第214話 2人の成長。
サイガとテイシーに閻魔鉱の装備を付けさせ、シャワンを目指す事3日目の朝。
消えた焚火の傍で朝食のサンドイッチを食ってると、テントからゆっくり出て来るテイシーとサイガ。
「おは~」
「おはようございます」
「おはよう」
2人も焚火の傍に座ったのでサンドイッチを渡す。
「2人ともこの2日間で普通に歩けるようになったし、次の段階へ移るか」
「んっ!? モグモグ……次の段階とは何ですか?」
「次は、閻魔鉱の装備を付けたまま、普通に戦闘が出来るようにならないとな」
「げっ、昨日剣を振ろうとしたら重すぎて、地面に剣がめり込んだんだけど?」
「もっと強化しないとな」
そう笑顔で答える。
実際2人は、強化をしてるがまだまだ未熟だ。
魔眼で視てたが2人とも強化をする時、魔力を纏ってる事が多い。
一応流れてるけど、所々詰まったような流れなので強化率が低いんだよな。
普通に歩けるようになるまでにもっと魔力制御が上手くなると思ったけど、あまり意識してないのかも。
「なので今日は、強化方法を教える」
「身体強化はやってますよ?」
「俺も、ギルドで教えてもらったとおりやってるけど?」
「どう教わった?」
「全身に魔力を多く巡らせて維持する」
「私も同じです」
どうやらギルドの教え方が間違ってるようだ。
「それだと強化率が落ちる。強化の基本は『流す』事、スムーズに流すのが大事だ」
「流す」
「流すねぇ……」
サンドイッチを食いながら手に魔力を流す2人。
うん、若いからなのか素直で良い。
その後、朝食を食って出発前に2人の身体強化の訓練が始まる。
最初は慣れないのか、今までの癖があるようで流すだけという事に苦戦したが、1時間もすれば2人とも、魔力が留まる事なくスムーズに流れるようになった。
「おお、確かに昨日までより楽かも、これなら剣を振れそう」
「何とか戦えるぐらいかな?」
「よし、昼まで走って進むぞ!」
「「……はい」」
2人の強化率が上がり、昨日までとは違ってかなり進めるようになったがそれでも、まだまだ掛かりそうだ。
夜になると野営の準備をしてから俺が作ったゴーレムとの摸擬戦を行い、2人が摸擬戦をしてる間俺は、自分の訓練をしてる。
シャワンを目指して20日後、俺達はまだシャワンに到着してなかった。
まあ、2人を鍛える事に夢中で進むのは二の次だったからな。
だがこの2週間で2人は、閻魔鉱の装備を付けたまま普通に戦える程にまで成長したぞ。
訓練が終わって焚火を囲みながら俺が出した、ステーキとおにぎりを食っていると声が届く。
『キジ丸、今大丈夫か?』
久しぶりのシュートである。
「今の声、何ですか?」
「通信機?」
「使い魔の通信機だな……どうした?」
手の甲に付けた使い魔に魔力を流して答えた。
『おう、カリムス王国と仁皇国が国交を結んだんだが、顔を出せないか?』
「俺? もう話し合いは終わったんだろ?」
『ん~、あちらさんがキジ丸に会いたがっててな』
「誰が?」
『仁皇様だよ。それと案内してくれた奴、レバックだっけ?』
「あぁ、まあ、別に顔を出すくらい出来るけど、仁皇がなぜ俺に?」
『なんでも強い侍が居ると聞いて会いたがってるらしい。じゃあ明日の朝、仁皇国側の次元門で合流でどうだ?』
「明日行くって相手には伝えてあるよな?」
『ああ、仁皇国もいろいろあったらしいが、なんとか国交は結べた。暫くは政府の人間だけが行き来するが、早めに一般人の交流も始めたいそうだ。そのために、次元門を街中に設置出来ないかとも言われたな』
「明日行ったら移動させようか?」
『いや、まだ設置場所が決まってないから、まだ先だな』
政変があってバタバタしてるし、次元門の設置はセキュリティーがしっかりした場所じゃないとねぇ。
それでも、約1月かそこらで国交を結べるのは逆に凄い。
「あっ、初心者の弟子も連れて行くからよろしく」
『初心者の弟子?』
「俺達は初心者じゃねえよ」
「キジ丸さんからしたら初心者ですよねぇ」
サイガは否定するがテイシーは、苦笑いを浮かべて納得。
「まあ、明日紹介する。じゃあ明日な」
『おう、あっ、時間は9時だ』
「了解~」
通信を終了すると。
「今の誰? カリムス王国とか仁皇国とかよく分かんないんだけど?」
俺は2人に、シュートの事、カリムス王国の事、元仁の国である仁皇国の事を話し、国交を結ぶためにレインが訪問する事を説明した。
「あの侍が多いっていう国だよな? 行った事は無いけどネットで情報は見た事ある」
「私も行った事は無いけど、動画で見た事はあるよ。それよりもそのカリムス王国の方が凄いよ。王様はプレイヤーですよね?」
「何で? 国を作ってたプレイヤーは何人か居たじゃん」
「ここは現実だよ? それをちゃんと王として国を運営してるのが凄いでしょ?」
「ん~、そうかも? 良く分かんねぇや」
「カリムス王国のトップは女王だぞ。それからお前らも明日一緒に行くからな」
「あっ、女王様なんですね。仁皇国は遠いんですか?」
「遠いけど一瞬だ」
「もしかして転移?」
サイガの問に頷く俺。
「マジで!? 転移使えんの!? 良いなぁ~」
「私も使えるようになりたい」
「俺じゃなくてハンゾウが使える」
「おお、最強忍者!」
「近くに居るんですか?」
「ハンゾウ」
「はっ」
俺の背後に片膝を突いた状態で分身を出す。
「うわ……近未来的な忍者になってる」
「おお! カッコいい!!」
「明日はよろしくな。良いぞ」
「はっ」
そう言って影に沈めて解除。
「あっ、2人とも、職業の証を出して」
そう言うと首を傾げながらもインベントリから証を出す2人。
俺はそれに血を垂らすか魔力を流すように言うと2人は、魔力を流すがその瞬間、魂と繋がったのを感じたのかすぐさま証を消して魂に収納。
「それでステータスが表示出来るようになってるぞ」
「おお! なんだか久しぶりのステータス画面」
「うわぁ~、スキルレベルがカンストしてる」
「俺もだ」
「あっ、クラスアップが出来るみたい」
「おっ、えーっと……うわ、これ無理じゃん」
「私は、属性魔法を8つ使えるようになる事だって、8つもあるの?」
サイガのランクアップ条件を聞くと、師範クラス以上の剣士と戦う事らしい。
「それが何で無理なんだ?」
「師範クラスって、ベテランプレイヤーくらいじゃん。ゲームならすぐ見つけられるけど、現実じゃ探すのが難しいだろ?」
「俺が相手してやるよ」
「えっ、キジ丸さんは侍じゃん」
「実は剣士の職業も持ってるんだよねぇ」
「はっ!? 2つ持ち!?」
「それって私達も就けるんですか?」
「たぶん? それは今度確かめよう。それよりテイシーも、俺が教えてやるから安心しろ」
「ありがとうございます!」
「剣士と相性が良いのは何かな~」
「よし、さっさとクラスアップ済ませて寝るぞ」
「「今から!?」」
「明日は忙しいからな」
という訳で約1時間程で、2人のクラスアップは完了した。
サイガは、剣神の俺と戦って終了。
テイシーは、基本属性に加え、雷、氷、光、闇のイメージと魔力制御を教えて終了。
2人とも今日までの訓練が無ければ、この短時間でクラスアップは出来なかっただろう。
ゲームの時とクラスアップクエストの内容は、ゼロに聞いてたのとかなり違うな。
VRMMOで最強忍者になった男~異世界でも最強を目指す~ あれです。 @aredesu
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