 何かイケナイ予感がする。


 少しして俺のスマホが震える。

 ナニカが送られてきたようだ。

 俺は努めて冷静にスマホを見ると、そこには玉橋さんからメッセージが来たとの通知が。

 画像も添付されている。


 おーっとコイツは。


 開く前から予想は出来ております。

 《今日の分です》という短いメッセージ。

 それに続いて添付されている画像はまたもや玉橋さんの自撮り。

 やはりというべきか肌色面積が多い。

 純白のブラとパンツが眩しいぜ。

 余裕で『スケベ』が発動です。


 スマホの画面に映る玉橋さんから、眼の前の玉橋さんに視線を移す。


 ――――どうでしたか?


 玉橋さんは声を発せずに、口元だけをそう動かした。

 なんとなくだが、を感じる。


 俺は胸の前でサムズアップをして、なんども頷いて「最高です」アピールをする。

 玉橋さんはそんな俺を見てニッコリと微笑んだ。


 千浦さんが唐突に始まった俺達の謎のやり取りを見て眉をひそめる。


「ふたりとも仲良さそうだけどさ。……なんか怪しいことしてない?」


 まずい。

 玉橋さんからエッチな自撮りが送られてきているのがバレたら普通にヤバそう。

 別に俺から「送ってくれ」と頼んでいるわけではないのだが。

 それはそれとして、とてものは事実。

 なんとか誤魔化さなければ。


「え、えーとですね」


「あーちゃんにはまだナイショです」


「むむ、すずがあたしに隠し事とは珍しい……」


 玉橋さんの誤魔化す気があるのかないのか分からないフォローが入った。


「江口杉男、やはり油断ならないヤツね……!」


 千浦さんの警戒心がまた少し上がってしまったようだ。


 さて、まだまだお出かけは始まったばかり。

 今日イチ日、どうやって乗り切ろうか?

 悩ましい限りだ。


 ああそれと。


 玉橋さんの自撮りを見て反応した部分のポジショニングを、目の前の女子2人に気付かれずに調整する方法求む。







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エロゲみたいな『スケベ』スキルをゲットした俺はこれからのダンジョン攻略と学校生活どうすればいいですか?答:ハーレムを作って無双します。 梨戸ねぎ @Negi_Nashito

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