第9話 親友(♂)がある日女の子になってしまったようなんです。そこからはじまるSWEET DAY'S……え? ちょっと、スイートすぎません? 俺(♂)親友とどう向き合ったら良いのでしょうか?



「ふーん……」


 さっちゃんが、俺のスマートフォンをいじりながら、意味深な笑みを浮かべる。それから、チラチラ、俺を見る。


 さっちゃんに隠すものなんて無いと思っていたけれど……あったよ。

 そういえば、SNSで不特定多数の人に、質問を投げかけていたんだった。







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 親友♂がある日女の子になってしまったようなんです。そこからはじまるSWEET DAY'S……え? ちょっと、スイートすぎません? 俺♂、親友とどう向き合ったら良いのでしょうか?


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 そんな俺の呟きポストに反応があったのが有り難い。肩の力が抜けたし、もっと前進しようと思えた。そして、気合いが入った。








@:*月*:とりあえず、おっぱいもみまくろう!








「だから、たっ君……この前、激しかったんだ?」


 止めて。俺にあえて見えるように、スマートフォンを閲覧しないで。それから勝ち誇ったかのように、微笑えまない! そういう目で俺を見ちゃダメ!




@a*****:たっ君は今回の事をしっかりと反省してもろて! さっちゃんを幸せにする事‼️ワイとの約束やで‼️




「たっ君、ボクを幸せにするって言ってくれたもんね」


 そう言いながら、俺の膝に乗る。距離が近くて――ずかぬ。


「いや、あの……俺のアカウントで、返信をダイレクトにするの、止めない?」

「ちゃんと、たっ君の嫁って書いたから良いよね?」


「それは良いけど……あれ? 良くない? 良い? あれ?」

「でもSNSで他の子とオフ会とか、絶対ダメだからね?」

「いかないよ!」


 必死に言う俺を尻目に、満足そうにさっちゃんは笑む。

 はスマートフォンの画面をさらにスクロールさせた。




@ura****:……俺もS.C病が発症したんだけど……悪友ダチは受け入れてくれるかな? アイツはそんな目で見ないって分かっているけれど。それでも心配で――。



 そんな呟きポストが飛び込んできた。


 数少ない疾患――いや、奇跡だったのか。さっちゃんと同じように、翻弄されている人がいると思うと、妙な親近感を感じて――。


 と、さっちゃんがスマートフォンを乱暴に、ベッドの上に放り投げた。見れば、不満ですと言いた気に、さっちゃんは頬を膨らませていた。


「……さっちゃん?」

「たっ君が、ボクのコトしっかり見ていない、って思った」


「見てるけど?」

「足りないよ。全然、足りない」


 さっちゃんは、遠慮なく俺のことをぎゅっと抱きしめて――。

 俺はベッドに押し倒された。


「たっ君との時間はね。ボクにとって、特別な癒やしの一時なの。他の不純物を注入したくない」

「今、目の前のさっちゃんしか見てないからね」

「なら良し」


 さっちゃんは満足そうに笑う。

 今でも、あの神社でのさっちゃんの魂の叫びが、鼓膜を震わす。


 ボクね、ずっと女の子になりたかったんだ。

 可愛くなって。

 たっ君を独占して。


 たっ君がボクを癒してくれたのと同じくらい、ボクがたっ君を癒してあげたかった。


 男でも女でも、関係ないって。

 たっ君がそう言ってくれたの、本当に嬉しかったんだよ?


 囁く。

 今も、俺の耳元で。


 溢れる言葉が、止まらない。

 その甘い言葉に、癒される。

 溶けてしまいそうなくらい、幸せに包まれている。





「たっ君、大好きだよ」


 何度目だろう。

 何回、同じ言葉を交わしたんだろう。何回、触れたんだろう。





質問:親友♂がある日女の子になってしまったようなんです。そこからはじまるSWEET DAY'S……え? ちょっと、スイートすぎません? 俺♂、親友とどう向き合ったら良いのでしょうか?


答え:声に出してみて。それが、全ての答えだから。



 さっちゃんが、そう呟く。




「大好き――」

 何度目か、もう忘れた。好きが溢れすぎた言葉は、甘い口吻くちづけで溶け合った。




fin

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親友♂がある日女の子になってしまったようなんです。そこからはじまるSWEET DAY'S……え? ちょっと、スイートすぎません? 俺♂、親友とどう向き合ったら良いのでしょうか? 尾岡れき@猫部 @okazakireo

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