旅を始める前に

イリスとアグニスの走る速度はとても速かった。

結局、途中でマルコさんを追い抜くほどに。

まあ、その所為で街門で衛兵に停められたんだけど。

取り敢えず、それ以外は問題なくギルド連合へと戻ってきた。

ギルド連合の入り口付近でマルコさんを待つ。

ほどなくして、マルコさんがやってくる。

その頃には、イリスとアグニスと随分打ち解けていた。

頬や頭を撫でるときゅーと鳴く。

結構可愛い。

それに、シトゥルに怯えないのが好感触だし。

鑑定で見た所、2匹はリザードではなくドラゴン種であることが分かった。

蜥蜴走リザードランナー』ではなく、『竜走ドラゴンランナー』だったから。

産まれた時からシトゥルの眷属になる運命だったのかもしれない。


「すみません、お待たせしました。

いやぁ、走力がなかなか違うものですね。

では、馬車と一式を取り揃えてまいりますのでお待ちください」


そういって、マルコさんはギルド連合の建物へと入っていった。

このまま、ここで待てばいいのかな。

結構目立つな。


「あとは、私物の回収と賃貸契約の解除か」

「あ、そうでした。

賃貸契約の事を忘れていました。

少し、行ってまいりますのでイリスの事お願いします」


シトゥルも、ギルド連合の建物の中へと入っていく。

僕と竜走姉妹は、近くのベンチへ向かうことにした。

といっても、座るのは僕だけ。

竜走姉妹は、ベンチではなく地べたに腰を下ろした。

うーん、なんか食べ物なかったかな。

僕は、胸ポケットに入れてあるストレージカード取り出してを確認する。

ストレージカードは、内容物を一覧で確認できる。

ないな。

食料がない。

てか、旅に出るなら欲しいな。


「お待たせしました」


シトゥルが戻ってきた。

そして、その後ろにはマルコさんがいる。


「準備ができましたので、裏へ行きましょう」


マルコさんについていく。

ぐるっと回って大きな扉を開けて馬車売り場へと入る。

馬車売り場には、先程購入した馬車があった。

大型のハーネスがセットされている。


「では、ハーネスを取り付けましょう」


僕とシトゥルは、イリスとアグニスを馬車の元へ連れていく。

マルコさんが、竜走姉妹にハーネスを取り付ける。


「きつかったり、痛かったりしないかい?」


マルコさんは、竜走姉妹に尋ねる。

彼女たちは、首を横に振る。

凄く頭がいいな。


「マルコさん、ありがとうございます」

「いえいえ、仕事ですので。

あ、それと馬車の中に鞍もご用意しましたのでお使いください。

蜥蜴走用の物なので使えると思います」


鞍の種類があるのだろう。

規格的には、蜥蜴走と同じものでいいという事だろうな。


「こちらですべてお揃いですか?」

「シトゥル、どう?」

「はい…こちらではここまでで大丈夫かと思います」

「今日はご利用ありがとうございました」


僕らは、馬車に乗る。

2人して御者台に座る。

シトゥルが、手綱を握る。

それに合わして、竜走姉妹が馬車を曳いて走り出す。

それにしても、これは車でいいのかな?

竜走車…うーん、馬車でいいか。


「では、まずは荷物の回収をしてから食料の買い出しをして旅に出ましょう」

「今日は、野営になりそうだけど大丈夫?」

「はい、構いませんよ。

アシュタータ大火山までの道のりでは、小さな村くらいしかないのでここで鳴らしていきましょう」


アシュタータ大火山の麓には、確か大きな街があった気がする。

ゲーム知識が正しければだけど。

確か、その名もアシュタータだったはず。


「アシュタータの街は?」

「えっと、何年か前の噴火で全焼してしまったらしいです」

「噴火…か、それは大火山の?」

「いえ、確か別の火山だったと思います」


アシュタータ近郊は、火山の群生地帯。

死火山はなく、活火山だけ。

それも、それぞれに赤の塔が乱立している。

そうして、話していると今朝出た自宅へと辿り着く。

あまり荷物はない。

2人で、手分けしてポーチへと収納していく。

大きなものは、ストレージカードに直接入れる。

家具なんかは、備え付けだから対して大きなものはないな。

10分ほどで、回収し終わり後にする。

そのあとは、買い物だ。

食材は、南地区にバザールがある。

そちらへ向かうことにする。

だが、バザールは馬車を通過できない。


「ご主人様、そこでお待ちいただけますか?

私が、買いに行ってまいります」


御者台から飛び降りて、シトゥルがバザールの人垣へと消えていった。

えっと、残されたが僕馬車操れるかなぁ。


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