第7話 御師

変身の謎を1つ掴んだ。これは俺がその相手の能力が欲しい羨ましいそうなりたいと思った相手を殺して奪っているんだ。

姿だけじゃない、能力も経験値も奪っている。

一度意識したらこれで間違いないと感じた。

どうしてこんな力があるのかは分からない。ただこれを利用していけば俺はもっと強くなれる。強くなって金を稼いで……その後は分からない。


今一番考えなきゃならないのは、この能力の対象が魔物だけなのかということだ。




怪我を負ったので一度町に帰ろう。

魔鳥に変身したままクチバシで服を拾い袋に詰めた。手が無くて不便な筈なのだが、クチバシでの作業は思ったよりずっとスムーズで早かった。

袋の紐を首にかけ、倒した魔鳥を爪で掴んで舞い上がった。

飛び方は自然に理解している、だが実際に飛ぶのは素晴らしい経験だった。

魔鳥の体は力強く、視界は遠くまで綺麗に見渡せる。高く舞い上がっただけで遠くの町が目に入り、人が動いていることが分かる。移動だけじゃなく何かを探したり監視するにも便利そうだ。

風に乗り悠然と空を飛ぶ。とても気分が良く、まるで自分が成長したように錯覚した。




「魔物を狩ってきた」

「アロケウスか、どうやって捕まえたんだ?」

「襲ってきたから倒した」

「チッ、これを狩れるならもっと取ってくるんだな、高いぞ。今回は金貨出すからな」

そう言ってくすんだ金貨らしきもの20枚と銀貨30枚を出して来た。金貨を見るのは初めてだ。

「なんでこんなに?」

「貴族が絡むからだよ。羽、特に尾羽根を傷つけるなよ、わざわざ海の向こうから運ぶほどの物らしいぜ」

「?、薬にでもなるのか?」

「飾りだ。お前には関係ないだろ、せっせと狩ってこい」

「わかった。力を見たい」


――――――

種族:人

年齢:16

位階:1

職業:見習いLv10▶

体力:260/320

魔力:20/50

身体:46

技術:32

知能:28

精神:20

――――――


「はああ、こんなの見たことねぇよ。なんで見習いのままこんなに成長するんだ」

「見習いの横に付いたのは何だ?」

「さっさと職を決めろってこった、これ以上成長しねぇぞ」

それは不味いな。能力を吸収して変化したのを怪しまれる。こいつが覗かなければいいだけなんだが。

「職を決めるってどうやるんだ?」

「あぁ?戦士になりたいって声に出していってみろ」

「戦士になりたい」

「これで戦士だ。これ以上のことは知らねぇから聞くな」


――――――

種族:人

年齢:16

位階:2

職業:戦士Lv1

体力:260/350

魔力:20/55

身体:61

技術:44

知能:39

精神:31

――――――


もう一度金を払って調べたら職業が変わって数字も増えていた。

なんだこれは?みんなこんな物を受け入れているのか?気持ち悪い、どうなっているんだ。

「なんだこれって顔してんな、俺はしらねぇぞ、知ってそうなやつも知らねぇ。そういうもんだと思っとけ」


追い払われてしまった。そういうもんか、まぁいいか。これは俺にとって有利なことだ。俺は経験を奪って早く成長できるし、能力も直接奪える。それで強くなるならそれでいい。

それより怪我の治療に行く。体力が増えて平気で動けているが、肩の後ろが抉れているんだ。




「治療を頼みたい。背中を抉られている」

「ふむ、平気そうにしているのに傷は深いですね。またフロウ様をご希望ですか?」

「頼む」


奥からじいさんが出てきて魔法で治療してくれた。相変わらず手際よく綺麗に治っている。

「鋭く刺さって抉られていましたな。また魔物ですかな?」

「そうだ。大きな鳥を捕まえた。金貨で売れたんだ」

持っている金貨を全て渡した。

「この金でじいさんをよく見せてくれ」

「見る?」

「じいさんは凄いやつだ。俺は凄いやつをよく見たいのだ」

「ふむ」



じいさんは顎に手を当てて何やら考え出した。沢山金を渡しただろう、見るくらい構わないだろう?




「よろしい、では暫く私が教育してあげよう。私の事はじいさんではなく師と呼びなさい」

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一番下から見上げる世界 無職無能の素人 @nonenone

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