藻屑のやうに

菫野

藻屑のやうに

   ネオンネウロン「ピアノの亡骸のために (feat. yohak) 」に寄す



目の花が咲くわたしたち忽ちに消えてしまうよ境界にゐて


きみだつて藻屑のやうに降る星と塔のあひだにぼくは斃れる


不協和音ディソナンスばかり鳴らして貝殻はぱんと割れたと云ふ子どもたち


海の泡の見開きがある写真集ひらいたままの三年でした


コップからこぼれた水は重力にしたがふ海もキャメル・スピンも


嘘だけがこの世のきれいなものだからピアノは蝶のやうに飛んだよ


わたくしの患者は会ふたび云ひますよ人魚の声を聞いたのです、と


完全な姿でゐてよ忘れてよどうしてゆびをつないだのかな


飛び跳ねる海を見たくて振り向いて世界はとほいわたしから今


黒鍵を調律してよもう二度と儚かるうた歌はぬやうに

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