第212話 サイガとテイシー。

モゾモゾと動き上体を起こす赤髪の男というか男の子?

見た目は18歳くらいに見える。


「あれ? ここは……」

「お目覚めか、とりあえずこっち来て座りな。茶くらい出すぞ」

「テイシー!? 大丈夫か!?」


横で寝てる女の子を見て慌てる男の子。

女の子はテイシーと言うのか。


「寝てるだけですぐ起きると思うぞ」

「良かった」


彼は立ち上がり、焚火の傍へやって来ると座ったので、街で買い込んだペットボトルのお茶をインベントリから出して渡す。

受け取るとお茶と俺をチラチラ交互に見て何か言いたそうにしてる。


「なに?」

「あっ、いや……」

「お前らGFWのプレイヤーだろ?」

「っ!? あんたも!?」

「俺はキジ丸、お前は?」

「あっ、俺はサイガ……です」


おお、厨二っぽい名前。

見た目どおり中身は若いのかな?


「あのそれで、ここはいったいどこ? 目が覚めたらここが現実ってのはなんでか分かんないけど理解出来た。ここって異世界?」

「まあ、異世界だろうな。魔物も居るし魔法もある。地球じゃないのは確かだ」

「何でこんな……地球に帰れるよな?」

「さあ? そもそもどうやって来たのかも分からない」


そう言うと落ち込んで少し俯き、焚火をじっと見る。


「目を覚ます前の事を教えてくれるか?」

「えっ? えーっと……」


サイガとテイシーは、オズオード帝国の帝都を拠点に活動していたプレイヤーらしく、ゲームを始めてまだ1週間との事。

現実で1週間って事は、ゲーム内だと……約半年くらいか。


で、テイシーとクエストを受けて森に居たら、世界が捻じれ(・・・)て意識を失い、気付けばここで目が覚めたという。


「帝都の近くにある森か?」


頷くサイガ。

位置的に帝都ならもっと北のはず。

やっぱりゲームで居た場所とは、あまり関係無いのかな?

いや、完全に関係無いって事は無いだろうけど。


しかしゲーム内で半年くらいしか経ってないなら、殆ど初心者と変わらないのでは?


「職業は剣士?」

「おう、ゼロさんのような剣士になるのが目標なんだよね」


満面の笑顔で答えるサイガ。

まさかゼロに憧れる子供が居るとはなぁ。


「いや、すぐあんな強くなれるとは思ってないけど、配信者の動画で戦ってるのを見て、あんな風に戦えたら楽しいだろうなぁって思ってさ」

「なるほどねぇ……まあ、頑張ればなれると思うよ」

「マジで!? やっぱりそんな風格が出てる?」

「お前、中身何歳だ?」


すると笑顔のまま固まる。


「見た目は18くらいだが、中身はもっと若いだろ?」

「……そ、そういうあんたは何歳なんだよ?」

「俺の中身はえーっと、もう40になってるかな?」

「おっさんじゃん!?」

「見た目は20歳、中身はおっさんってうるせぇよ。で? 何歳?」

「……さい」

「ん?」

「んさい」

「聞こえない」


忍者特性で強化されてる聴覚でも聞こえないぞ?

言ってねぇだろ。


「15歳……です」

「若いねぇ~……あの子は友達? それとも彼女?」

「……彼女」

「はは~ん……ゲームで彼女とエッチ出来ると思って始めたんだろ?」


ニヤ~と笑う。

サイガは、何も答えず俯く。

耳が髪と同じくらい赤いぞ。


「18歳以上じゃないと出来ないって説明、読んでないのか? ゲーム始めてがっかりしただろ」

「いや、まあ……現実でやるのはまだ早いからって……そんな時ネットで見たんだ。ゲーム内でエッチが出来るって、それで……」

「ハハハハハ!! 若いねぇ~」


そこで彼女が動く気配を察知し、彼女に目を向ける。

サイがは俯いてるので気付いてない。


「起きたぞ」

「っ!? テイシー!?」


サイガは、立ち上がって急いで駆け寄り、身体を起こした彼女に話し掛ける。


「大丈夫か?」

「サイガ? ここは……現実? 私達森に居たよね? あれ? 何でゲームじゃなくて現実なの?」

「とりあえずこっち来てお茶でも飲むか?」

「っ!? だれ、ですか?」

「俺はキジ丸」

「っ!? えっ、あの最強のキジ丸さんですか!?」

「一応大会で優勝したな。それよりこっち来て座りな」

「あっ、はい!」

「お、おい、テイシー?」

「ほら行くよ!」


サイガは、テイシーに引っ張られて焚火の傍に来ると2人並んで座る。


「初めまして、テイシーと言います!」

「おう、よろしく」

「おいテイシー、最強のキジ丸ってなんだよ?」

「ほら、大会で優勝したキジ丸さんだって」

「あっ!! えっ!? マジで!? あの頭のおかしい戦いをしてた人!?」

「今頃気付いたの?」


本当に、結構話してたぞ?

気付くの遅くね?

てっきり知らないと思ってたのに。

テイシーはがっつり知ってるようだ。


「いやほら、俺って戦闘シーンばかり見てたからさ」

「あぁ、そうだったねぇ」

「それより頭のおかしい戦いって何だ?」

「あっ、いや……」

「最後に最強忍者のハンゾウと戦ってましたよね? あれの事です」


なるほど、あれね。

ゼロにもヒヨにも言われたなぁ。


「それでキジ丸さんがなぜ私達とこんな所に居るんですか?」

「俺が旅をしてたらたまたま山の中腹で、2人が倒れてるのを発見してな。放置は危ないからここまで運んだってだけだ」

「あの、ここってどこなんですか?」

「チャルドム共和国っていう国だな」

「知らない国だ」

「ゲームには無かったよな」

「よし、彼女も起きた事だし、俺が分かってる範囲で2人に話してやろう」

「お願いします!」

「助かる!」


そうして俺は、この世界について2人に説明した。

プレイヤーによっては、大昔に飛ばされたり、まだ来てないプレイヤーが居たり、ゲームの時の国もあれば、元からこの世界にあった国が存在する事、帰り方は分かってない事などを伝えていく。


全部話し終えるとテイシーが、焚火を見ながら呟く。


「お母さん、お父さん……」


サイガは、テイシーの肩に腕を回し抱き寄せる。


「大丈夫、絶対俺が帰る方法を見つけてみせる」

「……うん、私も頑張る」

「とりあえず今後どうするか決めないとな」

「今後?」

「キジ丸さんは、どうするんですか?」

「俺はゼルメアに帰る途中だな」

「ゼルメア……私達は、帝国が拠点でした」

「この世界にオズオード帝国は無いらしいぞ」

「マジかよ。一番情報が集まりそうだったのに」

「じゃあ、街まで俺と一緒に来るか?」

「キジ丸さんと?」

「ゼルメアか、確かプレイヤーが作った国だよな?」

「俺のフレンドが女王でしかもそいつは……大賢者だ」

「大賢者!?」

「スゲー、そんな職業があるんだ」


俺は2人に、大賢者なら何か帰る方法を知ってるかもしくは、見つけられる可能性がある事を伝える。


「一緒に行きます!」

「ああ、これで俺達は帰れるかも」

「とりあえず……鍛えながら向かうか」

「「えっ?」」


ほぼ初心者の2人を、ベテランプレイヤーくらいまでには、鍛えてやろう。

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