謝礼

 前に言っていたルーナ王女殿下の言葉。

 その真意を今、僕は痛いほどに理解させられていた。

 革命の一件が終わった後の僕に仕事なんていない……忙しくなりようなんてないじゃないか。

 そんなことを思っていた僕の淡い考えは一瞬で粉砕させられた。


「いやはや、オルスロイ王国における革命勢力との戦いでのご活躍には大変驚かされましたよ。戦線が停滞する中で、足踏みすることしかできなかった我々としては、ロロノア男爵閣下のお力には大いに助けられました。ここで再度、お礼を申し上げさせていただきます。本当に助かりました」


「現在、ロロノア男爵閣下には婚約者がおられないとの話を聞きました。どうでしょう?私の娘を婚約者にするというのは。父親の私が言うのも何ですが、うちの娘はもう幾つになっても天使のようにかわいくて……」


「いやぁー!実に貴方は素晴らしいっ!これが時代の英雄。麒麟児であるのか、と思わさせていただきましたよ。こういっては失礼ですが、男爵家。小さな男爵領でありながら、あれだけの活躍を見せる。それは並大抵のことではありません。本当に頭が上がらないばかりですよ」


 僕の元に次々とやってくるのは自国のみならず、世界各国の有力者たちだ。

 オルスロイ王国で見せた僕の活躍というのは本気で規格外のものだったらしい。

 信じられないような人たちが僕の領地に訪れ、自分を英雄として扱い、褒めたたえ続けていた。


「あ、アハハ……剣聖たるマリエとドラゴンたるフェーデが強いだけですよ。自分は彼女たちの上に立つ者として、恥ずかしくないよう、毎日、奮起するような日々ですよ」


 そんな人たちから褒められまくる。

 生きた心地がしなかった。

 カスみたいな土地に大量の有力者が来る……こんなに胃が痛いことはない。

 このブームにあやかるため、大量の商会の人たちがうちの領地を訪れ、色々なことをやって、やってきた世界各国の有力者たちを歓迎しているおかげで領地の方も盛り上がって助かっているところは多々あるけど……。

 それでも、だ。


「はぁぁぁぁぁ」


 あまりにも忙しすぎる。

 どう考えても、仕事が多すぎる。

 人、人、人。やってくる大物を前に僕は頭を回していた。

 相手も格上しかおらんから、全然断れないし。


「婚約者の話は少し……まだ、ロロノア卿も当主になったばかりです。まだ、時間が必要でしょう」


 ルーナ王女殿下が領地に残り、自分の仕事を手伝ってくれるのはかなり大きく……今の僕は彼女にこれ以上ないほどの感謝の意を抱かざるおえないような状況になっていた。

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史上最弱のかませ犬から始まる勘違い英雄譚 リヒト @ninnjyasuraimu

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