閑話#22 全力☆神界狂騒曲

「ぬぉぉ~~~~っ!? くそぅっ! あのアホ主神、なんてタイミングで消えたんじゃぁぁぁぁ~~~~!」


 神界では、神たちが壮絶な戦いを繰り広げていた。

 尚、相手は新しく生まれようとしている神である。

 その神相手に、人一倍……いや、神一倍頑張って抑え込もうとしているのは、宇迦之御魂大神である。

 どっかの主神に対しての愚痴も忘れない。


「宇迦之御魂大神様!? 泣き言はいいので、目の前に集中を!」

「わかっとるわい! というか、どうしろと!? おぬしの神子、規格外すぎるじゃろ!」

「照れます!」

「照れるな! あ、そこのおぬしらももっと頑張れ! 神力全開で行けぃ!」

「「「無茶言わんでください!?」」」


 もっと頑張れと言われた他の神々だったが、これでも既に全力以上で頑張っているのに、これ以上は無理だが!? と無茶を言って来る宇迦之御魂大神に切り返す。


「妾、超頑張っとるんじゃぞ!? 上位神の妾が頑張っとるのじゃぞ!? おぬしらが頑張らないでどうする!?」

「いやいやいや!? 俺らに言われても困りますが!?」

「というか、もう諦めて新しい神を歓迎した方がいいのでは!?」

「それは私も思う」

「美月ィィィィィィィ⤴!?」

「すみまっせんッッッ!」


 神なのに魔神の如き形相で叫ばれ、美月は速攻で謝った。


 ちなみにだが、現在神界がどういう状況かと言うと……ある一点、新しく神が生まれようとしている場所がものすっごい光輝き、新しい神を生み出そうとしているところを、神々総出で神力を使って抑え込もうとしている。


 しかし、想像の上を行くほどの信仰が集まっているせいで、勢いが強すぎて神々が総出であるにもかかわらず、一向に抑えられる気配がない。

 それどころか、勢いは増していく一方である。


「ぬぉあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあっあっあっ!!? もう無理! 無理じゃろこれぇ!? 美月よ、おぬし手紙は送ったのか!? 神子に!」

「送っています! ただ、同時に別件で別の手紙も行っているようですが!」

「別の手紙じゃとぉ!? 誰じゃそれはぁ!? 主神か!? あんのアホ主神なのかぁ!?」

「いえ! 天使です!」

「天使……え、天使!? なんで天使!? あの超常存在界の社畜とか、超常存在界のブラック企業とか言われとる、天界出身の天使が何故!?」


 天使と天界、酷い言われようである。


「どうも、地上で行き倒れていたところを、神子が助けたみたいで、それでお礼の手紙が!」

「マジでェェェ!? 天使、なにしてくれとんの!? いや、天使だからまぁ……悪魔とか妖精じゃないだけマシィ! 精霊とか妖魔なら許す!」


 最初はキレそうになっていた宇迦之御魂大神だったが、すぐに天使はマシだと言い直す。

 尚、悪魔と妖精は許されない模様。


「おい聞いたか? あの神子ちゃん、天使を助けたらしいぞ……?」

「さっすが私たちの神子ちゃん! 普通の人間じゃしない経験をいつもしている!」

「そこに痺れる憧れるゥゥゥ!」

「んなこと言っとる場合か!? たしかに、神子の現状が気になるけども! とにかく、今はこっちを抑えるのが最優先!」

「「「えー」」」

「えーじゃないわ!? 子供かっ! おのれらはっ! ただでさえ、一柱の神が一緒におるのじゃ! もう一柱増えてみよ!? さすがに申し訳ないわっ!」

「「「それはたしかに」」」

「そもそも、あの娘が母親の元へ行きたいというから送ったとはいえ、人の子が神を育てるなど前代未聞じゃからな!? どあぁぁぁぁ!? 強い! 勢いが強すぎるぅぅぅぅぅ!」


 抑え込もうとしているはずなのに、むしろこちら側が引っ張られそうになるほどに、圧力が半端じゃない新神。

 どんだけ信仰されてんの!? と宇迦之御魂大神は心の中で叫ぶ。


「というか、あのアホ主神はどこ行ったんじゃぁぁぁぁぁ!? 妾ら神総出で抑え込もうとしておるのに、何をしとるの!? ねぇ!? というか、妾の負担が半端じゃない気がするのじゃがぁ!?」

「「「頑張って!」」」


 いい顔+サムズアップで応援する神々に、宇迦之御魂大神の額に青筋が浮かぶ。


「頑張って! じゃないわ! ぐっふぁぁぁぁぁぁ!? きょ、今日は神子が配信する日だったというのにぃぃぃぃぃぃ!?」


 宇迦之御魂大神は、神薙みたまの大ファンなので、普通に配信を視聴しようとしていたのだが……今回の一件がきっかけで見ることが出来なかった。

 まあ、根本的原因はその配信なのだが。


「宇迦之御魂大神様!」

「なんじゃ美月ィ!?」

「正直、今回の配信とても面白かったです!」

「おぬしなに抜け駆けして視聴しとるの!? というか、しておったの!?」

「はい! あ、ついでにコメントも投げております! 『頑張って大きい声を出すみたまちゃんが可愛いです……』って投げておきました! コメントを!」

「何ぃぃぃぃ!? 神子が大きな声じゃとぉぉぉぉ!? 見たいっ! 超見たいぃぃぃぃぃ!」


 必死に頑張っている自分を差し置いて、しれっと配信を見て居た挙句、コメントまで投げていた自身の分け御霊とも言うべき美月相手に強烈なまでの嫉妬を宇迦之御魂大神は憶えた。

 というか、大きい声出してる神子が見たい! というのが本音。


「それにしても、宇迦之御魂大神様、ずっと叫んでいるな……」

「まあ、仕方ないよ、この惨状だもん」

「くっ、俺も見たかったっ……!」

「むしろ、日ノ本の神々で神子ちゃんを推していない神はいないでしょ」

「「「それな」」」


 現在、神薙みたまこと、桜木椎菜の存在はなんやかんやあって日ノ本の神の間で知らない神などいないほどに有名になっており、同時に推していない神もいないほどとなった。最近、海外にも広めるか……? と思い始めている神もちらほらいる。


「おぬしらぁ!? いいから働かんかい!」

「宇迦之御魂大神様、もう諦めて我々で育てましょうよー」

「何を言うとんの!?」

「そうですよー。だってこれ、絶対無理ですよー」

「私にはわかります、今生まれようとしている新神は母親に会いたくて生まれようとしていると……」

「玉依姫ぇぇぇ!? おぬしが言うと洒落にならんから!?」

「事実です」

「わかる……私にもなんとなく、会いたがっている雰囲気を感じますし」

「木花咲耶姫も何言ってくれとんの!? というか、子宝とか、安産などにご利益があるおぬしらが言うとマジで洒落にならん! いや、妾もそっち方面司っとるけどぉ!」

「「じゃあ、宇迦之御魂大神様はどうなんですか?」」

「正直、おかーさんに会いたい、っていう気持ちを死ぬほど強く感じるぅぅぅ! だから、正直罪悪感があるんじゃよぉぉぉぉぉ!」

「「「草」」」

「神が草生やすな!? というかおぬしら、普通に現代の日ノ本に染まりスギィ!」


 などと言っているが、そもそもVtuberな神子の配信を毎度毎度見ている時点で、人のことが言えない宇迦之御魂大神である。

 こんな惨状を、現世の神職の者たちが見たら卒倒物である。

 ……まあ、神託と称して、神薙みたまの配信を視聴することを勧めて来そうではあるが……。


「ん……ごふっ!」


 必死になって抑えている横で、美月が突然血を吐いて倒れた。


「美月ィ!? 突然血を吐いてどうしたのじゃぁ!?」

「す、すびばぜん……天使な我が神子を見たら思わず吐血を……」

「天使な我が神子って何ぃ!?」

「あ、いえ、なんか、我が神子が、その……天使になりました」

「「「???」」」


 いやそれはいつもだろ? という言葉を伴った表情と視線が美月に集中した。

 ついでに、当然のことを言いだしてどうしたんだ? 頭おかしくなった? とも思われている。

 この神たちはもうだめである。


「いえ、そうではなく……どうやら、例の我が神子に助けられた天使が……というか、天使長がお守りを贈ったようでして……それが天使に体を変化させる物だったようです」

「「「何ぃぃぃぃぃ!!???」」」

「その上、我が神子は例の組み紐の力と合わせて、天使の力と神の力を融合させた状態に変化……その、大変素晴らしい姿に変身して、現在はとても無邪気に空を飛び回っております」

「「「見てぇ!? 何それ超見てぇ!?」」」

「おのれぇ、神子めぇぇぇぇ~~~~~! そんな確実に可愛いであろう姿を手に入れたじゃとぉ!? どこまで神を惑わせるんじゃぁぁぁ~~~~~! 見たいっ! すっごく見たいぃぃぃぃ~~~~~っ!」


 まさかの情報に、全神々がその姿を見たいと切望し始めた。

 特に、宇迦之御魂大神は必死に頑張っているため、そちらに力を割く余裕がなく、その姿を見ることが出来ない。

 宇迦之御魂大神が少しでも油断をすれば、間違いなく生まれてしまいそうなので。


「やべぇ! なんだこの可愛い生き物!?」

「耳に尻尾! 天使の翼! しかも、え、片眼が金色に!? 髪色も半分金色になっている!?」

「うっひゃぁぁ! 神子ちゃんは最高~~~~~っ!」

「ちょぉっ!? おぬしらなに見とんの!? ずるい! ずるいのじゃぁぁぁ~~~~! 妾も見たいぞぉぉぉぉ!」

「「「あー、可愛いなー」」」


 必死に頑張っている宇迦之御魂大神相手に、他の神々はまるで煽るかのようである。


「おのれぇぇぇぇぇぇ! ……あっ! ほんとにヤバい!? お、おいおぬしらぁ! 本当にこれまずいって! 生まれちゃうってぇ!」

「「「もう、諦めちゃってもいいかなって……」」」

「諦めたらそこで試合終了じゃが!?」

「宇迦之御魂大神様、生まれた場合は試合終了どころか、新しい神の神生が始まります」

「何言うとんの!? あっ、待って待って待ってェェェェ!? 本当に無理これェ!? いやぁぁ~~~~~っ! おぬしら手伝ってぇぇ! じゃないとっ、じゃないとぉ~~~っ…………おぬしらの回線、全部妾が切断すっからなぁぁぁぁ~~~~~!?」

「「「よっしゃ任せろ! 絶対に抑え込んでやるぜェェェ!」」」

「わー、びっくりするほど単純~……」


 というか、どんだけ見たいんじゃ……宇迦之御魂大神は急にやる気を見せた他の神々に呆れるのであった。


 尚、この後抑え込めたかと言えば………………まあ、うん。


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 神様って大変だね!

 実際問題、あの配信が原因で、椎菜の登録者数はそれはもう伸びました。多分、椎菜が神薙みたまオルタを完璧に掴めば、もっと伸びることでしょう。

 あと、追加で。作中でもチラッと出ましたが、天使以外にも、悪魔、妖精、精霊、妖魔と、色々超常存在がいます。まあ、天使含めてこの五種しかいないんですけどね。

 やー、椎菜が全力朗読したり、空を飛び回ってる裏で、神々が必死こいてるのとか……面白いね!

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