第3話 君の国のピクニック

「これが君の国のピクニックかい?」


 紙箱に詰めた『弁当』の蓋を開けるなり、まじまじ見つめてイグジストが声をあげた。

 とはいえ、中身は梅と昆布の煮つけとツナのマヨネーズ和えのおにぎりと、彼には好評だった鶏の唐揚げとフライドポテト、卵焼き、鮭の塩焼き、ニンジンとレンコンのきんぴら、豚薄切り肉の野菜巻き生姜焼き風味、茹でたほうれん草のピーナッツ味噌和えと、蓮にはオーソドックスな弁当だ。

 アマカに頼んで急遽材料をそろえてもらい、漣自身がすべてを手掛けた。

 育ててもらった施設では、年長の者が年少の者の分まで弁当を作る習わしになっていた。だから自分の好物ばかりを作ってみた。


「おにぎりというのは?」

「この三角形の米のことだよ」

「炊いてあるのか?」

「当たり前だろ」

「では、ひとつ」

「初めて食うならツナのマヨネーズ和えが食いやすいかも」


 梅に手を伸ばしかけていたイグジストに手渡すと、素直に受け取りかぶりつく。

 毒殺を用心するような素振りは一切なかった。それが漣には嬉しかった。

 

「うん。美味い。マヨネーズがこんなに米に合うなんて驚きだ」

「マヨネーズは何につけても美味いから」

「これは君が作ってくれたのか?」

「全部そうだよ」

「ありがとう。嬉しいよ」


 感じ入ったような声音で礼を述べられ、くすぐったくなる。

 また、今日のハイキングは湖畔にしてみた。イグジストが釣りもしたいと言ったからだ。

 小舟も用意してもらい、舟には既に釣りの道具がそろえてある。


「飯が済んだら釣りでもするか」

「そうしよう」


 晴天の日のもとで握り飯をかっくらい、腹が膨れたら小舟にのってのんびり釣りを楽しむ休日。こんな平和も悪くはない。

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伝説の国のもふもふ白狼皇帝に捕らえられ、ラブ抜き結婚を迫られています 手塚エマ @ravissante

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