銀蜥蜴走の想い

今日も美味しいお肉だった。

僕は、蜥蜴走リザードランナーの『銀の子』。

名前ではない。

というか、名前はない。

みんながそういってるだけ。

餌場食堂で長めに朝ご飯を食べて放牧場運動場へと戻ってきた。

妹は、先にこっちに来ているらしい。

妹は、小食だから先に食べ終わる。

愛しの妹はどこだろう?

なんだか、竜走がたむろしてるなぁ。

は!

僕の愛しの妹が黒い変なのに絡まれてる。

助けなくちゃ。

僕は、一気にトップスピードまで加速して黒い変なのに頭突きをした。

黒い変なのは、凄い勢いで飛んで行った。

ざまあみろ。

そう思っていたのに、くるくる回って着地した。

怖い。

なんだ、あの黒い変なの。

僕が、妹を守らなきゃ。

僕は、もう一度頭突きをする。

ドンッって音がした。

今度も吹き飛ばせた。

でも、さっきみたいにいかない。

まだまだぁ。

僕は、何度も何度も黒い変なのにぶつかっていく。

楽しぃ。

なんだ、こいつ。

仰け反らなくなってきてるぞ。

僕は、十分な助走をつけてもう一度頭突きをする。

が、今回は当たることがなく僕は大きな衝撃と共に意識を手放した。



僕は、身体強化を使って銀羽毛の蜥蜴走を投げ飛ばした。


「あ!やべ」


そして、すぐに後悔した。

だって、商品に傷をつけるわけだし。

僕は、シトゥルに視線を向ける。

彼女は、白羽毛の蜥蜴走と一緒に銀羽毛の蜥蜴走の元に向かっていた。

白羽毛の蜥蜴走は、銀羽毛の蜥蜴走の顔を細長い舌で舐めている。

たぶん、あの銀羽毛の蜥蜴走は白羽毛の蜥蜴走の双子の兄弟なのだろう。

僕も、彼女らの元に向かう。

マルコさんは、腰を抜かして歩くことができなくなっている。


「ご主人様、やりすぎです。

まあ、この子も最初妹を助けたくてご主人様に攻撃してましたが、途中から遊んでもらっていると思っていたので…」

「そっか、ならよかったけど」

「それで、この2匹で如何でしょうか?」

「うん、いいと思うよ。

この子は、シトゥルに似てる気がするし」


そういうと、シトゥルは「ああ」と小さな声を漏らした。

どうやら、気づいていなかったようだ。


「もしかすると、この子たちは私の眷属なのかもしれませんね。

私のような鱗ですから」


鱗…うろこ。うーん、羽毛の間違えではと思ったが口に出すのをやめた。


「マルコさん、この2匹にします」

「あ、はい。畏まりました。

お客様、お強いんですね。

まさか、銀の子の体当たりに耐えるなんて」


銀の子か。

なんだか、寂しい呼び名だな。

そうしていると、銀羽毛の蜥蜴走が目を覚ます。

きゅーと小さな声を上げる。

きゅーきゅーと心配そうな声を白羽毛の蜥蜴走が発する。


「えっと、君たち2人うちの子にならないかな?

一緒に、旅に出よう」


そう声をかけると2匹に擦り寄られた。

そうして、家族が増えた。

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