第213話 さっそく訓練開始。
俺が鍛えてやると言って固まる2人。
先に口を開いたのはテイシーだった。
「あの、私魔法使いですよ?」
「ほう、レンジャーか盗賊みたいな恰好してるのに魔法使いとはな」
「近付かれた時用の短剣です」
「なら魔力制御を重点的に訓練すれば良いな。ちなみにクラスは?」
「私は上級魔法使いです」
「俺は、上級剣士」
「うむ……2人とも明日から訓練開始だ。今日はもう寝るぞ」
そう言って立ち上がるとサイガが、見張りはどうするのか聞いて来たので。
笑みを浮かべて魔導書を出すと、魔力を練って発動。
すると地面の土が盛り上がり、全長2メートルのゴーレムが2体出来上がる。
「こいつらにやらせるから安心しろ」
「キジ丸さんって侍ですよね? ……その本、もしかして魔導書ですか?」
「魔導書があれば俺も魔法が使えるのか!?」
「これは、長い事苦しんだ人の魔導書を譲ってもらったんだ。詳しい話はまた今度な、とりあえずさっさと寝るように、テントとか寝袋は?」
「苦しんだ人のって気になるけど……テントがあるので大丈夫です」
「楽しむなら遮音結界張れよ」
「……な、なんの事だよ!?」
「そっか、現実になったから出来るんだ……どうする?」
「はっ? いやいや何言って……街に着いてちゃんと風呂に入ってからにしよう」
「クリーンがあるけど?」
「やっぱり初めては、ちゃんとしたいだろ?」
「……確かに、テントの中で初体験は嫌だね」
「ほら、さっさと寝ろ……見張りを任せる」
ゴーレムにそう言うとドスドスと位置に着き、突っ立ったまま周囲の警戒を始める。
ちなみにゴーレムの見た目は、デッサン人形のような形で胴体が大きくごついタイプだ。
鼻と口は無く、目元だけがライン上に空いており、赤い目が光ってる。
俺は体内に印を書いて土に穴を空けると中に入り、横になったところでテントの準備をしていたサイガが驚く。
「えっ、ちょ、なにやってんの!?」
「えっ? 寝る準備だけど?」
当たり前ですけど何か?
という風に答える。
すると周囲を警戒していたテイシーが振り向き、穴から顔を出してる俺と目が合い、近づいて来ると穴の中を覗き込み、感心したような顔で言う。
「へ~、楽そうですね」
「おっ、分かるか? 野営の時はいつもこうやって寝てるからな。案外寝やすいし襲われる事も無い。今度試してみな」
テントとか用意するのが面倒になるぞ。
見張りも必要ないしね。
みんなこれを知ると驚くが、一度試したらやめられない。
サイガは、ブツブツ何か言いながらテントの準備を始め、テイシーもお休みなさいと言ってサイガの手伝いをしに戻る。
俺は先に寝かせて頂きます。
横になって蓋をし、ちゃんと空気穴は空けてあるよ。
そうして眠りに就いた。
翌朝、目を覚まし、土からボコっと出るとクリーンで綺麗にしながら伸びをする。
ん~、今日はちょっと曇ってるな。
ゴーレムを見ると何事も無かったようで見張りを続けていた。
ゴーレムを解除してその場で土に戻すと、燃え尽きた焚火の傍に座り、インベントリから朝食のハンバーガーを取り出して食べながら、今後の事を考える。
北西にある港町『シャワン』から、ジャンブロート王国までの船が出てるらしいので、そこから船に乗ってジャンブロートに入る予定。
カゲで渡ればすぐだろうけど、船旅というのも悪くない。
船に乗ったのは、ゲームでアクリアテンクを討伐する時以来、乗ってないしな。
今度は、のんびり船旅を楽しもう。
で、ここからシャワンまで歩いて行けば、2週間ぐらいだったか?
シャワンに着いたらレイン達の方に行かないと。
いや、俺が居なくても良いかも?
その時になったら聞けば良いか。
2人は、ゼルメアまで付いて来るようだし、みっちり鍛えてやろう。
ハンバーガーを食い終わり、コーヒーを飲みながら食後の一服をしてると、テイシーがテントから出て来た。
「おは~」
「おはようございます」
「飯はある?」
「あっ」
「ほれ」
そう言って紙に包まれたハンバーガーを取り出し、投げて渡す。
「あ、ありがとうございます」
「あとこれも」
テイシーが焚火の近くに座ったので、ペットボトルのコーラを渡すと、笑いながら受け取る。
「コーラだ」
「街で買ったやつだからな。あいつはまだ起きて来ないのか?」
「すぐ起きて来ると思います」
そんな話をしてるとサイガもテントから出て来てこちらへ来ると、テイシーの横に座ったのでハンバーガーとコーラを渡す。
「食ってちょっと休憩したら、すぐ出発だ」
ハンバーガーを食べながら頷く2人。
腹が減ってたのか。
食い終わり、コーラを飲んで一息吐くと2人は、ハンバーガーが滅茶苦茶美味しいと絶賛。
俺が作ったと言うと、かなり驚いてた。
休憩が終わり、テントを収納すると出発、の前に。
「よし、これを付けろ。両手足にな?」
そう言ってメンバー用に作ってあった閻魔鉱の装備を取り出し、2人に渡すと。
「重い!?」
「な、んだこれ!?」
「強化して持てよ。それを付けたら軽く走りながら行く。ちなみに俺も付けてるぞ。1個5トンある」
「ご……」
「あの、これは何トンあるんですか?」
「それは500キロだ。慣れたら徐々に重くしていくからな」
「ご……」
2人が全力で強化しながら閻魔鉱の装備を付けるのに約5分程掛かり、両手足に装着したので出発する。
「よし、駆け足、は無理そうだから歩いて行くか」
「これは……はあはあはあ……1歩踏み出すのに数秒掛かるぞ?」
「ん~……! はあはあはあ……5メートル歩くのに、数分掛かるんですけど?」
両手をだらんとさせながら中腰で言う2人。
「それを付けた状態で、普段どおり動けるようになれ、まずはそこからだ。全力で身体強化を常にしろ。そしたら身体強化も成長する」
「何でこんな事……」
「私魔法使いなんだけどなぁ」
「ほら、先に行ってるぞ? 気合入れて強化しろよ。その内強化しなくても動けるようになるから頑張れ。サイガ、それに慣れれば、今より確実に強くなれるぞ?」
俺の言葉を聞いてサイガは、決意した表情をし、目に火を宿すと踏ん張りながら歩き出す。
「ゼロさん、のように……強く……なる!!」
「キジ丸さん、マッチョになりたくないんですけど」
「安心しろ。それは身体を鍛える目的もあるが一番は、魔力制御の訓練だからな」
「えっ、これが?」
「負荷の掛かった状態で身体強化を常にする。これが結構キツイが良い魔力制御の訓練にもなるんだ」
「へ~……分かりました」
テイシーは、気合を入れて強化しながら歩き始めた。
ある程度慣れたらテイシーは、縛りを教えよう。
サイガは……訓練空間で戦闘だな。
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