第4話 結

 僕たちは一緒に話をしながら進む。


 やがて。


「ねえ見て。出口だよ!」

「出口だね」

「ゴールが見えると、なんだか感慨深いねー」

「確かに、そうかもしれない」

「一緒に手を繋いで、せーのでゴールしよっか!」

「分かった。そうしよう」


 僕たちは手を繋ぐ。しっかりと、離れてしまわないように。


 出口に近づいていく。一歩、一歩、近づいていく。


「「せーのっ!」」


 僕たちは同時に右足を前に出す。体がぐんっと前に進む。そして。


「「ゴール!」」


 木陰から明るい空間に出た。広々とした公園の、ずっと向こうにバス停が見える。僕たちは手を繋いだままバス停へ向かう。


「森林浴、終わっちゃたねー」

「うん」

「楽しかったっしょ?」

「楽しかった」

「なら良かった!」

「いつか、ここにまた来たい」

「そうしようよ。今度は春に!」

「桜を見に。約束もしたしね」

「うん!」

「また来よう」

「森は逃げないよー」

「そりゃそうだ」

「ここの森は来年も、再来年も、そのずっと先でも残ってる。きっとね!」

「うん、きっと」

「私たちもさ! きっと、来年も、再来年も、そのずっと先の未来でも会えるよね!」

「いつでも会える。手を離しても僕たちは繋がってる」

「見えない糸で! 赤い糸かな? 運命みたいな?」

「赤い糸か」

「なにか思うところがあるって顔?」

「僕たちが出会ったのは運命かもしれないけどさ」

「しれないけど?」

「僕は自分の意思で君を選んだんだ。それも運命に含まれるのかな?」

「うーん……そうだねー」

「ミキは何か思い付きそう?」

「答えをね? うーん、そだねー。私が思うに君は自分でしらないうちに赤い糸を結んだんだ。あるいは私が。そうじゃないかな?」

「なるほど。僕たちのうちのどちらかが自分でも気付かないうちに糸を結んでたのか」

「あるいはお互い同時にね。だからこれは運命じゃなくて選択!」

「選択か。そうかもしれない」

「私たちはこれからも色んなことを選択していく。私が君と一緒にいたいって思うのも選択なんだよ」

「なら、運命は巡り合わせでしかないんだ。巡り合ってそれからどうするかを決めるのは僕たちの選択だ」

「だから、さ」


 ミキは前を向いたまま嬉しそうに言う。


「世界にたくさん居る人の中から、私を選んでくれて、ありがとう!」

「僕からも、一緒に居てくれて、ありがとう」

「どういたしまして。今日の森林浴デートは大成功?」

「大成功だよ。文句のつけようがない」

「やった!」


 嬉しそうに笑う彼女の横顔を見ながら、僕は彼女を幸せにしたいと強く願った。


「ところでミキ。帰りにお菓子を買うことは忘れてないよね?」

「そうでした!? あっぶなー!」


 本当に、彼女は元気で楽しくて。


 僕を癒してくれる人だ。

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森の妖精みたいなギャルと一緒に森林浴で癒される話 あげあげぱん @ageage2023

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