11ー17話(忘れられた英雄とザイン編)

 構成上、この「葬送のフリーレン」第一期アニメシリーズの山場を作っていくのが表題のこのあたり(11話から20話にかけてくらい?)なのではないかと検討をつけていたのだが、概ねその通りだった。11話の意図がつかめないままちょっと時間をおき、17話まで一気に見た。11話から17話までの一連のエピソード、ここは「ザイン加入前」と「ザイン加入後」に分けるべきかと思ったが、物語を一つに結ぶ要素が(というか伏線が)ちりばめられていたので、少し長くなるが一緒に考えることにした。

 その前にここまでのおさらいをしておこう。

 1から6話までで旅の大目的「天国に向かう」を取り決め、主な仲間をそろえ、旅の指針が整った。そこから10話まではフリーレンがアウラとの対決を通して「葬送のフリーレン」と言われるゆえんを語り、11話ですべての決着がついた。


 そして11話後半、次なる旅の先には、厳しい冬の山脈と山小屋とスクワット添い寝おじさん……誰にも知られぬ英雄武道僧モンクとの出会いがある。まさかこのギャグ全振りのおじさんエルフが最終的にはこんな役割を果たすとは思わず、初見時「なんだこれは」とつぶやいてしまった私を許してほしい。

 12話は「英雄の物語」の物語だ。綺麗に形を整えられていずれ形を無くしてしまう勇者ヒンメルの物語の先行きを予見するような言い方をするフリーレン。この話は、ざっくりとみると「実はヒンメルが偽物の勇者であると証明されてしまった」こと、そしてヒンメルが『偽物の勇者でも世界を救えれば本物だ』と発言したことが本旨にみえる。そして実際、勇者ヒンメルのおきれいな伝説の中に、実際は沢山あったであろう土臭さを際立たせている。


さて、ここまでがザイン加入前である。この二話は単なるつなぎではない。


 13話、戦士ゴリラ(ツッコミどころ満載だがここは無視していこう)の誘いに乗らなかったことを後悔したままの、10年ものの後悔にまみれた青年(?)ザインをスカウトし、旅にいざなう。…………シュタルクの脳みそが鼻から出てこなくて良かった。

 ザインはこのパーティ唯一の大人だ。何度もシュタルクとフェルンの仲裁を行うなど年長の貫禄を見せ、戦闘におけるセンスも判断力もある。生臭坊主の上を行く破戒僧だが、実際に一人で人を呪う魔物に立ち向かった時などは大活躍を見せた。おそらく、あの戦闘シーンは実質ザインの自己紹介のようなものである。


 実はこの裏で、第二の物語が始まっていることにお気づきだろうか。そう、シュタフェルである。(シュタルクとフェルンの意)

 誕生日にものを送り合う二人、花の意匠……一悶着あったりなかったりするのだが、本当に少しずつ近づいているのがおわかりいただけるだろうか。

 ずいぶん前からくすぶっていた炎であったが、ここで一気に盛り上がりを見せる。察しのいい大人のザインは「もうおまえらつきあっちまえよ!」と大酒を呑む。

 ザイン、同意だ、同じ酒を、マスター。

 二人踊っている時などは覆った手の指の間から覗いていた私である。

 ザイン脱退後だったが、フェルンを姫抱きして雪の中を歩くシュタルクを見たとき真顔で「なんで付き合ってないんだろう?」と言ってしまった位だ。


 話がそれてしまった。


 ザイン加入後はザインの能力や人となりを紹介するエピソードと並んで、シュタルクとフェルンの間にそうした関係の構築を予期させる出来事が連発する。そしてフリーレンの脳裏にも、在りし日のヒンメルの姿が思い浮かぶわけだ。


 話を一旦保留にして、16話を見てみよう。16話は「記憶を後世に継ぐ」話だ。フリーレンが人間を知ろうと思った最初のきっかけ、古い友人のドワーフは、もはやなぜここにいるのかも思い出せない。妻がいた。顔も声もすべて忘れた。お前は勇者ヒンメルを覚えているか? 覚えている、とフリーレンは反駁し、ドワーフの記憶も後世に継いでいこう、と言う。

 そして訪れる16話後半。戦士ゴリラの確かな情報がもたらされる。ザインにとっては吉報であった。ゴリラが憧れた名も無き英雄のとなりには、賢者アゴヒゲとあだ名される僧侶の姿があった。賢者アゴヒゲは、ザインのもう一つの名前である。

 古い石像の伝承はもうどこにも伝わっていない。ここで11話の武闘僧が、この名も無き英雄たちの片割れであることが発覚するのである。そしてようやく、12話のフリーレンの話が効いてくる。伝説はいずれ形が変わっていってしまうだろう。そして16話前半のドワーフの言葉が覆い被さってくる。「わしはもう忘れた」

 そしてフリーレンの言葉。「未来に連れて行ってあげる」


 忘れられた英雄に憧れて旅に出たゴリラ。彼を追いかけて、フリーレンと旅をすることに決めたザイン。しかしザインは迷う。このままフリーレンと旅を続けるか。一人でゴリラを追うか。それが17話だ。

 ザインは一人でゴリラを追うことを決断する。

 一行はザインに別れを告げ、本初の目的だった「一級魔法試験」を受けるために魔法都市に向かうのだった。


 ザインと道を分かったことを悲観する必要は無くて、フリーレンは単純に、ザインを旅路に連れ出したにすぎない。それは彼の旅であり、彼が歩く道だ。ザインが何を選ぼうとも、フリーレンの望み通りだ。ザインは十年ものの未練を振り切って旅に出た。それだけでいい。








 ところで、ヒンメルが爆イケ過ぎて毎話泣いていた。指輪の下り、3キルくらいされた。看病のところで残機1になった。もうちょっとで何も言えなくなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

葬送のフリーレンに見る構成と限界オタクの感想 紫陽_凛 @syw_rin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ