姉妹の名前

マルコさんは、先にギルド連合へと帰っていった。

僕らは、ゆっくり徒歩である。

本来ならマルコさんが付き添うはずだったのだが僕らが購入した白と銀の蜥蜴走と馬との相性が悪かったらしく馬が逃げてしまった。

まあ、あの馬はシトゥルとも相性が悪かったから仕方ないな。


「ご主人様、それでこの子たちの名前は如何されますか?」

「ああ、名前ね…『シロ』『ギン』じゃ可哀そうだしなぁ」

「はい、それは流石に」


うーん、どうしよう。

色に拘らないというのも手だよな。

じゃあ、連想するのはどうだろう。

白と言えば…うーん、雪とか、かき氷とか。

いや、全部そこだな。

あとは、ああユリとかも白いか。

白い花ね。

銀と言えば…金属の銀。

銀は、英語でシルバー。

元素記号なら、Agか。

ああ、そうすると確か白金属ってのがあったな。

プラチナ、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、オスミウムの6元素だったか。

えっと、元素記号は…Pt、Ru、Rh、Pd、Os、Irか。

元素記号って、覚えるの面倒だったなぁ。

あの暗記苦手だったわ。

IrとAgか…イリスとアグニスってどうだろうか。

まあ、意味合いはだいぶ変わっちゃうけどさ。


「じゃあ、イリスとアグニスでどうかな?」

「それは、どうして…」

「金属の名前からモジってみた。

白金属って言うのの1つにイリジウムっていうのがあってさ。

それを表すのが『Ir』で、名前ぽくして『イリス』。

銀は、同じように表すと『Ag』だから『アグニス』だ」

「イリスとアグニス。いいと思います。女の子ぽい名称ですし」


僕は、首を傾げた。

女の子っぽい?イリスは、まあそうだとは思うけど。

あれ?アグニスもメスなの?


「あれ?ご主人様、気付いてなかったんですか?

どちらも、女の子で双子の姉妹ですよ」


なるほどなるほど。

そうやって、話しながら歩いていると不意にイリスとアグニスが頭を寄せて来る。

スリスリと。

僕は、そっとアグニスの頭を撫でる。

シトゥルもまたイリスの頭を撫でている。

そうしていると、2匹は自身の背中へと視線を向ける。

そして、そのまま僕らをそれぞれが見た。


「乗れってこと?」


そういうと、2匹はきゅんと短い鳴き声を発する。

たぶん、肯定なのだろう。

僕とシトゥルは、お互いに視線を向けてから頷く。

僕が、アグニスに。

シトゥルは、イリスに跨った。

思ったよりもがっしりしている。

乗る為の鞍は、ないのだがそれでも安定するような気がする。


「ありがとう、じゃあ街まで頼むよ。

街に行ったら、馬車を曳いてもらいたいんだけどいいかな?」


きゅんとまた短い返事がしたと思うとアグニスが走り出した。

早い。

原付をヘルメットなしで走らせているような感覚だ。

僕は、外套の襟を少し上げて口元を覆う。

ドタドタと地面を力強く踏み込む音が暫く聞こえた。

あたかも、何かリズムを刻むようにさえ思えた。


-------------------

アグニスは、実は僕っ子というオチでした。

お姉ちゃんとしてイリスを守りたかったってことで。

ステータス的には、そこまで強くない。


イリス

走 1歳

Lv1

HP 100

MP 100

攻撃 10

防御 10

器用 10

敏捷 20

魔力 10

幸運 5


アグニス

走 1歳

Lv1

HP 100

MP 100

攻撃 10

防御 10

器用 10

敏捷 20

魔力 10

幸運 5

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る