7つの願い!

崔 梨遙(再)

1話完結:1600字

「ちょっと、そこのお兄さん!」


 麻倉平助は足を止めた。閉まったシャッターの前で、アクセサリーを売っている老婆に声をかけられたのだ。平助は老婆に近寄った。


「僕を呼んだか?」

「呼んだで! お兄ちゃん、これを買って行ったらええで」

「何このチョーカー? あんまりかっこよくないんやけど」

「このチョーカーのトップの石には特別な力があるんや、これを身に付けていたら、きっと幸せになれるで」

「ふうん、ほんで、これなんぼなん? 1万円くらいするんか?」

「39円や」

「安っ! 逆に怖いわ」

「このチョーカーは、相手を選ぶ。お兄ちゃんはこの石に選ばれたんや」

「ふうん、ほな、100円。お釣りはいらんわ」

「毎度あり-!」



「平助! 平助!」


 夜、眠っていたら誰かの声がした。目を開けると、テーブルの上のチョーカーの石が光っていた。


「あんた、このチョーカーの石か?」

「そうだ、お主の望み、7つ叶えてやるぞ」

「何でもええんか?」

「何でもいい! ただし、7つの願いを叶えたら儂はお前を食う」

「おやすみなさい」

「待て! なんでも叶うんだぞ」

「その後、食べられるんやろ? そんなん嫌や。お前は明日、露店の婆に返すわ」

「待て、なんでそんなにノリが悪いんだ?」

「だって、今、チョーカーの石と喋ってるだけでも気味が悪いからなぁ」

「儂はお前の味方だ! さあ、願いを言え!」

「うるさいなぁ、うるさくて眠られへんやんけ」

「願いを言え! 願いを言え! 願いを言え!」

「うるさいなぁ! わかった、1兆円の財産をくれ」


 それだけ言うと、平助は眠った。


 朝、平助が目を覚ますと、部屋いっぱいに現金と金塊が積み上げられていた。


「1兆円だ! さあ、次の願いを言え!」

「ほな、歌手のレ〇ナさんと結婚させてや」

「その願い、叶えよう」


 人気歌手レ〇ナ! 電撃結婚! お相手は大富豪!


 プール付の豪邸で、平助とレ〇ナの結婚生活がスタートした。


「願いを言え! 願いを言え!」

「うるさいなぁ、わかった、ほな、僕の原作の物語をアニメ化してくれや、OP曲とED曲はレ〇ナが歌う! 作詞は僕や」

「その願、叶えよう」


 アニメ、ファーストファンタジーは不人気、長期で放映する予定が1クールで打ち切りになった。


「さあ、願いを言え! 願いを言え!」

「わかった、ほな、僕の原作の物語を実写映画化してくれ! 主題歌はレ〇ナや」


 実写映画化された浪速区紳士録青春編、不人気で大赤字となった。


「さあ、願いを言え! 願いを言え!」

「わかった、粉々に砕け散れ!」

「その願い、叶えよう!」


 チョーカーの石が粉々に砕けた。



 平助が眠っていると、また声がした。


「さあ、願いを言え!」

「なんでお前が復活してるねん?」

「お前の願い通りに粉々になった。それから復活したのだ」

「そんなことをするんやったら、もう、なんでもありやんか。それ、反則やで」

「さあ、願いを言え!」

「ほな、僕をお前よりも圧倒的に強くしてくれ」

「その願い、叶えよう」

「よし、ほな空き地に行くで」


「何をする気だ?」


 平助はチョーカーのトップの石を拳で粉々にした。粉々になった石から、巨大な化け物が出て来た。でかい。毛深い。目が1つだ。この化け物が、石の本性らしい。


 平助は、その化け物をボコボコにした。化け物はダウンした。


「僕はお前に負けへん。お前が僕を食おうとしても、僕はお前に負けへん。僕がお前に食べられることは無くなったんや。だから、もう去れ」

「そうはいかない。お前がもう1つ願いを言えば、儂はお前を食べることが出来る。例え、お前が儂よりも強いとしてもな。そうなっているんだ」

「そうか、どこまでも反則やな。でも、お前に何かを願うことは、もう無いで」



「あなた、もう起きないとダメよ」

「うーん、お願いやから、あと5分だけ眠らせてくれ」

「その願い、叶えよう!」



「しまった!」







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7つの願い! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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