#98 テロリストな椎菜、家の前に捨て狐(ロリ)
デスヨネー。
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天使さんになれるようになった翌日。
あの後、お姉ちゃんは終始死人のような顔になっていました。
すごくその……可哀そうに思えたけど、ここで簡単に許しちゃったら罰にならないので、心を鬼にしてそのまま放置。
とはいえ、朝になればそれはもう終わりなので。
起きてから制服にお着替えして、みまちゃんは先にリビングに行かせて、僕はお姉ちゃんを起こしに行くと……。
「お姉ちゃん、朝だよ~。起きて」
「……ハッ! 今マイエンジェルが私を優しく起こしてくれた気がしたァ!」
お姉ちゃんはすごい勢いで起きました。
うん、いつものお姉ちゃん。
「おはよう、お姉ちゃん」
「え、あ、椎菜ちゃん? あれ? 何故私に話しかけて……!?」
「もう一日経ったからね」
「……ヤッタァァァァァァァ! 椎菜ちゃんとお話しできるゥゥゥゥゥ!」
「お姉ちゃん、今は朝なので騒いじゃだめです!」
「ハッ! すんません!」
「まったくもう……じゃあ、朝ご飯が出来てるみたいだから、下に行こ?」
「イエス! マイエンジェル!」
……どうしよう、マイエンジェルが否定できない……。
実際僕、天使さんになれるようになっちゃったし……うーん、なんとも言えない。
「どしたの? 椎菜ちゃん」
でも、こう言うのは早めに言っておいた方がいい、よね?
なんだかんだ、お父さんたちにも言ってないし……。
うん、言っておこう、朝だけど。
「え、えーっと、お姉ちゃん? 驚かないでね?」
「何を?」
「……変成っ!」
「へ?」
僕はお姉ちゃんに一言言ってから、編成と唱えました。
すると、僕の体が光り出して……収まると、そこには天使さんの姿になった僕が。
「( ゚д゚)」
「じ、実は、昨日から天使さんになれるようになりました……」
「( ゚д゚)」
「なので、えと……それだけですっ!」
「( ゚д゚)」
「あの……お姉ちゃん? おーい、お姉ちゃーん?」
「( ゚д゚)」
……どうしよう、お姉ちゃんが反応しなくなっちゃった……。
えーっとえーっと……。
「優しいお姉ちゃんに、祝福あげちゃーうぞ☆」
反応をしなくなっちゃったお姉ちゃんを戻すために、僕はちょっと可愛い(?)感じでポーズを取りながらそう言ってみました。
「アッ――」
バタンっ!
「お姉ちゃん!?」
そしたら、お姉ちゃんが後ろ向きに倒れました。
なんで!?
「天死ッッ! じゃなかった、天使ッッ! 我がマイスウィートシスターがエンジェル!? なんで!? ホワイ!? ヤッタァァァァァァァ!? 椎菜ちゃん天使ぃぃぃぃ!? ごふぁっ!」
「お姉ちゃん!? 本当に大丈夫!? というより、情緒!?」
「へ、へへ……わ、私の屍を超えていけ……ガクッ」
「お姉ちゃーーーーーん!?」
朝からお姉ちゃんはお姉ちゃんでした。
◇
あの後、お父さんとお母さんにも見せたら、二人ともお姉ちゃんのような反応をして、桜木家の朝はすごいことになっていました。
なんだろうね……この、大変な感じ……。
けど、賑やかですごく楽しいです。
「おかーさん、てんしさんにならないの?」
「あ、あはは、さすがに今はならないよー」
「そーなんだ……」
なんで残念そうなんだろう……?
そんなに天使さんの姿が気に入ったのかな……?
けどあれ、あんまり使いどころがなさそうなんだよね……それこそ、終電を逃しちゃった時とかくらい……? もしくは、忘れ物をしちゃった時とか……それくらいだよね。
しかも、翼が生えるから結構目立ちそうだし……あ、でも、霊術を組み合わせれば結構……。
「……みまも、とびたい」
「そうだなぁ……」
……最悪の場合を想定して、常に風の霊術をみまちゃんに纏わせるとか、それから僕とみまちゃん全体を包み込むことで仮に離れちゃっても落ちないようにするとか……あ、その手があったね!
うん、霊術! こういう時の霊術!
「うん、今度連れてってあげるね」
「いいのっ?」
「うん、その前に僕の練習が必要だけど……いいかな?」
「うんっ!」
みまちゃんはすごく嬉しそうな表情を浮かべると、ぎゅっと抱き着いて来ました。
あぁ~、可愛いですぅ……。
なんと言うか、みまちゃんと一緒に暮らすようになってから思うけど、こう、癒されるよね……。
まあ、本当の僕の娘みたいだし、それもそう、なのかも?
「あ、そろそろ小学校だね。みまちゃん、今日も頑張ってね」
「だいじょーぶ」
「うんうん、頼もしいね~。あ、嫌なことがあったら僕に言ってね?」
「うん、わかった」
「じゃあ、いってらっしゃい」
「いってきますっ」
小学校の前に着いたところで、いってらっしゃいと言うと、みまちゃんはすてててー! と駆けて行きました。
うん、微笑ましい……。
◇
それから学園に到着……したんだけど。
「あれ? 今日欠席が多い?」
なぜか欠席している人が多かったです。
というか……クラスの半分くらいいない気が……。
「おはよー!」
「おはよう」
僕がクラスの状況を見ながらこてんと首をかしげていると、柊君と麗奈ちゃんが登校してきました。
二人もクラス内を見て人が少ないことに気が付いたけど、すぐに何かに納得したようで、あぁ……と苦笑いを浮かべていました。
「二人とも、何か知ってるの?」
「あー……そうだねー……」
「原因は間違いなく、昨日のハロウィンだな、これは」
「ふぇ? ハロウィン? なんで?」
ハロウィンが原因って何だろう? 何かあったっけ?
うーん?
「……高宮君、これ、多分自覚ないよ?」
「多分じゃない。間違いなく、だ。とはいえ……まあ、椎菜相手だからなぁ……そりゃそうなるか……」
「???」
なんだかよくわからないけど……うーん?
それに、登校して来てる人もよく見ると、どこか疲れた様な表情を浮かべてるし……何かあったのかなぁ。
インフルエンザとか? でも、流行ってる、なんてことは聞かないし……。
「おらー、席着けー……っと、やっぱうちのクラスも少ないのか……」
「あれー? 先生、今日早いですね? まだHR前ですよ?」
「ちょっとした連絡事項をな。なんで、一旦席着け」
いつもより早く入って来た田崎先生の言う通りに、それぞれが自分の席に着く。
本当に人が少ない……。
ちらほらと空席があるせいで、虫食いみたいになっちゃってる。
「えー、まず欠席者なんだが……面白いことに、一年生~三年生関係なく、全クラスが半数も休んでるそうだ」
「なんでですか!?」
「「「あー」」」
「はい、気付いていなのは桜木だけだな。えー、もうバッサリいうんだが……全員、貧血で休んでる」
「貧血!?」
なんで貧血!?
あ、でも、貧血って酷いと本当に辛いって聞くし……けど、全員貧血ってどういうこと!? そんなことあるの!?
「主に、桜木のいたずらお菓子と、普通のお菓子を食べたことと、無駄に可愛い言動やら姿を見たことが原因らしいが」
「なんで!?」
「「「やっぱりか」」」
「やっぱりってどういうことぉ!?」
え、僕が原因!? なんで!? 僕、そんなに悪いことしちゃったっけ!?
……で、でも、やったことと言えば、田崎先生が言ったようにいたずらお菓子とか、普通のお菓子とか、たまに言ってほしいセリフを言わされたくらいで……他には特に何もなかったはずだけど……。
「まあ、あれだな。美味すぎたんだろう。お菓子。あと、可愛すぎたんだろう、桜木。全員、お菓子を食べて鼻血と吐血を噴出して倒れたそうだ」
「まるで僕が毒を持ったみたいに言わないでくださいよぉ!?」
「いや間違いじゃないだろー、毒物じゃなくて、劇物かもしれんが」
「もっと酷いです!?」
「とまあ、そんなわけなので、今日はまさかの全校生徒の半数以上が貧血で欠席という前代未聞の状態になった。なので、まあ、うん。ちょっと授業があれこれしちゃうということで、今日は一日自習になった」
「「「適当すぎるッッ!」」」
それでいいの!? 学園なのに!?
「はい、以上。まあ、あれだ。とりあえず、適当に過ごしておけばいい! 自習って言ってもやることはないしな! 寝てても良し、勉強してもいいし、読書してもいいし、そうやって今日の授業は過ごしてくれ。以上、解散だ。あと、桜木。テロは起こすな」
「テロなんてしてませんよ!?」
僕悪いことしてないよぉ!?
◇
それから、田崎先生が言ったように、本当に全部の授業が自習の時間になりました。
悪いことをしてないはずなのに、こう、罪悪感のようなものが……。
一人で悶々としつつも午前中の授業(全部自習だけど)が終わり、気が付けばお昼休みに。
結局、これじゃあ学園にいても意味なくない? ってなったようで、今日はお昼休みが終わったら帰宅になりました。
学園が適当すぎますっ……!
「いやー、人が少ないねぇ」
「そうだな。まさか、椎菜一人で学園の半分を壊滅させるとは……」
「柊君言い方!」
「でも、実際椎菜ちゃんのお菓子本当に美味しかったしね。あたしたちは同じクラスだから慣れてるけど、慣れてない人からしたら劇薬だよね」
「麗奈ちゃん!?」
「まあ、そうだな。特に男子が多かったらしいな、欠席者。椎菜は基本区別をしないからか、分け隔てなくお菓子を上げる。結果、あまり女子と接するのが得意じゃなかったり、ちょっと避けられてたりする奴らが可愛いの過剰摂取で貧血を起こしたわけだが」
「柊君、何を言ってるの? ねえ、何を言ってるの?」
僕の幼馴染が何を言ってるのかわかりません……!
あと、普通に劇薬とか酷いこと言ってない!?
「ちなみに、三年生と一年生が酷かったらしい」
「あー、違うもんねぇ」
「あぁ。三年生はこう、妹的な可愛さでやられて、下級生は見た目どう見ても年下なのに、やたら母性が滲み出る椎菜の優しさとか笑顔でやられたらしい」
「おー、さすが椎菜ちゃん。全属性キラー」
「どういうこと!?」
全属性キラーってなに!?
僕、そんなに危険な存在じゃないよぉ!?
「まあ、諦めろ。まあよかったじゃないか。急遽午後が休みになったんだ」
「だねー。あたしはちょっとありがたいかも。昨日は椎菜ちゃんたちの配信で、腹筋やられて実は筋肉痛だからね」
「そうなのっ?」
「そーなんです! やぁ、全力朗読が面白すぎて、こう、バッキバキ」
「あー、不覚にも俺も笑ったな、あれは。というか椎菜、あれもうやけっぱちだったろ」
「あ、あははは……その、僕もああいうのは初めてだったので……もう、勢いで……あと神薙みたまオルタっていうよくわからないこともしてたからね……」
本当になんなんだろうね、あれって。
しかも、デザインがすごくいいのがなんとも言えない……。
「あれはすごかったねぇ。というより、あのクオリティーの高いデザインをすぐにできるわたもちママってすごくない?」
「らいばーほーむに関わりのある人物な時点で、普通じゃないのはそうだな」
「僕も、一日であんなに可愛いデザインが送られてくるとは思いませんでした……あと、あれを加工した人もすごいです……」
「一日で描き上げて、一日で加工してって……やっぱりらいばーほーむってすごいねぇ。そんなところに所属してる椎菜ちゃんもそうだけど、スカウトされた高宮君もすごいよね。いやー、友達として鼻が高いよ」
うんうん、と頷きながらそう話す麗奈ちゃん。
僕からすると、周りの人がすごすぎて、僕大丈夫かなぁ、なんて心配になっちゃうと気があるけどね……。
「あ、そう言えば椎菜ちゃん。昨日の配信で結構登録者数伸びてなかった? どれくらい増えたの?」
「そういえば見てないね……ちょっと見てみよっか」
「椎菜のことだ。数十万単位で増えてるんだろうな」
「さ、さすがにないと思う……よ? よくても、数千とか……」
「「そんなバカな」」
「えぇぇ……?」
二人のその息ぴったりな反応は何……?
けど、うん、なんか昨日の配信はトレンド入りしたみたいだし……ちょっとは増えてるのかも……って…………エッ!?
「椎菜ちゃん? どうしたの? すっごいぷるぷるしてるよ?」
「そんなにすごかったのか?」
「こ、ここっ、これっ……!」
「「……ぶふっ!」」
震える手でスマホの画面を二人に見せると、二人は噴き出しました。
わかる! わかるよ!? そうだよね! そう言う反応になるよね!?
なんでっ……なんでっっ!
「150万人になってるの!?」
増えすぎ! 増え過ぎだよぉ!? 最近まで100万人ちょっとだったよね!? 何があったらそんなに増えるの!? え!?
「うわぁ……椎菜ちゃんってこう、大きくやらかす度に増えるよね……」
「やらかすってなに!?」
「昨日の配信、最後は同接がとんでもないことになっていたからな……というか、椎菜は気付かなかったのか?」
「ぜ、全力朗読で気付きませんでした」
そんなにすごいことになってたの……?
え? え!?
「というかこれ、らいばーほーむで一番登録者数が多いライバーになってない?」
「なんでぇ!? そこはもっとこう……お姉ちゃんとか、皐月お姉ちゃんとか、栞お姉ちゃんとか! いっぱいいるよね!? なんで僕!?」
「やはり、可愛いは最強ってことだねっ……!」
「意味がわからないよっ?」
「まあ、いいんじゃないか? ファンが増えるのはいいことだろう」
「そうかもしれないけど……その、これはちょっと怖いよ!? こんなにいっぱいいるの!? なんでぇ!?」
わからない! どうしてこんなに人がいっぱいついちゃったのかわからないよぉ!?
「あ、あー……なるほど、そういうことか……」
「高宮君、何かわかったの?」
「そうだな……調べた感じ、どうも海外からみたいだ」
「が、外国人さん!?」
「あぁ。一部の英語を訳すとだな……『なんだこのクレイジーガールにクレイジーボーイは!? 最高じゃねぇか! HAHAHA!』とか『このキュートガールは何者なんだ!? キュートすぎる!』とか、まあ、そんな感じのコメントが多い」
「遂に、海外進出する時が来たんだね! 椎菜ちゃん!」
「えぇぇぇ!?」
遂にも何も、まだ二ヶ月ちょっとだよ!? おかしくない!?
「ちなみに、昨日のあの配信がきっかけで、他のライバーも伸びたらしい」
「すごいね、椎菜ちゃん……」
「えぇぇぇ……」
何が起こってるのぉ……?
◇
色々と予想外のことが判明したお昼休みが終わり、そのまま帰宅になったんだけど……。
「…………」
「…………」
僕は、すご~~~~~~く! 困惑した状況に遭遇していました。
今、僕の目の前には『拾ってください』と書かれた紙が貼られた段ボールにちょこんと座っている、黒髪紅眼で、狐の耳と尻尾が生えた巫女服姿の女の子がいます。
女の子はじーーーー……っと僕を見つめていて、試しに右に動くと、女の子の顔が僕の動きに合わせて動いて、逆方向に動いても同じように女の子の顔が動きました。
よく見ると、耳がぴこぴこ動いていて、尻尾もふりふりと揺れているし……。
…………え、なにこの状況。
ちょっと待って? 整理しよう?
まず、学園が終わったから、柊君と麗奈ちゃんと一緒に帰っていて、途中で別れました。
それで、お家の前に着いたら、遠目に段ボールに入った女の子が見えて……それで、現在に至ります……。
………………うん、どういうことかなぁ!?
え、なにこの女の子!?
なんで僕を見てるの!? なんでちょっと期待の籠ったキラキラとした目を僕に向けてるの!? なんで尻尾がふりふりしてるの!? 可愛いっ! じゃなくて!
と、とりあえず、お話……お話を聞かないとっ……!
「あ、あのー……えーっと、君はなんで、僕のお家の前に、その……段ボールに入ってる、のかな?」
まずは、女の子がどうしてここにいるのかを訊いてみたら……。
「…………おかーさん、に、あいにきたからに、きまってます……」
抑揚のない、けれどどこか期待とか嬉しさが入り混じった声で、そう答えました。
…………デジャヴっっっ!
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はい、謎の幼女(尻尾と耳付き)です。
神様たち……もっと頑張れよッ! やー、なんなんでしょうねー、この女の子ねー。
まあ、色々お察しですが……というか、高校二年生で二児の母ってすごくね? あとこれ、Vtuber物だよね? なんかおかしくない?(今更)
ロリ巨乳美少女にTSしたら、Vtuberなお姉ちゃんにVtuber界に引きずり込まれました 九十九一 @youmutokuzira
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