第13話 三田さんの能力

「僕の能力の詳細は聞かないのかい」


 三田さんからそう聞かれ俺は返答に困った。気になるに決まっている。三田さんの反応は好感触だが、味方だと決まった訳じゃない、聞くだけ聞いてもいいが、慎重になってしまう。


「教えてくれるのか?」


「聞きたいのなら教えるさ」


「俺は能力をほぼすべて隠しているのに、そんなやつを信用できるのか?」


「なるほど、君は僕が嘘をつくと考えているんだね。まぁ無理もないか、でもね僕は君を信用すると決めたんだ」


 俺は頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。人を無条件に信用することが信じられないのだ。親友と幼馴染が敵になってしまった可能性があることで疑心暗鬼になってしまったのである。


「俺にはわからない」


「そうか、それは仕方ないか。ならこうしよう、君なら僕が死ぬ日時も分かっているんだろう? それを教えてくれたら僕の能力を嘘偽りなく教えると誓うよ。交換条件だ」


 なるほど、あくまで交換条件ということにするのか。少し話しただけだが、三田さんが悪いやつには見えない。まぁ俺の予想はよく外れるんだが、ここは信用してみよう。


「分かった、その条件で行こう。このままいけば三田さんが死ぬのは明日の夜だ。詳しい時間までは分からないが、明日の夜が一番可能性が高いはずだ」


「変わってしまって今日死ぬ可能性もあるわけだ」


「そう、確実じゃない」


「分かった、信じるよ。で、僕の能力だけど」


 三田さんは周囲を確認して人が居ないのを確認してから、ハンバーガーの包み紙をうかせてみせた。思わず「おお」と声が出てしまったほどだ。


「ま、こんな感じで一度触れたものを浮かせることが出来る。重いものは無理だけど、大体五十キログラムくらいまでなら浮かせることが出来るよ」


「すごいな、いろいろ活用できそうな能力だな」


「そうだね、人目があるところでは使えないけど、一人の時はかなり便利だよ」


「なるほど、同時には何個くらい浮かせることが出来るんだ?」


「二つだったね、そして、二つ合わせても五十キロまでなのは変わらなかったね」


「ということは、自分が持てる限界の重量と、手の数だけ浮かせることが出来る能力って感じか」


「そ、そうか! 新田は頭がいいね、そんな風に能力を考えたことは無かった!」


「そりゃどーも」


 三田さんはなるほどという顔をしてから考え込んでしまった。


「まぁ、いろいろ試してみるよ」


「ああ」


「今日は教えてくれてありがとう。死なないように気を付けるよ」


 そう言うと三田さんはトレイを持って行ってしまった。一人取り残された俺はポテトをつまみ口の中に放り込んだ。


 今日の収穫はいろいろあった、おそらくだが、三田さんは敵では無いこと、そして、三田さんの能力も分かった。かなり、強力な能力に思えた。武志のような戦闘特化な能力ではないが、戦闘に応用できる能力なのは間違いないだろう。どれくらいの速度で飛ばせるかにもよるが、包丁みたいな武器を浮かせて奇襲みたいなことも出来そうだ。


 もしかすると、三田さんが能力を持っていることを知った、武志が三田さんに挑みに行って倒して、それを消滅の能力者が証拠を隠滅しに行った可能性もある。金曜日の朝、武志が三田さんの様子を見に行ったのはちゃんと証拠が消えているかの確認作業だったのかもしれない。


 さて、三田さんに忠告もした。ここからどうしようか。ポテトを食べながら考える。もし三田さんの死を阻止できたとして、相手はどう動くだろうか、殺人が止まればいいが、今回は夏美と本屋デートイベントが無い。柏木さんによると、今週の金曜日から日曜日までは失踪者が出なかったらしいが、夏美が本を読んでて殺人を中止していたとみている。ならば、今回は失踪者が出るだろう。俺の行動で被害者が増えたり減ったりするのはほぼ確定的だと言える。だから俺は夏美を止めなくてはならない、俺の行動の結果、死人が増えるのは嫌なのだ。


 しかし、今の俺が夏美の元に行っても消されて終わりなのはわかりきっている。仲間を集めなければいけない、俺は無能なのだから、二人を止められるだけの仲間を。俺の知っているだけでも能力者は五人もいる。多分能力者はもっと大勢いるだろう、そいつらを探し出して味方になってもらう、それしか勝つ方法が無い。他力本願だがこれは仕方ないと思う。


 ポテトを食べ終わった俺は、ハンバーガショップを後にして、ある場所に向かった。

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回り廻り周り回る 五十嵐 @igarashirai

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