第2話 山の中の雨
山はよく天気が変わりやすい。
人間には予測できない雨が降ったりする。
良樹という男は登山クラブに5年参加している。山を年間何十箇所も登っている。時には、海外の山もクラブの仲間と登ってきた。
だが最近、膝の関節や腰が少し痛むようになり険しい山には登らず、初心者の登山家たちが登るような簡単な山に挑戦していた。
「良樹さん、僕良い山を見つけましたよ」
同じ登山クラブで知り合った三谷から良い話があると呼ばれていた。
「宮城県にある山なんですけど。登山家達や現地の人にもあまり知られていないんですって。しかも、初心者でも登り切れる山なんですって」
そんな山、今の日本にあるのだろうか。良樹は疑問に思った。
「良ければ一緒に登りませんか?」
疑問に思ったのだが断る理由もないため、その提案にのった。
二人は新幹線で、あまり知られていないとされる山がある宮城県へ向かった。
三谷の言う通り、膝や腰が痛む良樹の体でも登れそうな傾斜がゆるい山だった。しかし、標高はそれなりに高い。
「なかなか登りがいがありそうですね」
良樹は久しぶりに山に登る。
「ああ、そうだな」
山に登り初めて少し経ち、二人は奇妙な物を見た。
木々の緑色の中に不気味に聳え立つ赤色の鳥居だった。
人に知られていないはずの山の中にそれはあった。だけども二人は初めは驚いたが、あまり気に留めずに山頂を目指した。
鳥居があった場所から少し離れた所に太陽の光が差し込む場所があった。少し休もうかと、そこらへんにある平べったい石の上に座った。
鳥の囀り、木々の葉の音、遠くで川の流れる音。いつまでもここにいることができるような、全てが落ち着いているような場所だった。
十分に休憩が出来たので、頂上に向けて出発した。
何時間も同じような景色が続いた。どこまで歩いても同じところを回っているかのような感覚だった。
「良樹さん、おかしくないですか?」
三谷も気づいたらしい。
こんな所で迷ってしまうと、夜になってしまう。ライトはあるが電池は少ないらしい。
もう一つ最悪な事が起こってしまった。
雨が降ってきたようだ。小雨だがこれから土砂降りになってくるかもしれない。
「おい三谷、ここの山の地図とかないのか」
良樹はこの山に関する情報は全て三谷に、任せていたため地図などの物は三谷が持っているだろうと思っていた。
「……それが、この山は現地の人でも知られていないから……」
聞こえづらい声でボソッと言葉を吐いた。
「そんな事さっきも聞いた!俺はお前が持ってくると信じて、水とか必要最低限の物しか持ってきてないんだよ!」
独りよがりなことを言ってると自分自身も分かってはいるが奇奇怪怪な現象が起こっているため、精神状態が半分おかしな事になっているのだ。
「……どうしましょう」
三谷の頭にさっきから雨がかかっている。
だんだん空模様が暗くなってきた。
「俺に聞いたって分からねぇよ」
鳥たちが木々から飛び立っている。
鳥たちが鳴きながら飛んでいる。
良樹の頭にも雨のようなものがかかってきた。「まずは山の頂上を目指そう。頂上から救護を待てば大丈夫だろ」
木の枝には何本もの腕や足が。
口が大きく裂けた醜い顔の猿に似た巨大な生物が。
「あ、良樹さん」
山の天気は良く変わりやすい。
その生物はこの現象を知っているのだろうか。
その生物はこの現象を利用してるのだろうか。
「なんだ、あれ」
山の麓に村があった。
「婆さん俺らあの山のことを、奴らのことを知らせるべきだと思うんだが」
家とも言えない小さな小屋で、痩せ細っている男が弱々しく話している。
「だめだぁ。そんな事しなくたって、あいつらはいずれ消え去るんだからぁ」
顔がシワだらけの老婆が震えながら言う。
「そんな事言ったって、何百年もあいつらは居座ってるんじゃないか。もう話そう。皆に話そう」
この様な会話がいつも続いてきた。
何年も、何十年も。
そんな事を知らず、また一人山に足を踏み入る。
みたあな ネオン @neon0628
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