第9話
「凜さん、今度の土曜日、またウチに来てや。ウチの両親が会いたがってるねん」
「何の用だろう?」
「悪いことではないやろ。もう、僕等の婚約は認められてるんやから」
「なんだか、悪い予感がする」
「よく来てくれました、凜さん」
「こんばんは。お招きにあずかり光栄です」
「まず、食事にしましょうか?」
「何かお話があるのでしょうか?」
「ええ、お話があるの」
「なんでしょう?」
「婚約を解消して、歌麻呂と別れてくれる?」
「「え!」」
「母さん、何を言ってるんだよ」
「私は、私は……元々歌麻呂とは不釣り合いです。失礼します」
「凜さん、待ってや!」
「歌麻呂、放してくれ」
「放さへんよ。何があっても一緒になるって、何度も何度も約束したやろ?」
「歌麻呂、凜さんを選ぶというならあなたとは親子の縁を切るわよ」
「おう、勝手に縁を切ってくれ。僕は凜さんと一緒に生きる!」
「すみません、私も歌麻呂と一緒にいたいです!」
パチパチパチパチ。
「なんでここで拍手なんだよ、母さん、父さんまで」
「あなた達の絆を試したの。ごめんなさいね。合格よ。予定通り結婚しなさい」
「え! 今のは?」
「ごめんなさい、最後にもう1回、2人の絆を試したかったのよ。気を悪くしないでね」
「気を悪くなんかしません」
「今日は、凜さんにこれをあげる」
「なんでしょう?」
「私のお祖母様が私の母に渡して、私の母が私に渡した指輪。そんなに高い物ではないんだけど、代々受け継いでいる指輪なの」
「私がもらっていいんですか?」
「あなた以外に誰がいるのよ」
「ああ、ありがとうございます。でも、彩華さんはいいんですか?」
「ああ、いいの、いいの、勝手に歌麻呂と相思相愛だと思い込んでいるだけだから。あの娘って、昔からあんな感じなのよ。気にしなくていいから」
「でも、私と歌麻呂が結婚したら歌麻呂を略奪すると言ってますけど」
「言わせておけばいいのよ」
「彩華さんの方が歌麻呂と釣り合うと思うんですけど」
「凜さん、歌麻呂が選んだのはあなたなのよ、釣り合いなんて考えちゃダメよ」
「あらあら、凜さんが泣いちゃった。ごめんなさいね。どうしても、2人の絆を確かめて起きたかったのよ。あなたなら、大歓迎よ」
「涙が止まりません」
「止まるまで泣いてもいいのよ、無理に止めようとしないでね」
「うわー!」
「体育祭、楽しかったな」
「うん」
「文化祭、メイド喫茶は盛り上がったな」
「うん、盛り上がった」
「修学旅行は最高やったな」
「そうだな、楽しかった」
「勉強もしたな」
「2人そろって有名国立大学に入れるとはな」
「やっぱり僕達、一緒にいる運命なんやで」
「で、卒業式が終わったから、今日はいよいよ挙式なんやけど」
「ウエディングドレスっていいなぁ、実は憧れていたんだ」
「凜さん、震えてるで。緊張してる?」
「怖いんだ、幸せ過ぎて」
「僕が一緒やのに怖い?」
「そうだな、歌麻呂が一緒だもんな、だったら、何も怖くない」
「そう、怖くない。これから幸せが待っているんやで」
「そうだな、幸せになろう」
「ほな、入場や」
「行こう、幸せの第1歩だ」
ボロボロ不良少女の私と、大阪から来たやり手なお坊ちゃま! 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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