ラストサマー

平木明日香

天才錬金術師、青々峰鈴鹿

第1話


 俺は今、女子更衣室にいる。


 何でそうなってしまったのかは自分でもよくわからない。


 だが、事実俺は今、女子が着替えている目の前にいる。


 「犯罪」だ。


 普通に考えれば、公然わいせつ罪とか軽犯罪法に引っ掛かるレベルのヤバい行為だ。


 だから、俺は気が気じゃなかった。


 目を開けるなんてもってのほかだった。



 “絶対に目を開けちゃダメだ”



 何度もそう反芻していた。


 女子の下着姿を見る勇気なんてなかったから。



 俺の目の前にいる女子、青々峰鈴鹿は、そんな状況などお構いなしにセーラー服を脱ぎ始めた。


 もちろん、俺がここにいることもわかっている。


 大体、目を瞑るから待てって言ってんのに、全然聞いてくれないんだ。


 恥ずかしくないのか?


 それとも、ただの露出魔?


 慌てて目を覆う俺をよそに、青々峰はシャツのボタンを外す。


 俺の存在なんてはなから気にも留めていないようだった。


 まあ、そもそも俺はこの「場所」にいないようなもんだった。


 いないっつーか、“存在していない”っていうか…


 

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